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第8話 [カードーゲーマー・滝川ユウタ!!]

第8話「ユウタ、決断!」

 

 ブリーフ姿で戦争法案(平和安全法制)反対デモに参加したユウタはその日から英雄となり、マスコミ各社は彼を『ブリーフ姿の革命家』と呼んだ。

ある情報番組に出演していた芸能評論家はこう述べている。「あの歴史的な集会に彼(ユウタ)の存在は不可欠でしょう。そう、彼はまるでメシアだった。私もあの現場にいたから分かるんですよ。日本の民主主義は彼のような革命家によって守られると私は思います。そう思うでしょ?」

ユウタはある意味で有名となって取材を受けるようになり、本の出版やドキュメンタリー作成の申し出まであった。まさにピンチを逆手に取ったのだ!

(よっしゃぁー!!これで俺も有名人だぁ!金持ちだ!誰も俺をバカにできないぜぇ!イエェイ!!)

しかし、いいことばかりではなかった。テレビ報道によって彼を探していた人々が次々と行動を始めたのだ。

 

 

 

 インターホンが鳴ると同時にノック音が聞こえた。

 ユウタは目を擦りながら隣で寝ている女性を起こさないようにベッドから降りた。この女性はユウタ主催の反政府デモ集会で出会った女性17号であった。つまり、彼は自分の地位を利用して女性漁りをしているのである!

 バスローブを羽織ったユウタの耳に驚くべく声が聞こえてきた。「警察です。少し伺いたいことがあります。」

 (なっ、なっ、なんやてぇー!!!サツが何のようだ?まさか、この前寝た女が警察に通報したのか?いや、もしかするとこの前、歩道でオ○ニーしたのがフライデーされたからか?いやいや、もしかするとABEが俺を脅威と見て始末しに来たのかもしれない。そうだ。違いない。それしかない。どうすればいい?)

 「どうしたんですか、ユウタさん?」ベッドで寝ていた女性が問いかけてきた。

 「何でもねェ!」咄嗟にユウタは怒鳴ってしまった。

 これを聞いたドアの前にいた刑事は大声で「いるならドアを開けてもらえませんか?」と言った。

 (クッソーメン!やっぱり揖保の糸…冷静になるんだ。)

 カードゲーマーとしての才能をユウタは生かして戦術を練り始めた。

 (これしかあるまい…)

 ユウタは床に落ちていた服を着ると、寝ている女性の財布から現金を抜き取ってベランダに出る。そして、隣のベランダからベランダへと移動して非常階段まで行き、全力で一階まで走った。彼はまだベランダを利用した移動がバレていないと思っていたが、アパートの裏手に待機していた捜査官はそれを目撃していて追跡を始めていた。それでも悪運の強いユウタはタクシーを捕まえて難を逃れた。

 

 

 

 都合のいい女4号の家に隠れたユウタであったが、おつかいに行くよう言われて近くのコンビニに向かった。もちろん変装は忘れていない。白銀のカツラに油性ペンで書いた顎髭は完璧にユウタを別人に変えていた!しかし、これは別の意味で注目を集める格好でもあった!そして、ユウタは最悪な相手に捕まってしまう。

 「滝川さんっ!」買い物を終えたユウタを誰かが呼び止めた。

 振り向くとそこには二人の男がいて、その一人にユウタは見覚えがあった。元上司の沢辺であった。変装しているユウタは知らん振りをして逃げようとしたが遅いことに気付いた。彼は沢辺の声に反応してしまったからだ!

 「探しましたよ。」距離を詰めながら沢辺が言う。「あなたの両親に聞いたら東京に行ったと教えてくれました。でも、場所が分からなかった…」

 「何故、ここに?」とユウタ。

 「借金ですよ。あなたは私から50万借りてるんですよ。それに利息が30万もあるんだ。早く返して下さいよぉ~」

 (そうだ!コイツから金を借りてたんだっけ…でも、どういうことだぁ?利息が30万?)

