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あの野郎ォ… [その他]

 またもWNに関係のない記事です。申し訳ありません。


 ハヤオの野郎が某ネットショッピングサイトの電子書籍サービスを使って、『返報』の販売を始めたことを昨日知りました。上巻とかふざけたやり口です。しかも、結構高い。

 あまりにも酷い手口なので、今週末(金・土・日)にブログを読んでる人々への感謝をこめて無料配布をしようと思っています。

 上巻となっていますが、中身はブログで公開している第1回から7回です。あと、意味不明の制作小話。地味に加筆と修正が加えられていますが、ブログ版との違いはないです。はい。

 ハヤオの話しでは、下巻から少しシーンを足すかもしれないと言ってましたね。まぁ、大筋は変わらないでしょう。

 最後に、最終回となる第14回のパート6ですが…公開日はまだ決まってないです。しかし、今月の末には出るかもしれない。残るのは戦闘シーンと後日談だと思うので、そこまで長くならないと思います。はい。

 詳細が判明次第、ブログを更新すると思います。はい。

 それじゃ!
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もうちょっと、続くンデス [余談]

 (ハヤオ関連の記事です。WNとは一切関係ありません。)

 予告も無しに『返報』の14-5を公開してしまいました。すみません。

 内容も酷く、これが最後ということにもならなかったことも、謝らなければならないですね。

 ハヤオと相談した結果、今年中には終わらないことが決定したので、完成している部分だけ出すことにしました。事実、ここで打ち切ってもいいかなぁ~、と思ってます。皆さんもそう思うでしょ?

 パート3から続く地味な戦闘ですが、残りは西野対三須、中島対守谷の結末だけです。はい。

 西野と三須の戦いは予め予定されていたので、ハヤオも良いペースで書いてます。一方、中島と守谷の戦いは2パターン存在していて、どっちを採用するか考えていたようです。はい。

 ちょびっと因縁めいた戦闘シーンが続きます。西野と三須は二人の因縁を理解していますが、中島と守谷はしてないんですよね。この二人を結ぶのは潜入捜査官であった「三浦」なんですが、彼らはそれに気付いてない。もしかしたら、一生、分からないかもね。

 まぁ、長々と書いても仕方ないので、いずれまた会いましょう!

 それじゃ!
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返報 14-5 [返報]

14-5





 反対方向から聞こえてくる銃声が大きくなるに連れて池田と沢木の不安は大きくなり、荒井と中島が降下する直前に二人は大多和と桑野の所へ急いだ。二人は壁の角に隠れて正面玄関へ発砲する捜査官と同僚を見つけ、近づくと肩を軽く叩いて合図を送った。

 驚いた大多和と桑野は目を見開いて銃口を駆けつけたSAT隊員二人に向けた。しかし、相手を確認すると、素早くテロリストがいる方へ向き直った。池田と沢木も先着していた二人に倣って銃撃を開始した。彼らが遮蔽物として使う壁は銃撃で複数の穴が開いており、部分的に削り取られていた。

 4人を襲う銃弾の数は減ることなく、増える一方であった。そして、テロリストたちは弾幕を厚く張りながら、数人を裏口へ移動させて挟み込もうとしていた。大多和たちがこのようにして銃撃を続ける理由は、応援がもうすぐ来ると思っているからである。

 再装填のために遮蔽物に身を隠した大多和は、背後にいた沢木と位置を交代してMP-5SDの予備弾倉に左手を伸ばした。風を切る音が彼の耳に飛び込み、その直後、右手に衝撃が訪れて短機関銃が弾け飛んだ。身を屈めて銃に手を伸ばすと、大多和は真っ赤に染まった上に3本の指を失った自分の右手を目撃した。それまで全く痛みを感じていなかったが、大半の指を失った血だらけの手を見て激痛と衝撃がネズミ取りの捜査官を襲った。

 一方、大多和が身を屈めた時、彼の背後にいた沢木は背中を被弾して地面に叩きつけられた。彼は急いで遮蔽物まで戻って振り返った。仲間の動きで桑野と池田は背後から迫る5人のテロリストに気付いた。

 素早く二人が振り向くと、血だらけの右手を左手で庇う大多和を見つけ、一瞬固まってしまった。その時、池田の胸と腹部にテロリストの銃弾が命中してSAT隊員が尻餅をついた。桑野が急いで応射しようとしたが、短機関銃は弾切れであった。ゆえに沢木が先に射撃を開始したが、胸と首に複数の銃弾を受けて仰向けに倒れた。

 この時、正面玄関にいるテロリストは回り込んだ仲間が敵を始末すると推測して銃撃を止めた。
仲間の死に気付く余裕がない桑野は素早くUSP拳銃を抜き、右腕を突き出して引き金を引いた。しかし、発砲と当時に胸部に銃弾を受けて転倒してしまった。池田は倒れた状態で迫るテロリストに銃撃を加えた。しかし、火力の強さが違ったため、相手に引く気配はない。その内に弾倉が底を着き、彼は急いで拳銃の予備弾倉に手を伸ばした。

 突然、大多和が雄叫びを発して立ち上がった。彼の左手にはUSP拳銃が握られており、捜査官は敵の銃撃に怯まずに前進しながら発砲した。この際に大多和は何度か防弾ベストに被弾したが、臆することはなかった。しかし、4歩進んだ所で右脚を被弾して片膝をついた。池田と桑野は応射したかったが、大多和が邪魔で撃つことができなかった。捜査官とテロリストの距離は4メートル弱であった。

 “ここまでか…”

 死を覚悟した大多和は両目を閉じた。そして、再び風を切り裂く音を耳にした。

 “これが最後に耳にする音か…”と彼は思った。

 しかし、その音は一度で終わらずに何度も続いた。不思議に思った捜査官がもう二度と開くことは無いと思っていた目を開き、目の前で横たわる5つの遺体を見た。ふと背後にいる仲間へ視線を向ける。地面に倒れて銃を構える桑野と池田は唖然として大多和を見つめていた。

 7メートル離れた茂みから物音が聞こえ、三人は素早く、音のした方へ銃を向けた。目を凝らして茂みを見ていると、二人のSAT隊員が姿を現した。

 「遅くなりました…」近藤が言った。彼は本間たちテロリストグループがグランドホテルを襲撃した際、車寄せにいたテロリスト二人と交戦したSAT隊員の一人である。

 「でも、時間ぴったりじゃないですか?」近藤の隣にいた藤田が訊いた。彼も近藤と共にグランドホテルで戦ったSAT隊員である。

 「応援って…二人だけか?」大多和が銃を下げて尋ねた。

 「いえ…」近藤が応えると、茂みから黒い衣装に身を包んだ3人のSAT隊員が静かに現れた。また、大多和は接近してくるプロペラ音を耳にした。








 小田完治の車列が札幌空港まで残り8kmと迫っていた。別ルートで移動している彼の家族はまだ17kmほど離れた位置におり、議員を護衛するSPたちは飛行機の時間を少し遅らせる必要があると考えた。

 先頭車両に二人のSPが乗っており、その後続車両に小田完治と彼を警護するSP二人が乗車している。議員を乗せた車両を運転するSPが、ルームミラーで後方の安全確認を行った。後続車が現れても、長くて5分もすれば道を外れることが多く、運転するSPは何事もなく無事に警護対象者を空港に送ることができると確信を得ていた。それは助手席にいるSPも同じで、小田完治もテロリストの襲撃は終わったと思っていたのだ。

 ふと運転するSPがルームミラーを見ると、新たな後続車が付いていることに気が付いた。

 “コイツもすぐ曲がるな…”

 そう思った時、後続車の助手席から男が身を乗り出して筒状の物を構えた。筒状の物はロケットランチャーに見えた。SPが急いでハンドルを右に切って弾道から逃せようと動いた。その直後、助手席から身を乗り出していた小野田が中国製RPG-7の引き金を絞った。

 ロケット弾が猛スピードで議員を乗せた車に接近したが、命中する寸前で車は右へ移動して難を逃れた。しかし、この回避行動によって、先頭車両がロケット弾の餌食となった。車体の後部が直撃の際に生じた衝撃で浮き上がり、黒い乗用車は火を吹きながら頭から転がって道路に叩きつけられた。車内にいたSP2人はロケット弾の直撃と共に死亡し、それを目撃した他のSPと小田完治は息を飲んだ。

 小野田は一度車内に戻って、後部座席から新たなロケット弾を手に取った。慣れた手つきで彼はロケットランチャーの再装填を行い、炎上する乗用車の横を通り過ぎると再び窓から身を乗り出した。一方の小木は小田議員が乗車する車との距離に気を付け、接近過ぎないように速度をコントロールしていた。これには小野田と名乗っている三須も満足していた。引き入れた捜査官は想像よりも、的確な判断と行動ができる人間であった。

 ロケットランチャーを構えると、小野田はジグザグ走行を繰り返す標的に向けて照準を合わせた。

 “先生、見てて下さい…”三須は亡き恩師のことを思いながら引き金を絞った。








 恐怖に顔を引きつる荒井の顔を見ながら、守谷は人差し指に力を入れた。

 しかし、引き金が絞り切られる寸前に大男に投げ飛ばされた中島が、死を予期していたSAT隊員の右隣まで滑って来た。突然のことに守谷の視線が中島に移った。この機を利用して荒井は頭を左に傾けて銃口から身を逸らし、両手で拳銃を掴んで銃口を上に向けさせた。

 額に切り傷を持つ男は蹴りを荒井に入れようとしたが、その直前、腹部に衝撃と激痛が走った。中島が仰向けに倒れた状態で守谷の腹部に右蹴りを入れたのだ。この攻撃で銃が荒井の手に戻った。

