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追記<X> [余談]

 久々に『追記』を書くことになりました。はい。
 
 『返報』の第13回を2分の5ほど公開しましたが、皆様が予想する通りに物凄い退屈な展開を迎えて終わる事になりそうです。

 過去の話しに突入しても、誰が消えて誰が生き残るのか分かっているので緊張感が全くない。
 それに加えて変な恋物語になってるし、ハヤオが目指していたアクションがない。

 パート2まで編集して思ったのは、伏線を無理に回収しようとしてる事ですかね?
 ある程度のことは、今までの話しで語られているので新鮮味がない!できれば、知らないことをもっと多く書いて欲しかった…
 一応、「次回から物語が動く」とハヤオが言っているので、冷たい目で評価してやりましょう。

 しかしながら、彼は久々に(今亡きトム・クランシーの名がついた)ゲームに夢中なったらしく、パート3はほとんどできてません!
 ゆえに公開は早くて来月の中旬かと思います。
 「今年には完結できたらいいなぁ~」と言っていたので、おそらく完結は5年後でしょう。はい。

 詳細が分かり次第、公開日をWNの最新情報と共に書くと思います。

 それじゃ!
 
 

返報 13-2 [返報]

13-2



 自宅に近い公園のベンチで西野は考えていた。
 “地域の安全を守ることもできないのに、テロ攻撃なんて阻止できるはずがない…”
 小さい頃からスーパーヒーローに憧れていた西野は、刑事になって人々を悪者から救いたいと思っていた。大学を卒業して一般企業に就職しても、その夢が変わることはなかった。ゆえに彼は退職して警察官になった。しかし、西野の理想は崩れ去ろうとしている。
 上司は職務怠慢で積極的に犯罪を取り締まろうとはしない。西野は何度か未然に防げそうな犯罪を目の当たりにしてきたが、上司は「気にし過ぎだ」と言って目を逸らすことが多かった。また、西野が救おうと思っている人々は制服姿の彼を見るなり、露骨に避けたり嫌悪感を見せたりした。中には好意的に接してくれる人もいるが、警察官に良い印象を持っていない人々が目について落ち込むこともあった。それでも西野は自分にできることをしようと努めてきた。
 “断ろう…”
 ベンチから立ち上がり、西野は自宅へ向かって歩き出した。
 「何者かがテロ攻撃を計画している。」
 頭にスーツ姿の男の声が甦ってきた。
 「我々はかなり大規模な物だと想定している。」
 「静岡の学生は氷山の一角だ。」
 一歩一歩踏み出す度に、西野は会議室でのやり取りを思い出した。
 「我々はコイツらを止めたい。そのためには君が必要なんだ。」
 人気のない通りで立ち止まって西野は深呼吸した。
 “捜査に協力したい…”
 そう思っていても、西野は警察官として働く内に自分が無力な存在だと感じ、自分では役に立てないと考えている。また、両親や交際中の女性のことも考えると、潜入捜査への協力は難しいと判断したのだ。
 彼は再び深呼吸した。
 「揺るぎ無い信念を持ち、人々を助けるために身を投げ出す…テロリストと戦うには必要なことだ。」
 スーツ姿の男の声が再び甦ってきた。頭を振って何度も浮かび上がってくる潜入捜査への興味を払い除けようとするも、そうする度に捜査協力への思いが強くなった。








 “これだけか…”
 机の上に広げた武器を見て守谷和章は思った。机にはマカロフ拳銃を模造した北朝鮮製の拳銃5丁、フィリピンで密造されたUZIそっくりの短機関銃1丁、AK―47をコピーした中国製の突撃銃2丁が並べられている。これらは全て“使用可能な銃”であり、“不良品”ではなかった。
 “三池の所に拳銃が3丁と突撃銃4丁。小熊の所に拳銃2丁と短機関銃2丁。増田の所には―”
 守谷が他の仲間が所有している“使用可能な武器”の数を思い起こしていると、ドアの開く音が聞こえた。彼はジーンズのポケットから折り畳みナイフを取り出して静かに刃を出す。
 足音は彼のいる部屋へ真っ直ぐ近づいてくる。守谷は足音から侵入者が一人と推測し、忍び足でドア脇に移動して相手の様子を伺う。1LDKのアパートなので、玄関から真っ直ぐ歩いて来れば守谷のいる部屋に辿り着ける。
 侵入者は守谷のいる部屋の前で止まった。その後、息を押し殺して相手の動きを待つ守谷は拳銃の撃鉄を落す音を聞き、心臓が縮み上がるような思いを感じた。
 “公安!!?”
 「出て来いよ。守谷、お前だろ?」
 この声を聞いて隠れていた男は素早く飛び出して侵入者の姿を確認する。すると、細身の若い男が拳銃の引き金を絞った。パスッという音と遊底が後退して金属が擦れる音が室内に響き、小さな白い球が守谷の胸に命中した。
 「本物なら死んでるぞ…」三須が玩具の拳銃を床に向ける。
 気の長くない守谷は仲間の冗談に怒って額に青筋を浮かべた。「ふざけるな!」
 「そう怒るなよ。良い報せが入ったんだ。」
 「武器か?」間髪入れずに怒気をこめて守谷が尋ねる。
 「いや、例のマニュアルだよ。」
 「C-1のか?」
 「その通り。あとは君のいう武器だよ…君が購入者を殺し過ぎたから、例のフィリピン人はビビッてるみたいだよ。ヤクザを怒らしたって思い込んでる。」
 守谷はナイフを仕舞って笑みを浮かべた。「たった7人しか殺してないのにか?」
 「7人もだよ、守谷。」三須の声には微かに怒気が込められていた。「結構な数だ。これ以上の欠員は困る。」
 「足が付かないようにしてるだけだ。それにアイツらは警察にマークされていた。いずれにせよ、慎重な奴を仲間にしないとダメだ。」台所へ行って守谷は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出す。「でないと…計画が破綻する。」
 「わかってる。」壁に背を預けて三須が消え入りそうな声で言う。
 「先生はどうした?」
 「息子さんに会うと言ってたよ。」
 「例のバカ息子か?」
 「そうだよ。」そう応えると、三須も冷蔵庫から水を取り出した。
 「大丈夫なのか?勘付かれて通報でもされたら…」水を飲む仲間を横目に守谷が訊く。
 「心配ないさ…」飲み終えると三須はペットボトルのキャップを閉める。「何かあれば、消えてもらうから…」
 それを聞いて守谷は口元を緩めた。“人の事をあーだこーだ言うが、コイツの方が狂ってる。”