 「そんなの払えるわけないだろうがいぃ!!」ユウタは吠えた。

 「それじゃ仕方ないねぇ~。やっておしまい、イルボーヌス・武田!」

沢辺がそういうと彼の背後で待機していた男が現れてユウタの顔面にパンチを喰らわせた。強烈なパンチにユウタは「ヒデブッ!」と言って転んだ。色黒のイルボーヌス・武田は続けてユウタの上に乗ってマウントポジションを取ると、変装していたユウタの顔が腫れあがるまで殴り続けた。

「うぅほぉーーーーーーーー!!!!!!」イルボーヌス・武田の雄叫びが夜の市街地に響いた。「ヤっていいの?コイツ、ヤっていいの?」色黒のイルボーヌス・武田がギラギラした双眸を沢辺に向ける。

「ダメだ。変な病気を持ってるかもしれないだろ?」

「そうか。そうだね。じゃ、どうするの?」

「ほっとけ。それよりホテルに帰って“お楽しみ”の続きをするぞい。」

「やっほぉーーーーーーーいいいいいいいいぃ!!」

二人はユウタを残して去って行った。かろうじて意識のあったユウタは這ってコンビニまで戻って救急車を呼んでもらおうとしたが、病院に行けば警察に捕まると予想して踏みとどまった。

(どうなってんだってばよ…?一体…)

身を丸めてユウタは泣くしかなかった。

 

 

 

 それから9ヶ月が過ぎた。ユウタは逃亡し続けながら、アルバイトをして沢辺に増え続ける借金を細々と返している。給料の8割が借金の返済に消え、毎日ギリギリの生活を強いられているのだ。それでもアルバイト先の上司・佐久間は苦しんでいるユウタに食事を奢ったりしていた。

 その日もユウタは佐久間に連れられて小さな定食屋に来ていた。

 「いつもいつもありがとうございます、佐久間さん。」ユウタが頭を下げる。

 「気にすんじゃないよ、ヨウちゃん。」笑顔で初老の男が応えた。

 ユウタは職場で川村ヨウと名乗っており、数か月前に上京してきたと嘘をついていた。

 何気なくユウタはカウンターの隅に置かれていた中型テレビを見た。画面にはバラエティー番組が流れており、内容は「奇跡の大富豪たち」というものであった。

 (俺はスターだったのに…反政府デモのスターだった。もしかしたら、コイツらみたいな金持ちになれ―)

 その時であった!ユウタの目にある人物が映った。当時より少し太っているが、あの特徴的な顔を忘れることなどできない。

 (エンドゥ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 そう!西野と植松と言うフリーターから計100万を騙し取った男である!!ユウタは穴が開くほどテレビを見つめた。

「たまたま、投資した企業の業績が伸び始めましてね。それからカードゲーム『プレイ・ザ・ギャザリング』を中国限定で発売したら…ブゥオンと売れたんですよ。時代はやっぱりチャイナですよ。おっと、失礼。英語が出てしまった。」テレビに映る遠藤が言った。

(あの野郎!山分けするとか言っておきながらーーーーーーーーーーーぁ!!!!!!)

 「遠藤さんのようになるためには、どうすればいいのでしょうか?」番組司会者が金色のスーツに身を包む遠藤に尋ねる。

 「そうですね。見極める力だな。私の知り合いに幼稚なカードゲームに夢中になっている男がいましてね。この男はついこの前までブリーフ姿で反政府デモに参加してた。」

 (ブリーフ姿?って、それ…俺の事じゃねェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーかよぉぉぉぉ!!)

 「彼にように藪から棒に行動する男は失敗する。だけど、私のように計画的に行動できる男は成功する。ビジネスもセイムだよ…おっと、また英語を使ってしまったよ。ははははっ。」

 「凄い人もいるなぁ~」佐久間が酒を飲み、ユウタの方を向く。しかし、そこに部下の姿はなかった。

 

 (来週は身勝手ながらお休みを頂きます。次回は6月2日と3日です。) 


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クライマックスへ向けて… [あとがき]

 ハヤオの『カードゲーマー・滝川ユウタ』もあと3回で終了です。今回はハヤオではなく、私が代わりに「あとがき」を書かせてもらうことになりました。第6話から編集の手助けをしてるので、このパートを書く権利はあるかと思いますね。はい。

  この物語、実は50話を超える予定だったのですが、そこまで書くと「ダレる」ということで10話程度でまとめることになりました。ハヤオは、ユウタという男が「どのように腐敗し、どう立ち上がろうとするのか?」という過程を少し現実味を与えて書きたかったようです。だから、一気にダークな面を出すのに抵抗があったようですね。はい。