 東京から来たSAT隊員が立ち上がろうとした途端、中田が防弾ベストで守られた中島の背中を蹴り飛ばして床に叩きつけた。大男が次の攻撃に出ようとした時、荒井が拳銃を大男に向けた。しかし、血走った目をした中田は素早く、荒井の銃を掴んで彼の顔面に右拳を叩き込んだ。想像を絶する痛みに荒井の意識が薄れかけ、拳銃から手を離してしまった。

 仲間の危機に気付いた中島は立ち上がる前に、大男の右膝頭に左踵を叩き込んだ。鈍い音と共に中田の右脚が反対方向へ曲がり、激痛に苦悶の表情を浮かべて大男は歯を食いしばった。間を置かずに中島を援護しようと荒井が、右拳で中田の左膝裏を殴って大柄のテロリストに片膝をつかせた。この時、テロリストが荒井の拳銃を床に落とした。素早く若いSAT隊員は、被弾していない右足で中田の口を蹴り飛ばした。

 同じ時、隙を見て起き上がろうと動いた中島の顔面に蹴りが飛んできた。片膝をついていた彼は急いで防御しようと左腕を上げた。蹴りの威力が強く、顔面への直撃は免れたものの、左腕に痺れが走った。腹部を蹴られて苛立っている守谷は、素早く次の蹴りを入れようと動いた。

 守谷の右脚が再び東京から来たSAT隊員の顔面に向かって飛んできた時、中島は痺れる左腕を振りかぶって拳を水平に振り、守谷の右脛にそれを叩き込んだ。脛に走る激痛を感じて額に切り傷を持つ男は右脚を下げ、その間に中島が素早く立ち上がった。痛みに耐えながら守谷は目の前に立つ男を睨み付け、相手の動きを窺った。双方ともにできればカウンターで相手を仕留めようと考えていたが、外から聞こえる複数の銃声が二人の心に焦りを与えた。

 左腕の痺れが薄れると、中島は素早く左脚を一歩踏み出して守谷との間合いを詰め、右蹴りを先ほどハンマーパンチを浴びせた相手の右脚に向けて放った。すると、テロリストは左脚を軸に体を90度回転させて攻撃を回避し、そのまま回転の勢いを利用して左拳を中島の顔目がけて放った。しかし、中島は頭を左へ軽く傾けて攻撃を避け、同じく左ストレートを繰り出した。

 中島の速度に慣れてきた守谷は飛んできた拳を右手で払い流し、左拳でSAT隊員の右頬を殴打した。好機を逃すまいと、守谷は間を置くことなく中島の右側頭部に右フックを一発お見舞いした。

 続けて二発の攻撃を頭部に受けた中島は流石にくらっときたが、勢いに乗る守谷の左フックが彼の顎横に向けて放たれると、被弾した右腕を上げて直撃する数センチ前で防いだ。これは反射的な行動であり、意識して行われた行動ではなかった。激痛が右腕に走り、中島は歯を食いしばってその痛みに耐えた。これがテロリストに追撃の隙を与え、それと同時に弱点を教えることになった。

 守谷は再びSAT隊員の右腕を殴ろうと左フックを繰り出し、それはだぶだぶの服を着た中島の右腕に叩き込まれた。傷口から離れた位置に命中したにも関わらず、形容し難い痛みが右腕全体に走り、さらに傷口から血が噴き出た。

 素早くテロリストが二打目を放とうとした時、中島は左掌底を相手の顔面に叩き込み、二人の間に距離が生まれると左押し蹴りを守谷の腹部に入れた。しかし、テロリストは右足で踏ん張ってバランスを取り、左前蹴りをSAT隊員の股間に向けて放った。中島は左膝を内側に向けて相手の蹴りを防ぎ、距離を詰めようと接近してくる守谷の鼻頭に向けて左拳を突き出す。

 拳の接近を確認するなり、額に切り傷を持つ男は身を屈めて回避し、そのままSAT隊員の右側へ移動した。急いで相手を追いながら、中島が左ストレートを放つ準備に出た時、テロリストが負傷している中島の右腕を力強く掴み、さらに守谷はSAT隊員の傷口に中指を押し込んだ。

 想像を絶する激しい痛みに中島は苦痛の表情を浮かべて呻き声を上げた。それ見た守谷は声を出して笑い、中指をさらに深くSAT隊員の傷口に侵入させた。この時、優越感に浸るテロリストは、右から迫る肘の存在に気付けなった。中島は痛みから逃れるため、左肘を守谷の右側頭部に素早く二度叩き込んだ。

 不意を突かれたテロリストは痛みよりも屈辱を感じた。その感情が強かったため、彼は一度掴んだ中島の右腕から手を離そうとはしなかった。しかし、SAT隊員の左拳が守谷のこめかみを直撃した時、あまりの痛みに手の力が抜けた。この好機を逃すほど中島は間抜けではない。彼は左掌底で守谷の額を押すように殴り、続けて右蹴りで額に切り傷を持つ男の左横腹を蹴り飛ばした。

 東京から来たSAT隊員が脚を引く直前、テロリストは中島の右脚を掴み、さらに彼の防弾ベストの肩部分を掴んで左へ放り投げ、中島を壁に強く叩きつけた。そして、相手が態勢を立て直す前に守谷は、再び壁に中島を叩きつけようと前蹴りをSAT隊員の腹部に叩き込んだ。

 荒井に蹴られて前歯が折れた中田の口元は血で赤く染まり、彼は歯を失った痛みで苦しんでいたが、彼の双眸は左脚を被弾したSAT隊員の姿をしっかり捕えていた。

 再び荒井が右蹴りを同じく顔に向けて放とうとした。しかし、中田はそれを右手で掴み、左拳を水平に振って荒井の胸部に強烈な打撃を加えた。若いSAT隊員はこの攻撃で一時的な呼吸困難に陥り、パニックに陥った。その間に大男は、中島に折られた右脚を引き摺って荒井の上に馬乗りになり、両拳を交互に若いSAT隊員の顔面に叩き込んだ。本能的に荒井は両腕を上げて顔を防御するも、振り下ろされる

 中田の拳は重く、腕が痛みで悲鳴を上げ始めた。しかし、この間に彼の呼吸は元に戻りつつあった。
その時、大男の両手が荒井の首を掴んで強く絞め始めた。荒井の防御を退くことができなかったため、中田は隙だらけの首を掴んだのだ。元に戻りつつあった呼吸が乱されて若いSAT隊員は、苦痛の表情を浮かべて首を絞めるテロリストの手を掴んだ。しかし、ビクともしない。そこで荒井は左拳で中田の骨折している右脚を殴った。

 苦悶の声が大男の口から洩れ、荒井は腕を多く振って再びテロリストの脚を横から殴った。今まで痛みを堪えていた中田であったが、今回は大きな声を上げて感情を露わにし、右脚を庇いながらSAT隊員の右隣へ転がるように逃げた。

 首を絞めていた手が消えると、大量の酸素が荒井の肺に流れ込んできた。咽ながらも彼は次の攻撃に出ようと上体を起こし、その時、一度は奪われた自分の拳銃を見つけ、右手を伸ばした。

 一方、守谷が思い描いた通りに中島は壁に背中を強打し、苦痛の表情を浮かべた。次の攻撃を回避するため、東京から来たSAT隊員が動こうとした時、テロリストが中島の着ている防弾ベストの肩部分を両手で掴み、頭を少し後ろへ動かした。頭突きを予想した中島は、守谷の頭が振り下ろされる直前に前頭部を突出し、頭突きが繰り出されると同時にテロリストの鼻頭を砕いた。守谷の鼻から大量の血が吹き出し、SAT隊員は生温かい液体を頭部に感じた。

 この時、外で行われていた銃撃戦が一時中断された。しかし、廊下にいる4人はそれに気づいていない。

 呻き声を漏らしながら守谷は後退し、中島は追い打ちをかけるようにテロリストの股間を右足で蹴り上げ、相手が前屈みになると左拳を守谷の右頬に叩き込んだ。額に切り傷を持つ男は股間を両手で抑え、その場で両膝をついて丸くなった。相手の戦意が無くなったことを見ると、中島は荒井へ視線を向けた。

 ちょうど若いSAT隊員がUSP拳銃を手に取った時、中田が荒井に飛び掛かって来た。咄嗟に荒井は胸元で構えていた拳銃の引き金を絞り、銃弾がテロリストの顎を吹き飛ばした。そして、彼は大男のタックルを受ける直前にもう一度引き金を絞って、相手の胸部に銃弾を叩き込んだ。

 二発の銃弾を受けて息絶えようとしている中田は、最後に強力なタックルをSAT隊員に浴びせ、相手と共に床に落ちると同時に死亡した。一方の荒井はテロリストの体当たりを浴びた際、中田の肩が顎に命中し、脳震盪を起こして気を失った。

 急いで中島が荒井の所へ走ろうとしたが、何かが首に巻きついて動きを止められた。パラシュートコードが彼の首を圧迫し、SAT隊員が首に触れようと左手を上げたが、手が届く前に右膝裏を蹴り飛ばされて床に片膝をつかされた。首への圧迫がさらに強くなり、中島は顔を真っ赤にして呻き声を上げた。

 「すぐ仲間の後を追わせてやるよ…」パラシュートコードを強く引っ張る守谷は、首に巻き付いた縄を掴もうとしている中島の右脚を踏みつけた。テロリストは荒井が死んだと思っていた。

 首を絞められて後ろに引っ張られているため、荒井の状態を確認しようとしても、中島には床に倒れる黒い影を視界の隅に捉えることしかできない。呼吸が苦しくなり、目の前に靄がかかり始めた。