 自宅で荷物をまとめているとインターホンが鳴り、三浦大樹は作業を中断して玄関へ走って覗き穴で訪問者の姿を確認する。ドアの前には大きな白いビニール袋を持った女性が立っていた。
 「早く開けてよぉ~」と女性が言う。
 「ちょっと待った!」三浦は急いで開錠し、ドアを開けて交際相手を室内に招き入れた。
 「もう荷造りしてるの?」食品の入ったビニール袋を床に置くなり、交際相手の高橋恭子が半ば呆れ気味に言った。三浦の部屋は元から質素な部屋であったが、今はベッドとテレビ、それに8つの段ボールしかない。
 「準備だよ。準備。」彼女の買って来た食品入りのビニール袋を持ち上げてSAT隊員は台所に置いた。
 「まだ10日もあるじゃん!」
 「もしかしたら、早まるかもしれないんだ…」
 「早まったら、帰りも早くなる?」
 「それは分からない。」食料品を袋から出して三浦が言う。
 三浦は彼女の恭子に潜入捜査とは言わず、長期の『研修』と言っている。荷造りについては、研修が1年ほど伸びる可能性があるので、現在借りている部屋を引き上げて研修が終わるまで荷物を実家に預けるためだと説明した。
 「その研修が終わったら、私の両親に会ってくれる?」彼の隣に並んで恭子が訊く。
 「そのつもりだよ。」台所に左手をついてSAT隊員は右隣にいる彼女の方へ体を向ける。「『娘さんを僕に下さいっ!』って言いに行かないと…」
 「父が断ったら?」交際相手を見上げて恭子が悪戯な笑みを浮かべる。
 「駆け落ちでもする?」大樹も同様の笑みを浮かべた。
 「できるかなぁ?」再び悪戯な笑みを浮かべて彼女が言う。
 「できなけりゃ、何度でもお父さんにお願いするだけさ。」
 二人は互いの目を見つめて微笑み合い、そして、唇を重ねた。
 「そうだ!」恭子の方から唇を離す。「充電器使わせて。もうすぐ電源が切れそうなの。」彼女は思い出したように上着のポケットから携帯電話を取り出して三浦に見せる。
 「いつもの場所にあるよ。俺のも充電中だから―」
 SAT隊員が喋っている途中にも関わらず、恭子は小走りでリビングへ行ってまだ充電中の大樹の携帯電話からコードを抜き、自分の携帯電話の差し口に差し込んだ。いつものことなので、三浦は首を横に振りながら食品をビニール袋から出す作業を続けた。
 一方、恭子はメールチェックの振りをして三浦の携帯電話のロックを解き、事前に用意していた新しいiCloudのアカウントを交際相手の電子端末に登録した。
 “悪い気もするけど…”そう思いながらも彼女は大樹の携帯電話を元の位置に戻した。








 シャッターを切る音が室内に響いた。
 “可哀想な野郎だ…” 空きテナントに2階から向かい側の1階にある喫茶店の様子を伺う男は溜め息をついた。
 男の監視対象者は有り難いことに窓際に交際相手と座っており、店に入って監視する必要性がなくなった。また、監視対象者は安全の配慮に欠けていたので、古典的な手法ではあるが、Bluetoothを利用した強制ペアリングによるハッキングが成功し、リアルタイムでの盗聴に成功していた。
 「調子はどうです?」銀縁眼鏡をかけた男が缶コーヒーを窓枠に置く。
 突然のことに驚いて監視者はカメラから顔を上げ、相手を確認するなり再び監視対象者の方へ向いた。
 「脅かすなよ、藤木。」
 「いつも気配を出すように努めてるんですけど…」と苦笑いを浮かべて藤木が言う。「それで斉藤さん…例の彼はどうなんです?」
 「どうやら係長の目に狂いはなかったようだ。」
 「そうですか…じゃ、決まりですね。」単眼鏡をポケットから取り出し、藤木は喫茶店にいる監視対象を見た。