 第6話からフラッシュフォワードを取り入れ、物語の着地点を少しずつ見せ始めることにしました。そして、次回の第8話から無理矢理、物語を加速させ、ユウタはある決断を下すことになるんです。が、まぁ、退屈です。もうすぐ終わるから安心してください。

  第7話の最後に、ある団体を小馬鹿にするような描写があり、ハヤオと私が右翼(ネトウヨって言われるのかな?てか、ネット左翼って聞かないけど、いるのかなぁ?)的な人だと思われたそうです。しかし、私たちは別に政治的なことを思って書いてないですし、どちらかと言えば護憲派なので反政府デモ団体の意見に一部賛同してます。しかしながら、一部の人から見れば「偏った考え」を持った人に見えるのかもしれませんね。 でも、私たちは人間なので「偏り」は自然なことだと思うんですが(あ~、また後で何か言われそう…)…

  この物語も終われば、ハヤオと共に本格的に『返報』を終わらせ、このブログを真のWN応援ブログにしようと思っています。では、皆さん、次回まで!


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第7話 [カードーゲーマー・滝川ユウタ!!]

第7話「ユウタ、消沈!!」

 

 人気の少ない居酒屋のカウンター席の端に二人の男が並んで座っている。一見、仕事を終えて雑談を交わしている中年男性二人組にしか見えない。

「金は?」作業服姿の男が開口一番に言った。

 ユウタは何も言わずに埃と煤で汚れた深緑色の上着のポケットから8万円を取り出して男に渡す。40第半ばに見える作業服姿の男は疑い深く紙幣の枚数を数える。一方、ユウタは男の胸のポケットに刺繍で入れられた名前を見る。そこには神戸とある。

 「確かに…」神戸は金をスラックスのポケットに乱暴につっこむと、上着のポケットから黄色い「5」と書かれたプレート付きの鍵を取り出してそれをテーブルの上に置く。「この通りにコインロッカーがある。アンタの荷物はそこだ。」

 「分かった。」

鍵を取って店を後にすると、ユウタはコインロッカーがある場所に向かった。ロッカーの番号を確認して開錠し、中を確認すると大型のスーツケースが入っていた。鞄の中を携帯電話の明かりを使って確認するなり、ユウタはジッパーを閉じてスーツケースをロッカーから引きずり出した。

 

 

 

 

 

 全裸で正座するユウタ。彼を囲うようにして座る男3人。浴槽で鼻歌を歌うミク。

 「アンタ、最低な野郎だぜ!」2サイズは大きであろうスエットシャツを着た男が言った。この男がミクの彼氏:ケンちゃんである。「聞いてんのか?」

 ユウタは恐怖のあまり何も言えなかった。

 「おい、コラッ!」ケンの隣にいた男がユウタを怒鳴りつける。

 「で、でも、ぼ、ぼ、ぼきゅはミ、ミクに彼氏がいる…だ、なんて…しら―」

 「何言ってんだ、お前?俺の女を襲いやがってよ~ホントだったら絞めてるところだぜ。」ケンはジーンズから煙草を取り出して火を付けた。「それにミクはまだ17だ…」

 「えっーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!?????????」ユウタは部屋に響き渡るほどの大きな声を上げた。

 (オレェ、JKとヤったの?すげぇじゃん。快挙じゃん!俺は青春を取り戻しているんじゃない?そうだよ。そうに違いないィーーーーーー!!)

 「黙れ」ケンがユウタの右頬に平手打ちを浴びせる。「未成年相手に何やってんだよ、おっさん。ちっとは反省しろよ。」

 「でもさ~」ユウタは友達感覚でケンに話しかけた。「お前にも非があるんじゃね?ミクはお前に愛想つかしたんだよ。彼女は愛に飢えていたのさ。だから―」

 その場にいたユウタ以外の人間全員が笑った。ユウタはそれが理解できなかった。

 (コイツら、俺が正論を言ったから精神が崩壊したのか?)