 車内はパニック状態であった。

 運転手のSPが冷や汗をかきながら、ルームミラーとサイドミラーを利用して襲撃者の姿を探し、見つけると急いでジグザグ走行し、さらに加速して距離を開けようとした。交差点が無いので、この方法で切り抜けるしかなかった。一方、助手席にいた彼の同僚は震える右手で拳銃をホルスターから抜き、振り返って後部座席にいる小田に伏せるように言った。それでも国会議員は迫りくる襲撃者の姿をリアグラス越しに見続けた。助手席のSPはシートベルトを外し、席から身を乗り出して小田完治の上着を掴むと急いでシートの陰に引っ張った。

 「伏せてくださいッ!」

 「そんなことより、アイツらをなんとかしろッ!」議員が怒鳴った。

 その時、三須がロケットランチャーの再装填を終えて窓から身を乗り出した。

 “先生、見てて下さい…”心の中で呟くと、三須はゆっくりと引き金を絞った。

 ロケット弾が発射される直前、三須と小木が乗る乗用車に衝撃が訪れた。その影響でロケットランチャーが少し上を向き、ロケット弾は標的の上を通過して数メートル先にあった車両用信号機に命中した。爆発と同時に破壊された信号機が小田を乗せた乗用車の前に落ち、突然のことに運転手は反応できず、車は落下してきた信号機に激突して動けなくなった。

 三須と小木が後方を見た時、二人は予想外の人物を目にして驚いた。

 「何でアイツがここにいるんだ!?」小木が思わず叫んだ。彼は西野が三須の仲間に捕えられていると聞かされていたので、同僚の出現にかなり動揺していた。それは三須も同じであった。

 「分からないッ!」動揺を隠して三須が助手席に戻り、ロケットランチャーを後部座席に放り投げた。すぐに彼は席の下に隠していたMP-5Kを取り出した。「西野は後だ。まずは小田を始末するッ!」

 西野に気を取られていた二人が意識を前に向けると、小田が二人のSPに連れられて乗用車から離れようとしていた。

 「轢けッ!」三須が逃げる小田を睨み付けながら叫んだ。

 命令を受けて小木が車を逃げる3人へ向けて走らせる。しかし、二人が乗る車が標的まであと6メートルに迫った時、西野の車が左後輪部分に体当たりしてバランスを崩された。テロリストの車はぶつけられた場所を支点に右へ回転し、一瞬、西野が乗る車と隣り合う形となった。ここで西野が三須と小木に向けて発砲しようとしたが、そうしようとした時に停車していたSPの車に激突し、エアバッグが作動して顔面を強く打った。

 小木は素早くハンドルを操作してバランスを保とうとしたが、ちょっとした操作ミスで車体を振り過ぎ、電柱にぶつかって車体後部がめり込んでしまった。それでもネズミ取りを裏切った捜査官は、アクセルを踏み込んで移動を試みた。

 「俺は小田を追う。お前は西野を始末しろ。」三須は短機関銃を右手に持って車を降り、小田とその護衛を追って走り出した。








 ヘリコプターのプロペラ音を消すように、断続的な銃声がグラウンド内に響いた。

 廃校舎の上空を旋回するヘリコプターには二人のSAT隊員が乗っており、その内の一人はH&K社製のPSG-1狙撃銃で地上にいるテロリストと交戦した。彼の隣にいる隊員は豊和工業の89式自動小銃で狙撃手の援護していた。

 上空の二人が地上にいるテロリストの注意を引き、その間に大多和たちの援護に来た5人のSAT隊員が、空に向けてアサルトライフルを発砲しているテロリストの側面に回った。一方の大多和、桑野、池田は後方警戒を頼まれ、三人は片膝をついて周囲に目を配っていた。

 二方向からの銃撃によって、優勢だと思い込んでいた守谷の部下たちは、混乱して四方八方に銃を向けて引き金を引き続けた。この混乱はSAT隊員たちにとって嬉しいものであった。銃弾が頭上を通過することもあったが、下手に狙われるよりも被弾する確率が低くなる。

 地上にいる5人のSAT隊員は、校舎入り口前に置かれた車を利用してテロリストに近づき、パニックに陥っている守谷の部下に銃弾を浴びせた。当初8人いたテロリストは狙撃手によって6人に減らされ、さらに地上のSAT隊員が銃撃を加えると一人また一人と倒れた。

 仲間の死を目にして絶望を感じていた最後の一人が立ち上がり、雄叫びを上げて手榴弾の安全ピンを抜いた。彼は力を振り絞ってそれを数メートル離れた場所にいる5人のSATに向けて投げた。その直後に男はヘリコプターに乗っていた狙撃手に胸を撃ち抜かれ、口から血を吐きながら倒れて息絶えた。グレネードはSAT隊員たちの2メートル手前に落ち、隊員たちは素早く車の陰に隠れて爆発から逃れた。

 銃声は完璧に途絶え、グランドにはヘリコプターのプロペラ音しかない。上空を旋回していたヘリコプターは機体を少し揺らして地上に着地し、乗っていた二人のSAT隊員が地上で戦っていた5人と合流した。

 「校舎内とその周辺を捜索するぞ!」地上にいたSAT隊員の一人が言い、他の6人が頷く。「二人は先着の隊員たちの手当を、その他は俺に続け。」

 指示を受け取ると、ヘリコプターに乗っていた二人のSAT隊員が大多和たちの所へ走った。彼らは緊急医療キットを持っており、重傷者がいればすぐにでもヘリに乗せようと考えていた。一方、地上で戦い続けている5人のSAT隊員は短機関銃の再装填を行い、銃を構えて慎重に校舎の中に入って行った。








 「まだ到着しないのか?」黒田が近くに座っていた女性分析に尋ねた。彼はSAT4名を小田完治警護、そして、西野を拘束するために派遣していた。

 「あと10分程かかる様です。」ポニーテルの女性分析官がパソコンのディスプレイを見つめながら、器用にキーボードを操作している。

 「あれ以降、西野から連絡はあったか?」

 「いえ、ありません。」作業に集中したい女性分析官は黒田との会話を切り上げたかった。

 「そうか…」

 支局長は落胆した表情を浮かべて、背後にある巨大スクリーンへ目を向けた。画面の左端にはグランドホテルで起こった出来事を報じている各局のニュースが表示され、反対側には北海道の道路状況、公共交通機関の運行状況が表示されている。画面の中央には小田完治の移動ルートと現在地の情報が映し出されていたが、分析官たちは議員を乗せた車が5分以上動いていないことに気付いていなかった。しかし、スクリーンを見ていた黒田は気付いた。

 「何故、議員の車が止まっているんだ?」先程まで話していた分析官に問いかけた。

 女性分析官が不機嫌そうな顔をして上司を見た。「もしかしたら、通信の影響で止まって見えているのかもしれません。」

 「確認しろ。」

 口を尖らせて分析官がキーボードを叩く。「通信に問題はありません。GPSの問題―」

 黒田は彼女が話し終える前に空いていたパソコンの前に座り、議員を乗せた車の位置情報を確認した。

 “5分以上前から止まってる…”黒田の背筋に悪寒が走った。

 彼は急いでSPとの連絡を試みたが、誰も電話に出なかった。

 「ヘリの出動要請だ。誰でもいい。手の空いてる捜査官を出し、議員の安全を確保しろッ!」








 拳銃を構え、小木が恐る恐る西野の乗用車に近づいた。

 車内は暗く、同僚捜査官の姿を確認することができない。小木は西野が運転席と助手席の上で横になり、自分を待ち受けているかもしれないと考えた。そこで彼は運転席側の窓とドアに向けて4度発砲した。しかし、反応がない。

 “逃げられた?”

 そう思った時、小野田が破壊した信号機の火がSPの車に引火して小さな爆発が起きた。緊張状態にあった小木は銃口をSPの車に向けた。素早く銃口を元の方向へ戻そうと動いたが、彼の後頭部に冷たく固い物が突きつけられた。

 「銃を捨てろ」西野が言った。彼の声は氷のように冷たかった。

 小木は両目を閉じ、自分の軽率な行動を呪った。組織を裏切った捜査官は拳銃を地面に落とし、それを西野の方へ蹴り飛ばした。

 「両手を頭の―」

 再び西野が口を開くと、小木は頭を左に傾けて銃口から逃げ、左足を軸に半回転して銃を持つ元同僚捜査官と向き合った。彼は素早く西野の銃を右手で掴み、左肘を相手の右側頭部に叩き込んだ。そして、肘打ちの勢いを利用して西野の顔面に入れようと拳を水平に振った。

 同じ訓練を受け者同士、相手の動きをある程度読むことができたため、西野は姿勢を低くして攻撃を避け、立ち上がりながら小木の顎に左掌底を突き上げるようにして打ち込んだ。続いて裏切った捜査官を突き飛ばそうと動いた瞬間、小木が銃の握られている西野の右手の指を殴って拳銃を奪い、そのままUSPの銃床で相手の顔面を殴りにかかった。

 しかし、西野は間一髪のところで上半身を仰け反らせ、銃床が彼の鼻頭をかすめた。小木の攻撃が大振りであったため、西野は相手の手首を左手で掴み、下へ引きながら右腕を小木の肘に押し当てて関節技を決めた。そのまま右足を軸に回転して西野は、元同僚を停車している車に叩きつけた。車体にぶつかる際、小木は右手で受け身を取ったので顔を打つことはなかった。それを予期していた西野は右拳を肘に向けて振り下ろし、裏切った同僚の腕をへし折った。