 「何で?」女性の目には今にも溢れ出そうな程の涙が溜まっている。
 尋ねられても西野は押し黙ってテーブルの上にあるコーヒカップを見つめることしかできない。
 「ねぇ、何で?どうして?」
 西野の交際相手である吉崎美由紀は「別れたい」と告げられて混乱した。込み上げてくる涙と嗚咽を堪えながら、彼女は愛する男性からの残酷な言葉の理由を探ろうとしているのだ。しかし、西野は別れを告げてから一言も発していない。
 しばらく二人の間で沈黙が続く。
 別れは美由紀にとっても辛い事だが、それは西野も同じであった。できる事なら彼も彼女と一緒にいたかった。それに西野は美由紀との結婚も視野に入れていた。しかし、潜入捜査へ協力を決意した彼は彼女と別れる道を選んだ。
 愛する人だから、幸せになって欲しい。例え、それが身勝手な決断だとしても、彼はこれが一番だと思ったのだ。別れれば、彼女を潜入捜査に巻き込む恐れを無くし、自分が捜査中に亡くなったとしても、彼女の悲しみは小さくなる。
 「他に好きな人ができたの?」と美由紀。
 尋ねられても西野は何も言わずに下唇を噛んだ。
 “そんな人はいない…”
 「どうして黙ってるの?」
 「ごめん…」
 店を出ようと、西野が美由紀の隣を通り過ぎようとした時に右手を彼女に掴まれた。
 「答えてよ…」彼女の声は震えており、手を掴んだ時に目に溜まっていた涙がこぼれ落ちてスカートに小さな染みを作った。
 手に彼女の温もりを感じて西野は「まだやり直せる」と思った。彼は美由紀の手を握り返し、正直に話そうと体を彼女へ向けようと動く。しかし、これから行う仕事の事が脳裏を過ると、それは無理だと考え直した。
 西野は右手の力を名残惜しそうに抜き、彼女の手を振り解く。この時、美由紀は心臓を締め付けられるような苦しみを感じ、顔をくしゃくしゃにして嗚咽を堪える。今すぐにでも彼女を抱きしめて真実を告げたかった。西野の目も潤んでおり、胸の奥から込み上げてくる悲しみのせいで咽び泣きそうになった。
 「ごめん…」そう言い残して、西野は喫茶店を後にした。
 彼女との距離が開く度に抑えていた感情が強くなり、次第に堪えられなくなって涙が溢れ出た。西野はそれを見られないように下を向いて歩く。そして、彼は真っ直ぐ警察署へ向かった。
 同じ会議室で昨日と同じ色のスーツを着た男が待っていた。
 「答えは?」公安部から来た男は喫茶店を監視していた部下からの報告を受けていたので、答えを知っていたが、敢えて西野に尋ねてみる事にした。
 「協力させて下さい。」








 そのニュースを見た時、菊池の顔は蒼白となった。彼の妻はパニックに陥り、テレビの前に座り込んでその状況を見つめていた。
 1995年3月20日。
 携帯端末と通話料料金が安くなったこともあって携帯電話の普及率が70%に達する勢いの頃であったが、菊池家の長女である詩織はまだ携帯電話を持っていなかった。ゆえに現在のような安否確認は不可能であった。娘の両親はただただテレビの画面を見ながら、娘の無事を祈る事しかできなかった。
 テレビ画面にはヘリコプターから撮影される映像が流れている。事件発生から5時間経った今でも地下鉄の出入り口の周りにはブルーシートが敷かれており、その上に横たわる人々と彼らを保護する救急隊員、警察官たちの姿があった。そして、彼らを囲うように複数の警察、消防、救急車両が赤色灯を回転した状態で停車されている。
 その時、固定電話が鳴った。着信音を聞くなり、テレビに噛り付いていた菊地の妻が飛び上がって受話器を持ち上げた。
 「詩織!?」通話の相手が娘だと思った彼女は電話に出るなり娘の名を叫んだ。
 しかし、電話の主が別人だと分かった途端に抱いていた期待が泡となって消えた。
 妻の身を案じた菊地は妻から受話器を取って電話に出る。「もしもし?」
 「父さん?ニュース見てる?」受話口から息子の声が聞こえてきた。
 「見てる…」
 「詩織から連絡は?あいつ、いつもこの時間の地下鉄を使ってるだろ?」
 「あぁ…」父の声は力なく、消え入りそうであった。
 「今から家に帰る。皆で東京に行こう。」
 「そうだな…」
 「父さんも母さんも気をしっかり持ってよ!」
 「あぁ…」
 菊池は受話器を元の場所に戻した。そして、妻に東京へ行こうと言おうとした時、再び電話が鳴った。
 彼が受話器を持ち上げようとした途端、インターホンの音で菊地信弘は現実に引き戻された。
 “またあの夢か…”
 彼の心臓は異常に高鳴っており、目頭も熱くなっていた。再びインターホンが鳴る。初老の大学教授はゆっくりと椅子から立ち上がり、玄関へと急ぐ。彼がドアを開けると、満面の笑みを浮かべた息子が立っていた。
 「ただいま。」
 「おぉ…」
 「父さん、寝てた?」
 「ちょっとな…」
 菊池は息子が両親の身を案じて度々訪問していることを感謝していたが、それと同時に彼は息子の親切心に胸を痛めていた。
 “もうすぐ全てが変わる…その時、息子は私を赦してくれるだろうか?”