 「アンタって底なしのバカだね!」着替えを済ませたミクが現れた。「自分のやったこと自覚してないでしょ?」

 ユウタの思考は固まった。(どうして?ミク?君は俺の嫁になる女なのに?子供も二人ほど作って、ほどほどに浮気してから三人目を作って、それからそれから―)

 「どう落とし前をつけるつもりだ、おっさん?」ケンがユウタの顔を覗き込みながら問いかける。

 「お金ですか?それでいいですか?口座に200万程度あるので、それでいいですか?」ユウタ自身、自分で言ったことが信じられなかった。

 「アンタがそう言うんなら、それで手を打とうぜ…」

 (俺は負けたんだ…この駆け引きに…ミクを助けることができなかった。コイツらはミクを騙し、俺のような良心的なイケメンを狩っているのだろう…)

 「早く服を着ろよ、おっさん!」

ユウタの左隣にいた青いニット帽をかぶった男が言った。ユウタはゆっくりと立ち上がるとブリーフを掴んだ。彼が着替えを始めると三人の男たちは一斉に携帯電話を取り出して雑談し始め、髪を乾かしたミクもその三人に加わる。

(雑魚どもめッ!!)ブリーフ姿のユウタはエナメルバッグを抱えてドア目がけて走り出した。彼は4人が着替えを始めれば隙を見せると考えたのだ。これはカードゲーマーとして経験を基にした戦術である!としておこう。

ユウタが走り出すと4人は呆気に取られたが、すぐに下着姿の男を追いかけた。4人が動いた時、ユウタはドアを開けて廊下に飛び出す。

走るユウタ。彼を追う男3人女1人。

奇跡的にもユウタはどんどんと追手との距離を伸ばしてエレベーターホールに近づく。

(俺の勝ちだぁーーー!!!)

ここでユウタはある決断を迫られた。逃げる彼の前に部屋の掃除を終えた清掃員が現れ、その中年女性は片手に黄色い何かを持っていた。清掃員はそれを廊下の脇に置いていた清掃用具入れに投げ捨てるも、その黄色い物体は廊下の真ん中に落ちた。ユウタはその物体が何か分かった。それはバナナの皮であった。

追われる身のユウタは決めなければならなかった。「真剣に逃げる」または「笑いを取る」。

バナナの皮との距離は近づいて行く。

(ええいぃ!何を迷っているんだ!)

危機に瀕した獣の様に神経を研ぎ澄ますユウタは迷わず決断を下した。そう、彼は正しい選択を選んだ。

 

 

 

 

  ブリーフ姿でコンビニまで連れて来られたユウタは渋々、そこのATMで100万円を両親の口座から引き下ろした。ATMの引き出し制限があるため、一度に200万を取り出すことはできない。ゆえに日付が変わると同時にもう100万を引き出すよう命令されている。

 ケンの車で一行は別のATMがあるコンビニへ向かい、日付が変わるとすぐユウタは再び100万円を引き出した。札束を取り出し口から抜こうとした時、タッチパネルに数滴の滴が落ちる。ユウタは自分の涙だと思ったが、実際は鼻水であった。自分が哀れで仕方なかったのだ。

 永遠の愛を誓うものだと思っていた女性が男たちと組んで美人局を行い、ユウタは愚かにも両親が必死に貯めていた大金の大半を失おうとしている。

 「今度から気を付けろよ、おっさん。」そう言うと、金を受け取ったケンたちはブリーフ姿のユウタを残して去って行った。

 どれほどの時間を歩いたのか、気が付けば辺りは黎明の色に染まっていた。ユウタはまだ某インターネット掲示板や複数のSNSサイトで『徘徊するブリーフ男』として有名になっていることなど知らない。しばらく歩き続けていると、ユウタはラップ音楽を耳にして自然と彼はそちらへ歩を進める。

 「戦争法案、絶対反対!」

このリードコールを聞いた群衆が同じフレーズを繰り返す。

「ABEを許すな!」

この群衆を遠くで見ていたユウタは何故か吸い寄せられるように、国会前で行われているデモの群衆に近づいた。

(そうだ。俺の人生が狂い始めたのはABEのせいだ。アイム・ノット・ABE。そうだ。彼らは正しい!ABEが全ての元凶だ!奴がいるから俺は職を失い、美人局にも遭い、カード大会の予選で負けたんだ!!彼らの仲間になろう!日本を変えるんだ。民主主義だ!立憲主義を暴走するABEから守るんだぁ!!)

「うおおおおおーーーーーーー!!!!!!!」

ユウタは走った。そう、彼は日本を変えるために立ち上がったのだ!