 呻き声を上げて小木が片膝をついた。その隙に西野は拳銃を取り上げ、有無も言わずに左腕を折られた元同僚の両脚を撃った。激痛に小木は一度体をビクンと反応させて地面に倒れ、撃たれた部分に触れようとしていた。

 「ここで大人しくしてろ。」西野がUSPの弾倉を抜いて残弾を確認した。残り5発。「すぐに小野田も連れて来る…」弾倉を押し込み、捜査官は倒れている元同僚を見た。

 「くたばれッ!!」唾を飛ばしながら小木が怒鳴った。彼の目は血走っており、今まで見たことないほどの憎悪を持っていた。

 しかし、西野はそれを無視して、小木の拳銃を拾い上がると急いで小野田の後を追った。







<次回が本当の最後になると思います。はい。>

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色々と忙しいよね? [その他]

 最近、全くブログを更新してなかったです。ちょっと忙しいもので、時間を割くことができなかったのです。すみません。

 WNは来年2月に、先月お知らせしたアルバム2つを同時リリースすることを発表しました。おそらく来年の初めくらいにジャケットが公開されると思いますよ。その時はここでも紹介しようと思います。はい。

 初回限定で特典が付くと思いますが、今のところ何の発表もないですね。おそらく、今回もアルバム10枚買えば、握手券がもらえるんだと思います。また、20枚買えば、ツーショット写真の権利を獲得できる。そして、30枚買えば、と一夜を過ごせる権利を得ることができるんだと思いますよ。

 いずれにせよ、特典が気になる方はできるだけ多くのCDを買うべきでしょうね!

 それじゃ!

 もしかしたら、これが今年最後かもしれないので…

 今年も良いお年を!





 (以下はハヤオ関連です。)

 『返報』ですが、年内に終わる可能性はかなり低いです。進捗状況はページ数で5。つまり、まだ15ページ以上もあり、ハヤオ自身は「まぁ、未完の方がカッコイイんじゃねぇ?」とかほざいでます。

 結末を知っているので言えるのですが、期待しない方がいい最終回です。特に驚きもないB級アクション映画的な終わりです。つまり、後悔しか残らないとうことです。はい。

 もし、ハヤオが本気を出して書き終われば、公開日をブログに書くかもしれません。まぁ、期待はしないで下さい…
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終わりは、近いようで遠い… [余談]

(注意!ハヤオ関連の記事なので、WNファンには関係ないです…)

 先週は金曜日に公開予定だった『返報』14-4を先走って、木曜日に流してしまいました。すいません。

 ハヤオが「勤労感謝の日だし、勉学に励んでいる学生や常に一生懸命働いている人々、そうでない人々への感謝を込めて早く公開しよう!」と言いだしたので、早めの公開になりました。まぁ、後悔しか残らない選択でしたが、楽しめた方がいたとは思えませんね。

 残り1回となった『返報』ですが、終る気配が見えないですよね?

 私もかなり不安ですが、ハヤオはページ数を通常の2倍に増やして書くそうです。つまり、無駄に長い最終回をお届けすることになるのですよ、皆さん。

 パート4は8割が戦闘もどきシーンで、あまり話しが進んでません。緊張感も何も無いシーンばかりで落胆したでしょうが、次はもっと酷いので覚悟するか、ブログを読むのを止めるしかないでしょう。

 中心となる話しは「西野」と「中島」でしょうな。この二人は一応メインキャラだし、彼らの話しを除けば、今までの内容がゼロ(はじめから内容がないですけど…)になると思います。はい。

 次回の公開は、来月を目指してます。今年で終わらなかったら、もう私は編集も何もしない。勝手にしろってやつですね。はい。詳細はいずれ報告します。

 それじゃ!


<追伸>
 ハヤオが某ネットショッピングサイトで『カードゲーマー 滝川ユウタ!!』の電子版を出した模様。明日から無料で読めるらしいです。ちなみにブログのは削除しません。
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返報 14-4 [返報]

14-4






  医務室で治療を終えた新村がメインホールに入ると、黒田を囲むようにして並ぶ分析官たちが見えた。部下に囲まれている支局長は大きなスクリーンの前で声を張って話しており、若い女性捜査官は話しを聞くために分析官たちの群れに近づいた。

  「―と思うが、先程とりかかっていた作業に戻ってくれ!」話し終えると黒田は、自分のオフィスと正反対の方向へ歩き出した。

 事情を知らない職員たちは野村と奥村を殺した犯人がまだ施設内にいると思っており、できることなら早く事件を解決して不安を払拭したかった。ゆえに黒田の指示は職員の不満を増幅させた。

「何があったの?」新村が近くにいた同期の女性分析官に尋ねた。

「野村さんと奥村さんが殺されたのよ。ここの地下駐車場で…」

 女性捜査官は自分の耳を疑うと同時に眩暈を覚えた。本間のアジトで野村に助けてもらった時から彼女は、先輩捜査官に心惹かれていた。

 「犯人は?」新村が落ち着きを取り戻しながら再び尋ねた。
 
 「まだ誰が犯人かも分かってない。それより、アンタ大丈夫なの?」同僚の顔色を見て女性分析官は心配になっていた。

 「ちょっと…ゴメン…」そう言うと新村は黒田の後を追った。支局長なら何か知っていると考えての行動だった。

 一方、水谷の拘束室に入った黒田はドアを閉じ、分析官が操作しているノートパソコンの画面を覗き込んだ。そこには複数のウィンドウが表示さており、水谷は頻りにキーボードを叩いてウィンドウの文字や数字を追加または消去していた。

 「それで、何が見つかった?」と黒田。

 「小野田の他にも内通者がいたようです。」男性分析官が新しいウィンドウを表示させ、その下部にあったツールバーの再生ボタンを押した。

 そのウィンドウに重なるように倒れる野村と奥村が映し出された。駐車場奥の監視カメラ映像を拡大したものだったので画質は落ちていたが、二人を判別することができるほどの物だった。倒れている二人に歩み寄る男がいた。男の姿を見るなり、黒田はそれが小木だと分かった。

 「小木が―」

 その時、映像の中で小木が奥村の頭部に銃弾を撃ち込み、黒田は開けていた口を閉じた。怒りに体が震え、きつく閉じた唇も小刻みに震えだした。次に彼が目にしたのは腰を屈めた小木と映像の右端から現れた小さな影だった。その影が画面の端で動くと、倒れていた野村の体がビクンと痙攣を起こしたように跳ねた。

 「ズームアウトしろ!」

 指示通りに水谷が映像を元の大きさに戻し、野村を撃った男を拡大表示させた。

 「小野田…」黒田が呟いた。

 「小野田は西野さんが参加していた作戦の通信を妨害した上に、監視カメラ映像のデータを改竄していました。主に堀内というテロリストがいた拘束室の映像とこの地下駐車場の映像です。」
パソコンの画面に映る小野田の姿から目を離さず、ゆっくりとネズミ取りの北海道支局長が上体を起こした。「小野田と小木の手配を行う。お前はここで調査を続けてくれ。まだ内通者がいるかもしれない。」

 「分かりました。」

 このやり取りをマジックミラー越しに見ていた新村は言葉を失っていた。また、彼女は自分の中で湧き上がってくる“何か”を感じた。








 手稲の中継基地で証拠隠滅を終えた中田率いる12人のテロリストは、緊張が解けて行く感覚を楽しんでいた。手稲から張碓までの移動で彼らは多くの検問を目にしていたので、待ち伏せ攻撃の可能性を考えて行動し、この用心深さが彼らの心臓に大きな負担を与えた。しかし、周囲を森に囲まれた廃校舎の姿が見えると、テロリストたちの間に走っていた緊張が消え始めた。そして、その時、彼らは爆発音を耳にした。

 車が校舎の前で止まると、中田は我を忘れて校舎の中へ走り、ドアを開ける寸前にベルトに挟めていた拳銃を抜き取った。他の仲間たちもアサルトライフルを抱えて大男の後に続いた。ドアを蹴り開けて室内に入り、中田は素早く廊下の安全確認を行う。人影はない。

 「5人は俺と一緒に右に、他は左に行け!」中田が指示を出し、テロリストたちは素早く行動に出た。








 西野たちは素早く、慎重に前進した。先頭に大多和と荒井、中央に沢木と池田、西野、そして、殿に中島と桑野と言う順であった。彼らはテロリストの態勢が立ち直る前に建物から退避し、増援が来るまで森を利用して戦おうとしていた。計画通りに動いていれば、4分後に増援部隊が到着する予定だった。しかし、黒田が小野田の捜索にその部隊を投入したため、中島たちが期待する増援は正反対の場所へ向かって出発していた。

 1階を目指していた一行であったが、2階に降りると下から駆け上がってくる複数の足音を聞いた。そして、大多和が階段へ足を踏み入れようとした途端、1階と2階の間の踊り場に上がってきた男に出くわした。男の手にはアサルトライフルが握られている。

 両者ともに目が合うと、敵と認識して銃口を向け合った。だが、大多和が引き金を絞ろうとした時、背後にいた荒井が身を乗り出して先に発砲し、男の胸に3発の銃弾を叩き込んだ。

 その間に二人の後ろにいた沢木と池田が壁沿いに歩いて直進し、曲がり角に到達すると先頭の沢木が素早く角から頭を出して進行方向の安全を確認する。そして、人影の有無を確認すると、彼はしゃがんで角から身を乗り出して援護の体勢に入った。素早く沢木の背後にいた池田を先頭にして一行が窓に沿って移動を再開した。