 潜入捜査に協力することになった西野は7日後に警察の名簿から記録を完全に抹消された。万が一、警察の記録が漏洩することがあれば、西野の命を危険に晒してしまう恐れが出るからだ。
 表向き警察官を辞めた西野は公安警察の元で訓練を受け、その期間は4ヶ月に及んだ。
訓練の内容は暗号の作り方とその解読法、尾行の仕方と確認、そして、これから成り切らなければならない人物の設定を憶える事であった。西野に与えられた偽IDは小林 健、28歳。小林と言う人物は京都大学法学部で2年学ぶも、学費が払えなくなって休学し、ようやく今年復学した学生という設定であった。
 既に接近戦や武器類の訓練は警察学校で行われていたので、戦闘訓練は不要だと公安部は判断を下した。また、公安部は早期に西野を現地に送りたいと考えていた。その理由として、彼らが想定するテロ攻撃の時期が不明であり、それに加えて「資産」として送り込んでいた人員が忽然と姿を消すことが2度も続いたからである。姿を消した二人は武器の購入に関わっており、公安部が武器購入の首謀者を捕まえようとした矢先に連絡が途絶えたのだ。
 西野はまだ公安部の意図を理解しておらず、彼は「テロ攻撃を止めたい」という思いで訓練に臨んでいた。彼は決して選ばれたことに自惚れている訳ではなく、かつて抱いた理想を実現させうようと強く思っている。
 一方、三浦大樹は西野よりも先に京都へ向かうことになっていた。彼も西野同様に偽のID「高橋 直人」をもらい、立命館大学へ入学する手配がされている。三浦の場合、見た目が若いので現役生として大学に送り込むよう公安部が決めた。
 羽田空港の国内線ロビーで搭乗案内を待つ三浦はキオスクで購入した時代小説を読んでいた。彼は祖父の影響で時代劇が好きになり、後に池波正太郎の『剣客商売』や浅田次郎の『壬生義士伝』の虜になった。今は鳥羽亮の『八丁堀吟味帳』の新作を読んでいる。
 「よいしょっと…」三浦の右隣に男が腰掛けた。
 気にせず小説にのめり込んでいると、隣の男がワザとらしい咳払いをして三浦の注意を引く。煩わしく思った若いSAT隊員が視線を横に移して男の姿を確認する。そこには見覚えのある顔があった。
 「先輩?」三浦が驚いて顔を上げる。
 「相変わらず鈍いな。」中島が笑みを浮かべて言った。
 「ど、どうしてここに?」先輩の出現に三浦は動揺した。
 「見送りに来たんだよ。」
 「でも、講義は?」
 「今日はなかったのさ。」中島は嘘をついた。彼は弟のように可愛がっている後輩を見送るため、体調不良を偽って空港にやってきたのだ。
 「あ、ありがとうございます。」
 「それはそうと…」先輩SAT隊員が遠くを見つめた。「今回の仕事が終わったら、将来の嫁さんを連れてウチに遊びに来いよ。チビ達もお前に会いたがってるし…」
 これを聞いて三浦の顔に笑みが広がった。「喜んで!」
 その時、三浦が乗る飛行機の搭乗案内のアナウンスが始まり、人々がぞろぞろと搭乗口へ並び出した。
 「じゃ、オイラはそろそろ行くよ。知り合いに見られたら、仮病がバレるし…」中島は三浦を見ずに席から立ち上がる。何故か、恥ずかしさが彼の心に込み上げて来たのだ。
 「またな…」そう言い残すと、先輩SAT隊員は人混みの中に消えて行った。

World Tour in 2017!! [News]

 WNのワールドツアーライブですが、間もなく彼らはタイに向けて出発するそうです。日本で3ステージも披露し、疲労困憊してると思われているWNですが、バンドメンバーの『バトスピ団』が前座で1時間半演奏し、WNは30分しか歌わないのでどっちのライブか分からないと批判を受けてますね。はい。

 でも、おそらくタイに行ってからは本気になるのでしょう。以下がネットに流出したタイでのプログラムをまとめたものです。

 ・オープニング:Nによる挨拶
 ・H.O.K.U.R.E.N.(バトスピ団 ver.)
 ・B.B.Snow(三代目G3ブラスバンドブラザーズ ver.)
 ・となりのG3(バトスピ団 ver.)
 ・歩道橋
 ・漢 -the man-
 ・紅のN(バトスピ団 ver.)
 ・バトスピ団 とWNによるトークショー(日本語
 ・二代目ペルセウス (バトスピ団 ver.)
 ・野球ゲーム大会
 ・エンディング:G3による別れの挨拶