 

 

ご愛読ありがとうございました。

来週の金曜日から『革命家・滝川ユウタ!!』が始まる!かも… 

(次回もいつもと同じタイトルで5月20日に公開します。) 


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第6話 [カードーゲーマー・滝川ユウタ!!]

第6話「ユウタ、感激!!」

 

 グレーのニット帽に2サイズは大きいであろうスエットシャツ姿の若い男は「出る」と予想した場所に座ると慣れた手つきで千円札を投入口に入れた。ハンドルに右手を添え、彼は色褪せたジーンズのポケットから煙草を取り出す。男にとってパチンコは生活の一部であった。

 再び千円を投入しようとした時、左隣の席に男がやってきた。横目で見ると、ボサボサの髪に髭面の鼈甲眼鏡をかけた男が見えた。着ている服は埃と煤で汚れた深緑色の上着、黄ばんだ白いシャツに皺だらけのベージュのスラックスというみすぼらしい恰好であった。

 (汚ねぇな…)

 「一人か?」みすぼらしい姿の男が言った。

突然のことに若い男は驚いたが、ゆっくり隣の男へ顔を向ける。一瞬、若い男は誰だか分からなかったが、相手の目を見ている内に鼈甲眼鏡男の正体に気付いた。

 「関係ねぇだろ!」

 みすぼらしい姿の男は何も言わず、100万円の札束をパチンコ台の下皿に放り投げた。大金を見て若い男は素早くそれを手に取って両脚の間に隠した。

 「何考えてんだ!?」

 「お前に仕事だ。やり遂げれば、もう100万やる。」

 札束を穴が開くほど見つめている若い男は突然の申し出に混乱したが、願っていてもいないこの機会を無駄にしようとは思っていない。

 「仕事って何だ?」札束をジーンズのポケットに入れて若い男が尋ねた。

 みすぼらしい姿のユウタの顔に不気味な笑みが広がる。「お前が俺にしたことをある男にして欲しいんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 9ヶ月前…

 

 

 

 

 待ち合わせ場所にやってきたのはユウタが想像していた理想的な女性であった。茶色のロングヘアーに大きな双眸、筋の通った鼻、ピンク色の口紅に染まった唇、白い肌。機械的な程に整えられた顔立ちにユウタは言葉を失った。彼は顔の次に彼女の体へ視線を動かす。白いブラウスの上に紅いカーディガンを羽織り、薄ピンク色の花柄スカートを履いている。

 (こ、こ、こ、これが、ミ、ミ、ミ、ミ、ミック・ジャガー!!!????)

 「ユウくん…だよね?」異臭を漂わせる奇抜な服装のユウタに近づいてミクが言った。

 「そ、そ、そうでちゅ!!」狼狽えたユウタは舌を噛んでしまった。

 (い、いきなり、や、やっちまったぁーーーー!!)

 彼の脳内ではクールに自己紹介をしてホテルに連れ込む予定であったが、いきなり舌を噛むというアクシデントに見舞われた!ここで彼はプランBに移行することにした。

 「君がミクかい?思っていたよりもきゃわいいね。そうだ、お茶でもどうでしゅか?」

 お茶!これがユウタのプランBであった。彼が飛行機の中で読んだ恋愛マニュアル本の中にこう書いてあった:「食事やお茶も『前戯』なり」。

 (そう!お茶で俺のファースト・インプレッションをチェンジ!そして、その勢いでホテルにゴー!イエス!ウィー・キャン!イエス!高○クリニックゥ!!これぞ、パーフェクト・プランだッ!!)

 二人は近くにあったカフェに入り、ユウタの考える『前戯』が始まろうとしていた。しかし、彼が話すことはバトルソウルとセタモツ2の話しばかりでミクに話す暇を与えない。彼女は彼女で熱弁するユウタを他所にテーブル下で携帯電話をいじっていた。

 途中、ミクが熱弁するユウタの手を掴んだ。「ユウくん…そろそろ行かない?」

 (キィーーーーーーーーーータァーーーーーー!!!)

 「喜んでいぃ!!」

 

 

 

 

 

 「ポッ、ポォー!」

 天に昇るような気持ちを噛み締めることができず、ユウタが奇声を上げた。行為を終えるとユウタは余韻に浸り、もうこれ以上求めるもとはないと思っていた。ふと隣にいるミクを見ると、彼女は行為中も度々見ていた携帯電話をいじっている。

 (ふふっ。きっとミクは俺との行為をブログにアップしているんだろう。ヤっている最中はツイートもしていた様だし。この女、完璧に……俺に惚れ込んでいやがるぜッ!!)