 2階に上がろうとするテロリストと交戦する大多和と荒井は階段の手摺りに身を隠して、敵の前進を阻止している。銃弾が二人の隠れている遮蔽物とその周りに命中し、破片と粉塵が2階に続く階段に拡散した。火力はテロリスト側の方が強く、大多和と荒井は遮蔽物から銃だけ出して撃つことしかできなかった。

 殿の中島が二人の横を通り過ぎる際、手前にいた大多和の右肩を強く二度叩いた。仲間全員が通り過ぎたという合図であった。ネズミ取りの捜査官は撃つのを止め、隣にいた荒井の肩を同じく叩いて中島の後を追った。荒井は弾倉が空になるまで撃ち続け、弾が切れると急いで大多和に続いた。

 振り返ると、片膝をついて銃を構える中島の姿を確認した。東京から来たSAT隊員は荒井の援護をするために待機していたのだ。彼の後ろには逆方向を警戒する沢木がいる。荒井は再装填の前に防弾ベスト左からフラッシュバンを取り、安全ピンを外すとテロリストがいる方へ放り投げた。それは音を立てて階段を下って行き、階段を駆け上がろうとしていた男たちの足元で爆発した。

 一方、池田を先頭に前進を続ける西野たちは前方から出現した6人の武装した男たちを発見し、銃撃を避けるために素早く壁の凹みや教室の中に飛び込んだ。彼らと距離があった沢木、荒井、中島は近くの遮蔽物へ移動するため、姿勢を低くして走り、そして、前方から迫ってくる男たちが発砲するなり三人は応射を開始した。西野たちも遅れている仲間のために弾幕を張り始める。

 敵のアサルトライフルから放たれた銃弾が頭上を掠っても、前進する三人のSAT隊員は遮蔽物に達するまで怯まず、敵に狙いを定めて慎重に引き金を絞り続けた。中島たちの銃撃によって、6人中1人が死亡し、2人が腕と脚に被弾して悲鳴を上げた。テロリスト側の被害は大きかったが、中島たちは目立った外傷を受けていなかった。確かに、いくつかの大口径の銃弾が服や防弾ベストを掠めたが、どれも大事に至る程の被害ではない。

 三人のSAT隊員は素早く先行していた仲間と合流し、壁の凹みに隠れると再装填を終わらせて周囲に目を配った。

 「集合しろ!」廃教室に身を隠していた大多和が叫んだ。彼の声は右耳に差し込まれた小型無線機を通って、西野を除く通信機を共有する仲間たちの耳に届いた。

 メンバーを自分のいる場所へ終結させようと、大多和は共に行動していた池田と一緒に援護射撃を展開し、他のメンバーも敵へ発砲しながら移動した。その時、中島の背中に衝撃が訪れ、思わず転倒しまった。それに気づいた沢木が足を止め、中島の腕を掴んで立ち上がらせた。

 最初は中島が滑って転んだと思った沢木であったが、振り返ると足止めしていたテロリストが走って来るのが見えた。憎悪を顔に浮かべて迫る6人のテロリストに沢木は恐怖し、急いで中島と共に大多和たちのいる教室へ急いだ。

 状況にいち早く気付いた荒井は、中島と沢木が無事合流できるように床に伏せて後方から接近してくる敵に向けて引き金を絞り続けた。すぐに他のメンバーもそれに倣って両方向から迫るテロリストへ発砲し、弾幕の厚さから敵の動きが少し鈍くなった。

 その頃、大多和は急いで窓付近にあった古い暖房のパイプにロープを縛り付け、何度かきつく引っ張って強度を確認すると窓を開けてロープの輪を外へ放り投げた。黒いロープの輪は落下するに従って一つの黒い線となった。次にネズミ取りの捜査官は下の状況を確認し、安全が確保されると後ろで警戒態勢に入っていた池田の肩を叩いた。

 「行くぞッ!」そう言うと、大多和はロープを掴んで窓から身を乗り出し、地面へゆっくりと降下した。








 銃撃戦が展開されている2階に降りると守谷は中田と合流した。額に切り傷を持つ男と彼の部下はわざわざ西野と中島が通った穴を抜け、3階を隈なく捜索してから来たために遅れて到着した。しかし、遅れても守谷は今までの無駄な時間を短縮させるだけの道具を持ってきた。

 「皆殺しにしろッ!!」守谷が手榴弾を西野たちが隠れている教室に向けて投げた。

 手榴弾は教室の前方を警戒していた西野と桑野の付近に落ち、それを確認すると二人は急いで教室内に身を潜めて爆発に備えた。強烈な爆風と破片が周囲に拡散し、通路と教室扉の窓が砕けて廊下がガラス片で満たされた。また、老朽して脆くなっていた壁や天井も破壊され、硝煙で満たされていた通路に埃が宙を舞った。

 守谷の参戦はテロリスト側の士気を高め、アサルトライフルを持つ男たちは一斉に銃撃しながら前進した。大口径の銃弾が一挙に西野たちが隠れる教室に集中し、追い込まれた西野とその救出部隊は床に伏せ、壁を貫通して室内に無数の穴を開ける銃弾の雨を回避した。問題は銃撃だけではなかった。守谷と中田が前進する仲間の後に続き、アサルトライフルの再装填が始めると、すかさず手榴弾を教室に向けて投げた。教室まで9メートルほどの距離があった。

 一方、大多和に続いて池田、沢木がロープを伝って降下して仲間の到着を待っていた。

 「先に行って下さいッ!!」西野と共に行動する桑野が、自分の拳銃用予備弾倉をネズミ取りの捜査官に渡した。

 「ダメだ!俺より君が―」弾がぎっしり込められた弾倉を拳銃に叩き込んで西野が叫んだが、手榴弾が爆発して最後の部分が掻き消されてしまった。

 「私の仕事はあなたを救出することですッ!」再び始まった銃撃に声を消されないよう、桑野が大きな声を上げた。

 「いい雰囲気のところ、申し訳ないですけど…」中島が這って二人のところにやってきた。「ここは私と荒井さんで足止めするんで、逃げてください!」

 「しかしッ!」西野が食い下がる。

 「もう話してる暇なんてないんですよぉ~。早く窓から逃げて下さい。じゃないと、みんな死んじゃいますよぉ!」

 西野は渋々這って窓の方へ急いだ。桑野は残るつもりでMP-5SD短機関銃の再装填を行った。

 「君も行くんだ!」中島が桑野に向かって叫んだ。

 これを聞いて桑野は短機関銃の予備弾倉を東京から来たSAT隊員に渡そうと動いた。しかし、中島はそれを制した。「代わりにフラッシュバンとスモークをくれッ!」

 言われた通りに桑野は二つの異なるグレネードを中島に渡し、急いで西野の後を追った。教室に残るのは中島と荒井の二人となった。二人は接近してくるテロリストの銃撃を耳にしながら、互いに目を合わせた。そして、ほぼ同時に発煙弾[注:スモークグレネード]の安全ピンを抜いて廊下へ放り投げた。

 廊下に落下したグレネードを目撃したテロリストたちは一瞬怯んだが、煙が噴き出てくると恐怖心が薄れて行き、再び前進を始めた。だが、すぐに視界が悪くなり、両方向から接近していたテロリストたちの勢いが止まった。その隙に中島と荒井は仰向けになって両脚で床を押しながら、窓へ移動を始めた。移動しながらも二人は敵のいる方向へ向けて発砲を行った。

 「押し続けろッ!」守谷が檄を飛ばし、煙幕に怯んでいた仲間たちが銃撃を再開した。

 その頃、中島と荒井は窓まで辿り着いており、あとはロープで降下するだけであった。二人とも短機関銃の弾倉が尽き、拳銃で弾幕を張り続けた。

 「お先にどうぞ!」中島が右隣にいる荒井に言った。

 「それでは、失礼しますッ!」そう言うと、荒井は一度拳銃をホルスターに戻した。銃弾が周囲を飛び交う中で立ち上がるのは怖かったが、彼は勇気を振り絞って中腰姿勢を取ってロープを掴んだ。壁に沿うようにして素早く立ち上がると左脚に激痛が走り、あまりの痛さに荒井は床に倒れてしまった。

 「大丈夫か?」拳銃に新しい弾倉を入れて中島が叫んだ。

 「脚を…撃たれました…」

 消え入りそうな声で呟いたため、荒井の声は中島に届かず、東京からSAT隊員は心配して拳銃を発砲しながら荒井に近づいた。

 「生きてるか?」荒井の背中に自分の背を押し当てて中島が尋ねた。

 「な、なんとか…」仲間に聞こえるように荒井はできるだけ大きい声を出した。

 「こんな所から、おさらばするぞ!」中島は発砲しながら、フラッシュバンを廊下へ投げた。これで少しでも時間が稼げると思い、彼は荒井の腕を掴んで立ち上がらせた。

 その時、窓枠に大量の血が降り注ぎ、中島の右腕の激痛が広がった。右腕を見ると、シャツの上腕部が血で赤く染まっている。泣きたくなるほどの痛みであったが、彼はそれを堪えて荒井を逃がそうと左腕だけで脚を負傷したSAT隊員の体を持ち上げようとした。

 一方、守谷と中田が最後の手榴弾をSAT隊員たちが隠れている教室へ投げ、それと同時に中島が投げたフラッシュバンが爆発し、テロリストたちの視覚と聴覚が一時的に麻痺した。守谷たちのグレネードの一つが教室のドア枠に命中し、そのまま室内へ進入した。

 偶然振り返った中島は教室に進入した手榴弾を目撃し、急いで荒井を床に押し付けて彼に覆い被さった。そして、手榴弾が爆発した。








 中島と荒井を待っている西野たちは神経を研ぎ澄ませて周辺警戒を行っていた。周囲に遮蔽物がないため、円陣を組んで周囲に目を配り、少しでも音が聞こえると素早く銃を音源へ向けた。