 なんかWNの場面が少ない気がしますね。2回しか歌ってないし…
 でも、初のワールドツアーなので彼らも大変なんでしょうね。はい。
 Youtubeとかにライブ様子が流れるといいなぁ~


(以下はハヤオ関連です。)
 『返報』ですが、第13回のパート2は予定通り来週の22日(水曜日)に公開します。
 ベルセルクが連載再開ということで、ハヤオのテンションがハイになってます。ゆえに少し書くスピードを上げようと努力してるようです。しかし、ベルセルクの連載がストップすれば、彼も動機を失うかも…
 待ってる人はいないと思いますが、第13回のパート2は来週22日の公開です。
 
 それじゃ!
 

 

予告なしで、すみません [その他]

 タイトルは昨日のことです。はい。

 その前にWNのワールドツアーが始まり、彼らを追いかけようとしました!しかし、多忙につき断念しましたよ。

 それにしても、WNはある意味スゴイ活動意欲を最近見せてくれますが、G3と623の間にある亀裂は深まる一方だそうです。ゆえには解散する姿勢も見せ、G3がその気なら同意すると言って623は頭を抱えているみたいらしい。確かに623の曲はWNに新しい風を吹き込んだけど、最近は「なんとザイル」グループみたいに歌でなく踊りを売りにしてるから個人的には好きじゃないですね。はい。

 まぁ、これからの彼らの動きに注目ですっ!!



(以下はハヤオ関連ですので、WNファンはもう読む必要なしですよ。)

 昨日は予告なしで第13回のパート1を流してしまう事故が発生しました。まだ、この回は完成してないので、パート2は今月の末(22または24日)の公開になると思います。
 
 正直な話し、パート1を24日に流す予定だったのですが、クリックする場所を間違えて公開になっちゃったのです。すみません。それに内容も酷過ぎるので、かなりの批判を受ける覚悟はできています。

 一応、第13回は5本構成の話しです。ハヤオ曰く「独立している話しだから読まなくてもいい」らしいですが、敵の動機が判明する(?)ので読んでもいいかもしれない。ですが、面白い訳ではないです。ダラダラと続くので、結末だけ知りたい場合は第14回を待つのがいいかも。

 長くなったし…

 それじゃ!

返報 13-1 [返報]

 「帰れ。」
 中島の声には何の感情も込められていなかったが、藤木は危険を察知してベンチから立ち上がった。
 「最後に一つだけ…復讐なんて考えないでくださいよ。」
 銀縁眼鏡の男がベンチから離れようとした時、背後から殺気を感じた。
 “勘弁してくれよ…”藤木は肩越しに中島を見る。SAT隊員は元公安の男を黙って見つめていた。
 「復讐?」中島が藤木の背中に向けて言った。
 「そうですよ。」藤木は敢えて振り返らずに答えた。「あなたはもう“あの事件”に関わる必要はない。」
 「俺は公安じゃないから、お前の言っていることが分からねぇよ。」
 背後に感じる殺気によって藤木の背中は冷や汗で濡れ、両脚も震えていた。
 “ここまで威圧するかよ!”
 数メートル離れた場所で待機していた藤木の同僚も中島の殺気を感じて身震いし、ホルスターに収められていた銃に手をかけたほどであった。
 「中島さんに…」藤木がハンカチで額に浮かんでいた冷や汗を拭って振り返った。「中島さんに話さなければならないことがあります。」


















13-1






 多くの人が行き交う地下街で悲鳴が上がった。
 女性からハンドバッグを奪った若い男は人々の間を縫うようにして進み、地上へ続く階段を一段飛ばしで駆け上がった。地上に出て数メートル走った男は現場から十分離れたと思い、上着の下に盗んだ鞄を隠して路地裏へ逃げ込もうとした。
 「待て!」背後から叫び声が聞こえてきた。
 男が振り向くと、追跡してくる制服姿の警察官を見つけた。
 “マジかよ!”
 窃盗犯は再び走り出した。制服警官は装備の付いたベルトを左手で抑えながら、逃走を図る犯人を追う。二人から遅れを取って40代初めの制服警官が階段を上がってきた。
 「ま、待てよ…」肩で息をする警官は声が届かないと分かっていても、先を走る後輩警官に向かって言った。
 若い後輩警官はオフィスビルが建ち並ぶ通りを走り、時々後ろを振り返りながら逃走する窃盗犯の後を追っている。犯人は通行人や車両と接触しそうになってよろけたが、上手くバランスを取って走り続けた。執行猶予中であるこの男は段々と脚に疲れを感じ、このままでは逮捕は免れないと思った。
 “捕まるなんてゴメンだ!!”
 そう判断した男は盗んだ鞄を地面に叩きつけるようにして投げ、警官がそれで追跡を諦めると推測した。しかし、制服警官は走りながら身を屈めて盗まれた鞄を拾い上げ、再び窃盗犯に目を戻す。
 “何なんだよ、アイツ!”
 警官の行動を目撃して窃盗犯は悪態ついた。そして、彼が顔を正面へ戻すと右から飛び出してきた車に轢かれ、その衝撃で地面に叩きつけられた。車を運転していたスーツ姿の女性が倒れた窃盗犯に走り寄ろうとした時、制服警官がそれを制して男の右手首に手錠を取り付けた。
 「13時34分。窃盗の現行犯で逮捕する。」警官が呼吸を整えて言う。
手錠をかけられた男は観念した様子で何も言わず、大人しく制服警官に誘導されて道端に座り込んだ。
 「西野!」先輩警官がやって来た。「お前は…やり過ぎだ…」息を切らしながら40代初めの制服警官が言う。
 「でも、バッグを取り戻せました。それに逮捕もできました。」と西野。
 「いっつもだが、お前との巡回は最悪だよ…」