 「ねぇ、ユウくん?」とミクがベッドから出てバスローブを羽織る。

 「どうした、ミク?」

 「ちょっと困ったことになっちゃった…」

 何事かとユウタは上体を起こす。「どういうこと?」

 「友達からLINEが来て、彼氏が私を探しているらしいの。」

 (な、何?か、か、かれ、かれし?カレシ?枯れ死?彼氏?今、彼氏って言った?いや、おそらくカレーと言いたかったのだろう。そうだ!カレーを彼氏と言い間違いに違いなッ!!)

 「カレーが食べたいの?」とユウタ。

 「はぁ?彼氏が私のことを―」

 ドアを叩くけたたましい音が聞こえてきた。ユウタとミクは驚いて飛び上がり、石のようにじっと動かずにドアを見つめる。

 「おい!ミク!いるんだろ!?開けろッ!」ドアの向こう側から男の怒鳴り声が聞こえてきた。

 「大丈夫だよ、ミク。静かにしていれば―」

 「ごめんね、ケンちゃん!」ミクはユウタを無視して外にいる彼氏に向けて言った。

 (何喋りかけちゃってるのよ、このバカ女はぁーーーーーー!!!!)

「ミク!早く出てこいよ!!」

 「できないよ…だって、ケンちゃん…怒ってるでしょ?」ミクの声は震えていた。泣いているのだろうと、ユウタは思った。

 (このバカ女!何、会話しちゃんってんの?いや、待て。待てよ、ユウタ。ここで俺がミクを守れば、二回戦に突入できるかもしれない!そうだ!それにミクは俺を惚れ直すだろう!いや、惚れる!間違いなく俺の虜になるぅ!!)

 「俺は怒ってない。俺が怒ってる相手は…お前を騙してホテルに連れ込んだ野郎だ!!」

 この言葉にベッドから降りようとしていたユウタは固まった。(もしかすると、ミクよりも俺が酷い目に遭うんじゃねェ?それはイヤだ。イヤだ!イヤだぁーいぃ!!)

 「開けちゃだめだよ、ミク。アイツは嘘ついてる!きっと俺を殴る!そして、君も殴る!言い切れる!俺たちを殴るよ、アイツッさァ!」全裸であることを忘れてユウタはミクの両肩を掴んで必死に説得した。全ては自分の身を守るためである。

 「で、でも…」ミクが俯く。

 「開けるんだ!ミク!俺はお前のことを心配しているんだ!」ミクの彼氏であるケンが叫ぶ。

 「違う!アイツは―」

 必死の説得にも関わらず、ミクはユウタを突き飛ばしてドアへと走った。全裸のユウタはベッドの上に倒れるも、素早く立ち上がってミクの後を追う。ミクまでの距離は約1メートル。タックルすれば彼女を止められるかもしれない。しかし、決断が遅すぎた。バスローブに身を包むミクはドアの錠を解除した。

これを見たユウタはその場に崩れ落ち、ミクの手でドアが開かれると彼は悲鳴を上げた。

「いやぁあああああああーーーーーーーーん!!!!!!」


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『S.I.U』!? [News]

 このゴールデンウィークの最中にWNがニューアルバムのタイトルとリリース日を発表しました!

 タイトルは『S.I.U』というSomething Is Up(何かが起こる)の略だそうです。なんとも意味深なタイトルであり、 WNの今後の活動に注目するよう促すような題名です。きっと、あの二人のことだから歴史に残るような偉大な曲を発表するのでしょう!

 リリース日は8月2日となっています!そして、収録曲は来月随時発表すると公式ツイッターに書かれています。

 デイビッド・ボーイ、そして、プリンスが去ったこの世界でWNは私が応援する偉大な歌手の一人となるでしょう。にわか音楽好きの私にとって、彼らの音楽は生きる動力源でもあるのです。はい。

 これからもWNの情報をできるだけ多く発信して行こうと思っています。皆で応援しよう!

 それじゃ! 

 

 (ちなみにハヤオの新作『カードゲーマー・滝川ユウタ!!』の第6話は今週6日に公開予定です。 )


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