 小野田という人物を演じている三須を捕まえたい西野は、なかなか降りてこない中島と荒井に腹を立てていた。そのため、しきりに上を見て中島たちの姿を求めた。

 「議員の命が危ないんだ。すぐにでも追わないといけない。」西野が右隣にいる大多和に言った。

 「とは言っても、仲間は置いて行けないだろ。」脅威の有無を確認するため、視線をすばやく動かしながら大多和が応えた。

 「三須が…いや、小野田が議員の命を狙っているんだ!早く止めないと―」

 「小野田が議員を?」大多和が西野を遮った。彼は同僚の気が狂ったと思って動揺したのだ。「何故、アイツが?」

 「奴は議員と俺に復讐しようとしている。理由は後で話す。今は小野田を捕まえることが最優先だ。」

 「なら、一緒に行こう。」西野の説明に納得できなかったが、大多和は彼の必死さに敗けた。「SATのみなさんには申し訳ないが、俺と西野は小田議員のところへ向かう。」

 「援護はいらないんですか?」桑野が尋ねた。

 「できれば…欲しい。」大多和が言葉を詰まらせながら言った。この状況で援護を求めることが、どれだけ非礼な行為か分かっていたからだ。

 「それでは池田と沢木をここに残し、私が行きます。」と桑野が言った。彼は一度仲間に目を配り、二人の隊員は目を合わせると頷いた。「すぐに戻る…」

 「テロリストの車両が正面玄関にある。それを使おう…」大多和が西野を見た。彼は建物に侵入する際、正面玄関に駐車されていた2台の車を目撃していた。

 「そうしよう。」

 そして、西野、大多和、桑野は立ち上がって正面玄関へ向かった。大多和を先頭に素早く前進し、廃校舎の角まで来ると立ち止まり、念のために敵影を探した。テロリスト全員が建物内にいると思っていたが、アサルトライフルを持つ8人が正面玄関で警戒態勢を取っていた。彼らは敵の増援を恐れた守谷が配置した見張りだった。また、テロリストの車両が増えていることに気付いた。

 「簡単に行きそうにないぞ…」見張りを見つけた大多和が背後で待機する西野と桑野に言った。「重武装したテロリストが少なくても8人にいる。」

 姿勢を低くして西野は大多和の陰から正面玄関の様子を窺った。6台の車が正面玄関を塞ぐように、一列に停められている。盾として使うのだろう、と西野は思った。彼らから一番近い車は19メートル先にある。

 「私が時間を稼ぎをします。」桑野がスモークグレネードを手に取った。

 「一人じゃ無理だ。」大多和はここに来たことを後悔していた。「俺と桑野で注意を惹き付ける。西野、お前一人で行け…」拳銃の予備弾倉1つを西野に渡してネズミ取りの捜査官が言った。

 建物の陰に戻った西野が申し訳なそうな目で同僚を見た。「しかし…」

 「時間がないんだろう?俺の気が変わらない内に走る準備をしろ。」大多和がスモークグレネードを防弾ベストから取った。

 「ありがとう…」西野が頭を下げた。

 すると、大多和が口元を緩めた。「準備はいいか?」彼は自分の隣に移動してきた桑野を見た。

 「いつでも。」

 「んじゃ、行くか…」グレネードの安全ピンを外し、大多和はもう一度桑野を見た。SAT隊員が頭を縦に振る。それを確認すると、大多和と桑野はスモークグレネードを正面玄関へ向けて放り投げた。

 大きな弧を描いてグレードが宙を舞い、弧の真ん中あたりで煙を吹き出して地面に落ちた。見張りの8人はスモークグレードが発した煙の放出音を耳にすると、素早く銃を持ち上げて周囲に目を配った。
彼らが西野たちの姿を探す間、黄色の煙が拡散して8人の間に恐怖と混乱が走り、彼らは数歩下がって敵の姿を探し求めた。

 テロリストが受け身になっている隙を狙って西野は、列の最後尾にある乗用車に向かって一目散に走り出した。銃を構えることもなく、両手を大きく振り、両脚を素早く動かして彼は運転席に向かっている。大多和と桑野は建物の陰に体を半分隠して仲間の動きを見守り、テロリストが西野を発見しないことを祈った。

 ネズミ取りの捜査官が運転席側のドアに手をかけた時、テロリストの1人が西野を見つけ、叫び声を上げてアサルトライフルを発砲した。銃弾が乗用車のフロントウィンドウに複数の蜘蛛の巣に似た銃痕を生み、西野は反射的にしゃがんで身を隠した。仲間が発砲を開始すると、他の7人も乗用車に向けて銃撃を加えた。

 “上手く行かないな!”大多和が急いで煙の向こう側にいるテロリストに向けて短機関銃の引き金を絞った。桑野も彼に倣って発砲する。8人のテロリストは予期せぬ攻撃に怯み、注意を西野から大多和たちへ移した。

 乗用車への銃撃が止むと西野は急いで運転席のドアを開けようとしたが、ドアはロックされていた。仕方なく彼は銃床で窓を叩き割り、錠を解除してドアを開けると鍵の有無を確認した。幸運なことに車の鍵は差し込まれた状態で、捜査官はすぐにエンジンをかけて車に乗り込んだ。

 エンジン音に驚いたテロリストたちは車に銃口を向けた。だが、大多和と桑野の銃撃が激しかったため、すぐに銃を元の方向へ戻した。

 西野はギアをリバースに入れてアクセルを踏み込み、車がエンジンを唸らせて勢い良く後退を始めた。この動きは大多和たちに向けて発砲していたテロリストの注意を引き、複数の銃弾を受けて車のフロントライトが砕けた。捜査官は急いでハンドルを切って方向転換し、ギアをドライブに変えると再びアクセルを踏み込んだ。

 土煙を巻き上げながら、猛スピードで校庭を走り去る乗用車を視界の隅で確認した大多和は、小さな喜びと大きな悲しみの両方を感じていた。








 廃校舎との距離が開き、銃声が小さくなると、西野は上着のポケットから携帯電話を出そうとした。しかし、彼の電話は守谷に拘束された際に奪われていた。黒田と連絡を取って小野田の身柄を押さえたい西野は、できるだけ早く黒田に三須と守谷の計画について報告したかった。

 「クソッ!」ネズミ取りの捜査官は、公衆電話を探すしかないと思って悪態ついた。

 その時、シフトレバーの付近で明かりが生まれた。視線を移動させると、テロリストの一人が置き忘れたスマートフォンの画面が煌々と光っていた。西野はそれを手に取ると、急いで黒田のオフィスに電話をかけた。

 数回呼び出し音が鳴った後に黒田の声が聞こえてきた。「黒田です。」

 「すぐに小野田を拘束してくれ!」名乗ることなく、西野が送話口に向かって叫んだ。

 黒田は混乱したが、声の主が西野だということは分かった。「西野か?今、何所にいる?」

 「大多和たちに救出されて、国道5号線を走ってる。それより、小野田を―」

 「私も小野田と小木を追っている。」西野を遮ってネズミ取りの支局長が言った。「お前も…お前も内通者なのか?」

 黒田がまだ自分を疑っていることに、ネズミ取りの捜査官は衝撃を受けた。しかし、今はそのことについて話す時ではない。

 「俺は内通者じゃない。全ては三須―いや、小野田の罠だ。アイツは俺と議員の命を狙っている。」

 「何故?」

 「2年前の潜入捜査だ。俺は小野田と守谷と言う男が所属していたグループに潜入し、奴らのテロ攻撃を阻止した。死んだと思っていたが、名前と顔を変えて復讐の機会を窺っていたようだ。」

 西野の説明はにわかに信じがたいものであったが、黒田は敢えて口を挟まなかった。ゆえに捜査官は先を続けた。

 「小野田は議員を殺す気だ。議員の居場所が分かれば、小野田を止めることができる。」

 「なら、すぐにSPに連絡し、SATを出動させる。」黒田が上着のポケットから携帯電話を取り出した。

 「それじゃ間に合わない!俺が向かう。議員は何所にいる?」

 捜査官の問いに黒田は答えるべきか悩んだ。“西野が内通者ではないと確定した訳じゃない…しかし…”

 「議員は札幌空港に向かっている。」悩んだ挙句に支局長は議員の行き先を教えた。

 すると、支局へ向かっていた西野は急いでUターンした。








 フラッシュバンで麻痺していた感覚が戻り、さらにスモークグレードの煙が廊下から消えると、守谷たちは中島と荒井のいる教室に向かって歩き出した。慎重に銃を構えながら歩を進めるテロリストたちが教室のドア横に辿り着くと、外で立ち上る黄色い煙を目にした。煙の出現から少し遅れて彼らは銃声を聞いた。

 “敵の増援か?”素早く窓横にあった柱の陰まで移動して、守谷が外の様子を窺った。スモークグレードが生んだ煙でほとんど何も見えず、彼は乗用車で三須を追った西野の姿を見ることもなかった。

 「中田と3人は俺について来い!」額に切り傷を持つ男が叫び、命令を受けた4人が守谷の後を追って1階へ走った。

 残されたテロリスト12人の内、6人がゆっくりと敵が隠れている教室の中に入った。彼らが銃弾で滅茶苦茶に破壊された教室内で見たのは、暖房機の付近で倒れる二人の男だった。一人がもう一人の上に覆い被さるように倒れている。ガラス片や木片、埃で満たされた床には二人の物と思われる血が流れていた。

 “死んでいたか…”