 「本気でも構わないよ。」紺色のシャツにベージュのカーゴパンツ姿の中島が両手を肩の高さまで上げて言う。
 それを聞いてSATの訓練生は眼光を鋭くして、両手を中島と同じ高さまで上げる。二人の体格はさほど変わらないが、数センチ訓練生の方が高くて手足も長い。間合いで比較すれば、訓練生が優位である。また、中島は防具などを身に着けていないが、訓練生はグローブ、脛当て、ファウルカップを装備していた。
 「行きます!」訓練生が大声を張り上げた。
 これは中島を怯ませるための行為であり、彼は一定の効果を生むと思っていた。しかし、訓練生が動き出そうとした時、中島は彼の股間を左足で蹴り上げた。本気ではなく、それにカップで股間は守られていたが、不快感と微かな痛みが訓練生の戦意を削ぐ。
 間を置かずに素早く中島は左手を訓練生の頭と右手の隙間に入れるように突き出し、その際に右肘を訓練生の顔面に叩き込む素振りを見せる。肘に気を取られた若いSAT訓練生は後退しようとするも、現役のSAT隊員はその前に突き出していた左腕を訓練生の右腕に巻き付け、さらにフェイントとして繰り出した肘の勢いを利用して右手を訓練生のうなじに添えて右膝を股間へと繰り出す。金的を恐れた訓練生の体は前のめりとなり、それを確認するなり中島は左足を軸にして90度回転しながら、訓練生を床へ倒すようにうなじを押す。訓練生は右腕を固定された状態で床に押し付けられ、肩に激しい痛みが走った。
 「相手に出るタイミングを教えるのは良くない。これが訓練であってもね…」他の訓練生たちに向かって中島が言う。
 訓練生たちの表情は引きつっており、自分も同じ目に遭うかと思うと憂鬱になった。それを悟った中島は笑みを浮かべ、拘束していた訓練生から手を離して立ち上がるのを助ける。
 「嫌がらせをしている訳じゃないんだよ。」と中島。「訓練の時についた癖は、必ず実戦にも出る。いくら気を付けていてもね…」
 全ての訓練生がこの説明に納得した訳ではなかったが、それでも新人教官の言葉を胸に留めることにした。
 「じゃ、次、行ってみようか…」
 これに訓練生たちは怯えた。
 ”勘弁してくれよ…”
 「行きます!」訓練生の最後尾から手が上がり、挙手した者が前に出て来た。
 その顔を見て中島は笑みを浮かべた。そして、前に出て来た男も満面の笑みを浮かべている。訓練生たちは見た事ない男の出現に驚き、それぞれ顔を見合わせる。
 「しかし、教官にお願いがあります。」前に出て来た男が言う。「一人で勝つ自信がないので、他の訓練生と組んで教官に挑んでも良いでしょうか?」
 「構わないよ。」中島はあっさりと応じた。「でも、君はもう訓練生じゃないだろ?」
 「つい懐かしくて…」
 「相変わらずだな、三浦…」人差し指で頬を描きながら近接戦闘の教官が言った。「あと5分しかないから、すぐ始めよう。」






 空のハンガーを掴んで制服の上着を掛けると西野は溜め息をついた。疲れからではなく、先輩からの説教が原因だった。彼の先輩はあまり犯人逮捕に積極的ではなく、追跡しても途中で諦める事が多い人物であった。事実、西野が署に戻ってくる前も、「過度な追跡は犠牲者を増やすだけだ」と言って、彼は部下の言葉に耳を貸そうとはしなかった。
 「どったの、西野ちゃん?」4つ隣のロッカーで着替えていた同期の熊谷が喋り掛けてきた。「溜め息なんてついてさぁ~。寿命が縮まっちゃうよ。」
 「何でもないよ。」と西野。
 「水臭いなぁ~。同期なんだし、困った時はお互い様じゃないかぁ。」
 「いつもと同じさ。村上先輩だよ。あの人とは話しが合わない…」白いポロシャツをロッカーから出して西野が言う。
 「村上さんはそういう人だろ?あまり気にすんなよ。そんなことより、最近の携帯ゲームのグラフィックって凄いよなぁ~。もうゲーム機なんていらなくなるかも。」
 西野は口元を緩めて熊谷の話しに耳を傾けた。
 「でも、課金制度は―」
 その時、更衣室のドアが開いて、西野が担当する交番の所長が入って来た。
 「西野、ちょっと来てくれ。」
 「あっ、はい。」
 「私服でも構わん。」
 「分かりました。」急いでポロシャツを着て、西野はロッカーのドアを閉める。
 「何やらかしたの?」と熊谷が小声で尋ねた。
 西野は小さく首を傾げ、更衣室のドアで待つ上司へ急いだ。