 教室内にいたテロリストたちがそう思っていた時、荒井は薄目を開けて突撃銃を持つ6人の男を見た。男たちは銃口を床に向けていたが、もし荒井が少しでも動けば、素早くアサルトライフルを構えて撃ってくる可能性があった。ゆえに彼は死んだフリをすることにした。

 「荒井、早く降りて来いッ!!」右耳に差し込んでいた通信機から外で待機している沢木の大声が聞こえてきた。予期せぬ声に荒井は驚いて体をビクンと反応させてしまった。

 教室を後にしようとしていたテロリストの一人が、ピクリとも動かない中島の下で倒れているSAT隊員の動きを見た。

 「おいッ!」荒井の動きを目撃したテロリストが仲間を呼んだ。「コイツ、まだ―」

 金属片が床に落ちて甲高い音が室内に響いた。音を耳にしたテロリストたちが素早く振り返って音源を探す。そして、彼らは足元に転がって来る小さな黒い物体を見つけた。テロリストの一人が突如現れたフラッシュバンを蹴り飛ばそうとした時、眩い閃光と爆音が室内を満たした。

 死を覚悟していた荒井は目を閉じていたので視覚を奪われることはなかったが、爆音のせいで聴覚が麻痺した。6人のテロリストは両目を閉じて呻き声や怒鳴り声を上げ、教室の外で待機していた残りの6人が様子を見にやって来た。

 気が付くと荒井が背中に感じていた重さが消え、突然体を持ち上げられた。呻き声を上げながら、中島は若いSAT隊員に左肩を貸して血で赤く染まった右手でロープを掴んだ。右腕を少し上げるだけでも激痛が走ったが、彼は荒井と共に逃げるために歯を食いしばって痛みに耐えた。片脚を撃たれた荒井と一緒に行動するのは楽ではなく、二人の動きは遅くて窓枠を乗り越えるのに酷く手を焼いた。

 窓枠を上がるのに苦戦する二人を目撃した6人のテロリストは、フラッシュバンで二つの感覚を失って混乱に陥っている仲間を横目に突撃銃を構えて狙いを定めた。すると、教室前方ドアから進入した三人の一人が仰向けに倒れた。
 
 男の顔には大きな銃痕があり、そこから血が流れ出ている。銃弾は顔よりも後頭部に大きなダメージを残し、男が倒れると同時に大量の血が床に広がった。他の5人は中島と荒井から死亡した仲間へ視線を向けた。続いて死んだ男の隣にいた男が同じように倒れた。今回は首に銃弾を受けていた。間を置かずに三人目、四人目が頭を撃ち抜かれた。

 一方、中島は左腕だけで荒井を持ち上げて窓枠を乗り越えた。荒井が先にロープを握り、被弾していない右脚でバランスを取って降下を始めた。素早く中島も荒井の後に続いたが、彼の場合は右腕を撃たれていたので、両脚を器用に使って降りるしかなかった。それでも二人はテロリストの射角から外れ、距離も少しずつ離した。

 テロリストの中に混乱が生まれた。仲間の死に気を取られている間に、追い込んでいたはずのSAT隊員二人が窓から姿を消した。そして、追跡しようにも窓の外に広がる森林から飛んでくる銃弾が彼らの動きを止めた。姿の見えない狙撃手の狙いは鋭く、ほぼ急所に銃弾を撃ち込んできた。12人いたテロリストは4人にまで減らされた。

 「良い感じじゃない?」単眼鏡越しにテロリストの動きを見ていた藤木が言った。

 「それじゃ、そろそろ議員の所へ行きませんか?」10倍のスコープを通して敵の姿を探す小川が口を開いた。

 「そうだね…」

 小柄の女性捜査官がスコープから顔を離し、狙いを安定させるために寄り掛かっていた木から身を引いて立ち上がった。

 「そのライフル…G-28だっけ?」藤木が小川の持つセミオートマチックの狙撃銃を指差す。「それの使用報告書を書いて欲しい。本部が気に入れば、採用になるかもしれないし…」

 「はーい。」面倒くさそうに小川が言った。








 自分は普通の人よりも優れている。小木はそう思っていた。そして、彼を正当に評価しない世の中に失望していた。

 警察から引き抜かれた小木は他の捜査官よりも積極的に行動し、23件のテロ計画を阻止してきた。刑事時代の知識と経験を活かして多くの情報提供者を獲得し、彼らから様々な情報を入手して小木は組織に貢献してきた。事実、北海道支局が有する情報提供者の12%は小木の管理下にある。それでも彼に対する黒田の評価は低かった。

 職場に対する鬱憤が募る中、テロリストの追跡中に小木は被弾して入院した。大多和の処置が素早く、そして、的確であったために命に別状はなかったが、この事件で小木のネズミ取りに対する忠誠心に亀裂が走った。

 事件発生前から容疑者の武器携帯が確認されていたのにも関わらず、黒田は拳銃携帯を頑なに拒否し、穏便に拘束するように捜査官たちに求めた。その結果、テロリストと交戦して小木は腹部を被弾した。入院しても黒田が見舞いに来ることはなかった。他の職員も彼の様子を確かめようとしなかった。しかし、例外が一人だけいた。

 小木が退屈そうにベッドに寝転がってテレビを見ていると、果物の手土産を持った小野田良平が病室にやってきた。

 「元気ですか?」小野田が人懐っこい笑顔を浮かべた。

 予期せぬ来客であったが、小木は嬉しかった。両親や友人の多くが他県に住んでいるため、話す相手は看護師または医師だけあり、個室のベッドに寝ていることが多かったので他の患者との交流は皆無だった。小野田とはあまり話した事がなかったが、腹部に銃傷を持つ捜査官は気にせず職場のことを日が暮れるまで尋ねた。

 小野田の偽名を使う三須は何度もお土産を持って小木を訪れ、互いに職場の愚痴を言い合った。この時、小木は小野田も自分と同じように、職場に不信感を持っていることを知って嬉しかった。二人は2週間と言う短い間で友情を深めた。三須は小木と彼の情報提供者を利用するつもりであったが、小木の方は完全に三須を友人の1人だと信じていた。

 「一緒に今の組織を変えよう…」退院の1週間前に三須は計画を打ち明けた。詳細については伏せたが、彼は小木にテロ攻撃の計画とそれが対テロ機関の体質を変える唯一の方法であることを説いた。

 ネズミ取りへの忠誠心を捨てていた小木は、三須の計画に賛同して協力することを誓った。その一環として、自分の情報提供者を利用して武田衛の行動をネズミ取りに流した。全ては三須が手配したテロリストの動きを秘匿するための行動であり、黒田が指揮する対テロ機関は疑いを持つことなく武田衛に全労力を注いだ。武田を餌にする案は守谷のものであった。武田であれば、上手くネズミ取りの注意を引くことができると彼は確信していたのだ。しかし、かつての仲間であった武田との直接的なやり取りは求めなかった。全ては秘匿性を保つためだった。

 「どうやら、議員は家族と別行動を取り始めたようだ…」助手席でノートパソコンを操作する三須が言った。

 「狙いは議員のままなのか?それとも両方か?」小木が横目で助手席に座る男を見た。

 「まずは議員だ。それから家族にしよう。」

 「道はこれで合ってるのか?」

 「大丈夫だ。あと10分も走っていれば、議員の車列が見えるさ…」








 地に足が着いた瞬間、中島の体に走っていた緊張が解けた。彼は左手で右腰のホルスターに収められていたUSP拳銃を抜き、荒井の横に並んだ。彼よりも先に降下していた荒井は壁に寄り掛かって周囲の安全確認を行っていた。

 「どうやら、先に行っちゃったみたいですね…」視線を鋭く周囲に配りながら荒井が言った。

 「別の方向から銃声が聞こえるから、そっちの応援に行ったんじゃない?」中島は一度片膝をつき、拳銃を左膝裏に挟めると弾倉を抜いて残弾を確認した。薬室の銃弾も合わせて、残り5発。残弾少ない弾倉を元に戻して予備弾倉のホルスターを確認したが、そこは空であった。

 「応援に行きましょう。」荒井が片手をついて壁から離れた。

 「止血を先にしよう。このままじゃ、死んじゃうよ。」降下の際に利用したロープの一部を中島が小さいナイフで切断した。

 荒井の怪我を考慮した中島は5メートルほど離れた林ではなく、危険を承知でもう一度廃校舎の中に戻った。苦戦しながらも二人は近くにあった窓から建物に進入し、埃とゴミで一杯になっている部屋に入った。ドアは閉まっており、またテロリストが出したと思われるゴミの山があったため、身を隠すにはちょうどいい場所であった。

 傷の様子を確認した二人は、切り取ったロープを使って出血部位の少し上をきつく縛った。これで出血の勢いを防いだが、できるだけ早く適切な処置を施す必要があった。

 「ところで、荒井さんの残弾は?」中島が思い出したように尋ねた。

 「薬室合わせて7発です。予備はもう無いです。中島さんは?」

 「あと5発だよ。」そう言うと、東京から来たSAT隊員は拳銃から弾倉を抜き、薬室の銃弾も取り出してそれを弾倉に入れると荒井に渡した。「何の足しにもならないと思うけど、持っててよ。」

 「でも…」

 「んじゃ、オイラはそろそろ行くよ。」中島が立ち上がった。しかし、窓の外を走る複数の影を見て、彼はすぐ姿勢を低くした。

 「俺も行きます!」5発の銃弾が込められた弾倉を、防弾ベストのポケットに入れて荒井が言った。「応援が来るまで戦います。」若いSAT隊員は被弾した左脚を庇いながら立ち上がった。