 ドアをノックする音を聞いて菊池信弘は読書を中断して顔を上げた。
 「どうぞ。」そう言って、丸縁眼鏡をかける菊池は上着の胸ポケットに入れていた栞を本に挟む。
 「失礼します。」ドアを開けて細身の若い男性が入って来た。
 菊池の研究室は大量の本、新聞、雑誌、書類で埋め尽くされており、それらは高く積まれて並べられている。若い男性は積み上げられた本と雑誌に触れないよう、慎重に教授の机へと続く細長い道を歩く。彼はこの教授の部屋に来る度に、大学付近にある埃臭い古本屋のことを思い出した。その古本屋もこの研究室のように本が通路脇に積まれていて、移動するのが難しい場所なのだ。
 「おぉ、三須君か…片付けようと思ってたんだけどね…」椅子から立ち上がると、初老の男は机の向かい側にある客人用のソファー上にあった雑誌と書類を床に放り投げる。「座ってくれ。」
 「すみません、先生。」肩掛け鞄を膝に置き、三須と言う名の学生は色褪せた二人掛けのソファーの端に腰を下ろす。
 「今日は何の用かな?」と菊地教授が話しを切り出した。
 「先週出された課題について質問があるんです。」そう言うと、学生は鞄からクリアファイルを取り出して菊池に手渡す。そして、次に彼はメモ帳とペンを取り出した。
 ファイルを受け取ると、菊池は胸ポケットからペンを取り、クリアファイルの中から4枚の紙を抜き取る。4枚中3枚は白紙であり、一番上にある紙には短い文章が書かれていた。
 『盗聴の心配はありませんか?』
 「やっぱり、レーニン主義について詳しく言及すべきですか?個人的にはマルクス・レーニン主義の説明があれば、20世紀のソ連における政治体制の説明はできると思うんですが…」三須は盗聴の可能性を考えて話しを続ける。
 菊池は学生の声に耳を傾けながら、手にした白紙の一枚の上でペンを走らせて紙を三須に見せる。
 『守谷たちが点検したが、それらしき物はなかった。』
 この教授も慎重であり、可能性が低くても筆談を止めようとはしなかった。
 「マルクス・レーニン主義はレーニン主義を踏襲してるから、できる限り触れて欲しい。『大粛清』のせいで残虐性ばかり注目されているが、注目して欲しいのは革命によって資本家の搾取を無くし、真の社会主義世界を樹立するというボルシェビキ指導部が持っていた理念についてなんだ。」
 『楠木がマニュアルを手に入れたと言ってます。』
 「やはり、革命の話が必要ですか?」メモ帳に書いた文を教授に三須が見せて言う。
 「ソ連の政治に革命は付き物だったからね。」
 『人手は?』
 菊地が紙に書き込んでそれを三須に見せる。
 『あと4人は欲しいです。現在26人います。』
 「そうですか…じゃ、先生が言った事を書けば、良い点がもらえるんですかね?」
 「そうだね~、取れるかもしれないね。」
 『できる限り、信用できる人間を集めてくれ。』
 そう紙に書くと、菊池は紙をファイルに戻して学生に返した。
 「頑張って書いてきます。」クリアファイルを受け取ると、三須はソファーから立ち上がった。
 「期待してるよ。」
 「はい。」




 ビールを飲み干すと、三浦大樹はジョッキを机に置いて左手で口元を拭う。
 「先輩って、悪魔的に強いですよね!」と正面に座る中島を見て後輩SAT隊員が言った。「5人で行ったのに、4発くらいしか入れられなかったし!」
 「お前が弱すぎるんだよ。」久々の再開に中島は笑みを浮かべる。
 「そんなことないですよ!これでも今の隊では強い方ですし!」
 「なら、お前んのトコは最弱の隊だな。」枝豆を口に放り込んで先輩SAT隊員が言う。
 「酷いっすよ、先輩。」三浦が口を窄める。
 ちょうど二人の横を女性店員が通り、三浦はビールの御代わりを頼むために呼び止めた。
 「先輩も頼みますか?」自分のビールを注文すると、三浦がメニューを指差して尋ねた。
 中島は首を横に振ってビールを飲む。注文を受けた店員は空いた三浦のジョッキを持って、その場から離れる。
 「そう言えば、交通課のあの子とはどうなんだ?」先輩SAT隊員が話題を変えた。
 これを聞いて三浦は口へ運んでいた唐揚げをテーブルに落とし、すぐにそれを箸で拾い上げる。露骨な反応であったが、それ程まで彼は動揺したのだ。
 「な、何の話しですか?」
 「この前、お前と交通課の恭子って子が手を継いでいるのを見たという奴がいてねぇ~」中島がニヤニヤしながら言う。「んで、気になったのさ。」
 飲酒で赤くなっていた顔を一層赤く染めて後輩SAT隊員は唐揚げを口に放り投げた。
 「付き合ってます。」噛み砕いた唐揚げを飲み込むと、小さな声で三浦が言った。
 「え?」中島はワザと聞き返した。
 「彼女と結婚を前提に付き合ってます!」三浦は情報を少し付け足して声を大にした。
 すると、10代と思われる男性アルバイト店員が三浦のビールを持ってきた。後輩SAT隊員は見ず知らずの人間にこの話しを聞かれて恥ずかしくなった。
 「おめでとう!!」中島が自分のビールジョッキを持ち上げる。
 「あ、ありがとうございます!」
 三浦もビールジョッキを持ち上げ、二人は互いのグラスを軽くぶつけてビールを飲む。
 去年まで同じ隊で活動していた二人はまるで兄弟の様に仲が良かった。事実、中島は三浦を弟の様に可愛がり、三浦は中島を兄の様に慕っていた。
 「実は…今日はお話しがあって、先輩を誘ったんです…」妙に改まって三浦が口を開いた。
 「まさか、結婚の仲人の依頼か?」中島は三浦をからかうのが好きで堪らなかった。それほどまで彼を気に入っているのだ。
 「いえ、違います…」
 真剣な顔になった後輩を見て中島は心配になった。「どうした?」
 「ちょっと…新しい仕事が入ったんです…」声を次第に小さくし、三浦は前傾姿勢になって会話を聞かれないようにする。「実は…」







 「潜入捜査……ですか?」西野がオウム返しに尋ねた。
 彼は警察署の2階端にある会議室にいる。その薄暗い室内には彼の他にスーツ姿の男がおり、彼らは長机を挟むように腰掛けていた。
 「そうだ。」40代半ばに見える男が身を乗り出して組んだ手を机の上に置く。「我々は君が適任だと思っている。」
 「何故ですか?」状況が呑み込めない西野はできるだけ情報を得ようとした。
 「西野史晃巡査部長。29歳。福井県出身。福井大学国際地域学部を卒業。その後、一般企業に就職するも学生時代に学んだ事を生かしたいと考えて福井県警に出願、そして、採用される。現在は東交番に配属されているね?」言い終えるとスーツ姿の男は身を引き、椅子の背もたれに寄り掛かった。
 「私の経歴と潜入捜査に何の関係があるんですか?」西野は混乱してきた。
 “公安の人か?”
 「今の環境に満足していないだろう?」とスーツの男。
 質問に質問で返されて西野は苛立ったが、男の言った事に間違いはない。
 「そんなことはありません。やりがいのある―」
 「そこじゃない。」男が西野の話しを遮る。「我々は君の才能を埋もれさせたくない。今の上司の怠惰な所に不満を持っているだろう?」
 心を突かれて西野の心拍数が上がった。”どうやって?”
 「3か月前、パナマ船籍の貨物船から4丁のライフルと500発の弾が見つかった。ニュースでは暴力団の仕業と言っていたが、実際は違う。」ここで男は喋るのを止めて西野の反応を見る。目の前にいる警官はまだ先ほど指摘された事に気を取られている様だった。
 “仕方ないな…”そう思いながら、スーツの男は話しを続ける事にした。
 「購入者は静岡に住む大学生だった。最初は単なる実銃マニアだと思っていた。ライフルは錆だらけのガラクタだったが、一応、その学生を逮捕するために彼の住むアパートに向かった。しかし、彼はナイフで自分の首を掻き切って自殺していた。その後、その他に実銃がないか室内を捜索したんだがね、彼は玩具の銃さえ持っていなかった。ウェブの履歴を見ても、その類の閲覧履歴は無かったし、不自然に消された様な痕跡もなかった。奇妙だと思わないかね?」スーツの男が笑みを浮かべて西野に尋ねる。
 「その学生は誰かに利用されていたのでは?失礼ですが、その話しは潜入捜査に関係があるんですか?それに僕と関係のない話しだと思うん―」
 「何者かがテロ攻撃を計画しているはずだ。我々はかなり大規模な物だと想定している。」
 西野は信じられないという表情を浮かべて真正面に座る男を見る。この反応から男は少なからず手応えを感じた。
 「静岡の学生は氷山の一角だ。彼と同じ様に武器を購入した学生を4人確認している。しかし、その後、4人とも行方不明となっている。いずれも京都を囲むようにして活動していた。標的が京都にあるのか、それともそこに首謀者がいるのか?」男は一度口を塞ぎ、眼光を鋭くして西野を見つめた。「我々はコイツらを止めたい。そのためには君が必要なんだ。」
 「だから、何故です?」真向かいに座る男の眼光に西野はたじろいだ。
 「君の性格だよ。揺るぎ無い信念を持ち、人々を助けるために身を投げ出す…テロリストと戦うには必要なことだ。」
 男は褒めたつもりであったが、西野は馬鹿にされている気分であった。
 「明日、またここに来る。」スーツ姿の男が椅子から立ち上がる。「その時までに返事を頼むよ。」
 そう言うと、スーツ姿の男は西野を部屋に残して去って行った。