 「弾も少ないし、その怪我じゃ邪魔になるかもしれないよ。」

 「仲間は見捨てることはできません!」

 中島は困った顔をして考えた。荒井は変わらず真剣な眼差しを東京から来たSAT隊員に向けている。

 「弾の数には気を付けてよ。」中島が荒井に肩を貸した。

 「ありがとうございます!」

 二人は外にいるテロリストを警戒して、敢えて廊下に出ることを選んだ。また、これは正面玄関にいるであろう敵を撹乱するための行動でもあった。中島がドアノブを回し、静かに扉を内側に引いて廊下の様子を窺う。暗い通路に人影はない。ドアを開けて東京から来たSAT隊員は、壁に寄り掛かっていた荒井に肩を貸してと共に廊下に出た。そして、二人は固まった。

 守谷と中田は2メートル先に現れた二人のSAT隊員を見て虚を突かれた。この二人は職員専用口から逃げようと急いでいた。

 素早く荒井が銃を二人のテロリストに向け、中島が部屋へ戻ろうと動く。それを見ても、中田は躊躇せずに突進してきた。猛スピードで接近してくる大男を見て中島は、荒井を室内へ戻そうと左手で突き飛ばし、中田と向き合った。

 一方の荒井はバランスを取ってドア枠にしがみつき、すぐに体勢を立ち直して廊下にいるテロリストへ視線を戻す。その時、ちょうど中田が彼の目の前を通り過ぎ、中島に強烈なタックルを浴びせようとしていた。ゆえに荒井はもう一人のテロリストの姿を探した。彼が守谷を見つけた時、テロリストの拳銃が自分の方へ向けられていた。荒井はすぐに壁から離れ、守谷に向けて発砲した。

 タックルを受ける直前に中島は右斜め前に移動し、左肘を中田の顔面に向けて放った。しかし、大男は見た目から想像できない速さで攻撃を回避して、左へ体を回転させて右フックをSAT隊員の横腹に叩き込んだ。すかさずテロリストは立ち上がりながら、右アッパーを中島の顎に向けて繰り出す。東京からSAT隊員は上体を後ろへ下げて攻撃を避けると同時に、左蹴りを中田の股間に入れた。股間への攻撃に中田は悶絶し、彼の勢いが弱まった。好機を逃すまいと、中島は左拳を水平に振って大男の顎横に叩き込み、その勢いを利用してテロリストの右肩を掴んで引き寄せると、左膝で中田の腹部を蹴り上げた。

 一方的に攻撃される中田は苛立ち、SAT隊員が左肘打ちを放とうとするなり、中島の防弾ベストを掴んで左へ放り投げた。

 至近距離であるにも関わらず、荒井は守谷を仕留めることができなかった。左脚の怪我が集中力を削ぎ、焦りが狙いを不安定にさせていた。残弾が2となった時、守谷の銃に異変が起こった。空薬莢が排出口に挟まり、動作不良を起こした。額に切り傷を持つ男は故障した拳銃を荒井に投げつけ、SAT隊員が体勢を立て直す前に距離を縮めて荒井の拳銃を掴んだ。

 若いSAT隊員は守谷を突き飛ばそうとしたが、片脚だけでは上手く力を入れることができず、顔面に守谷の掌底を受けると同時に拳銃を奪われた。この時、荒井はバランスを崩して尻餅をついた。素早く顔を上げると、目の前に銃口があった。

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年末はどうなる? [その他]

 いや~、今年もWNの年越しライブがあると思っていたんですが、無いようですねぇ~。

 これを聞いた時は、「遂にWNも紅白に呼ばれたのか?」と思って興奮したもんですが、どうやら二人とも休養が必要になったようですね。いつも全力で音楽活動に励んでいるので、仕方ないことでしょう…

 ファンとして、彼らには健康でいて欲しいです。最近ではNが激太りしたとの情報もあり、女性ホルモンの投与を始めたのか、それとも暴飲暴食の癖がついたのか…

 まぁ、個人の自由ですが、素晴らしい音楽の活動を続けて欲しいので、健康でいて欲しいですね。皆さんもそう思うでしょ?

 
 あと、関係のないハヤオ関連ですが…

 彼の体調が優れないので、今月はパート4の公開だけになりそうです。一応、11月24日(金)に14-4の公開を予定してます。

 アクセス数が少なければ打ち切りにできるので、WNのみなさんは来月までアクセスは控えてくださいよ!じゃないと、ハヤオのファン扱いされますよ!!

 それじゃ!
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ぶっとんだ展開:『返報』14-3を振り返る [余談]

 ハヤオの体調不良によって、『返報』は来月末くらいまで延期される予定です。はい。

 今日は第14回パート3における「ぶっとんだ展開」を振り返ります。まぁ、最初から変な物語なんですが、パート3は中でもぶっとんでると思いますね。

 西野の救出に来た中島たちの作戦ですが、「理論的」には可能です。でも、条件付きですが…

 廃校舎という老朽化した建物の床と壁、爆薬の種類と量、起爆のタイミング、標的の位置などなどの条件が、揃っていなければできなかったでしょう。中島があの短時間でこれらの条件が揃っていることを知っていたかどうか、読者の想像に任せます。設定上、化け物みたいなキャラなので、もしかしたら、するかもね…

 まぁ、中2病をこじらせているハヤオが書きたかった場面の1つらしいので、ご都合主義の展開ですが、ここまで読んでる人々ならば許せる範囲だと思います(パート4から読者の数が減ることを祈ってますよ、皆さん!)。

 次回のパート4には、いつものドンパチ系バトルもどきシーンが多数あります。ゆえに、あまり話しは進みません。ハヤオのやる気次第で、「黒幕は他にいた!続きは劇場版でッ!」的な終わり方もあるかも…

 長くなりましたが、第14回パート4と5は来月末となる予定なので、それまでに『返報』のことを忘れ、共にWNを応援しましょう!

 それじゃ!
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返報 14-3 [返報]

14-3







 「小野田が三須?」西野は唖然とした。「ありえない。そんなこと…」

 「アイツも苦労したらしいぞ…」守谷が椅子から立ち上がった。「特にお前が拘束された時だ。本来であれば、小田の事務所を襲撃した時にお前も議員も死ぬ予定だった。しかし、お前は小田を救った…小野田は取り乱していたが、すぐにお前と他の連中を唆してホテルに向かわせた。まぁ、これも失敗したが、まだ終わった訳じゃない。」

 ネズミ取りの捜査官は未だに守谷の話しが信じられなかった。“嘘だ。コイツは嘘を言っている。俺も混乱させるつもりなんだ…”

 「アイツも小田を始末したら、ここに来る。お前を始末するためにな…」

 守谷が一瞬、西野に背中を見せた。捜査官は両手を動かして逃げようとしたが、縄はビクともしない。しかし、彼の座らされている木製の椅子は古く、西野が動く度に軋む音がした。

 「それまで、思い出話しに浸ろうじゃないか…」額に切り傷を持つ男が、机に置いていたナイフを持ち上げた。

 振り返ると、守谷は椅子に両手を固定されたまま突進してくる西野を見えた。彼は素早く西野の胸に向けてナイフを突き出した。だが、ネズミ取りの捜査官は刃物が突き出される瞬間に体を捻り、椅子を守谷の右横腹に叩きつけた。

 虚を突かれた守谷は呻き、そして、彼の額に青い筋が浮かんだ。テロリストはナイフを水平に振って切りかかったが、刃が捜査官に届く前に西野は再び椅子を守谷に叩きつけた。2度目の衝撃で椅子が壊れて解放されたが、手首にはまだ縄と肘置きが付いている。

 椅子による攻撃で激痛に悶える守谷は素早く動くことができずにいた。その間に西野は机にあった自分の拳銃に手を伸ばしたが、テロリストはそれを阻止するために捜査官の左脛を蹴り飛ばした。痛みで伸ばしていた手は意図していた拳銃ではなく、守谷が使用している携帯電話を取ってしまった。

 西野が再び拳銃を取るために動くと、額に切り傷を持つ男がベルトに挟めていた拳銃を取り出してネズミ取りの捜査官に向けた。引き金にかけられた指が動く寸前、西野は反射的に窓を突き破って外に飛び出した。








 新たに指揮を執ることになったSPの『大窪』が大まかな予定と移動ルートを小田完治に説明し、遅くとも15分後には出発する旨を伝えた。議員とその家族は丘珠空港こと札幌空港に送り届けられ、その後、チャーター機に乗って東京に行く計画になっていた。

 「二人で話せないか?」説明を聞き終えた小田完治が大窪に言った。

 「はい…」少し戸惑った様子を見せたが、SPの大窪はドアの近くにいた仲間に視線を送った。すると、視線を受けた女性SPが応接室のドアを開けた。

 「お前たちは外で待っててくれ。」小田が隣に座る家族の方を向いた。

 「どうして?」小田の妻が尋ねた。「別に構わないでしょ?」

 「すぐに終わる。それにどうしても二人で話したい事があるんだ。頼むよ。」

 納得は行かなかったが、小田の家族は重い腰を上げ、何度も彼の方を振り返りながら部屋を後にした。

 女性SPがドアを閉め、応接室は小田と大窪だけになった。SPは背筋を伸ばしたまま、警護対象者が話し始めるのを待ち、小田はブラインド越しに見える家族の姿をソファーから目で追っていた。その眼差しは悲しそうであった。

 「議員…」大窪が口を開くと、小田完治がSPの方へ視線を戻した。

 「すまないな…ちょっと頼みごとがあるんだ。」

 「何でしょう?」

 「私と家族を別々に送ってもらいたい。」

 大窪は虚を突かれ、目を見開いた。「しかし、そうなれば―」

 「襲撃者の狙いは私だ。私の家族ではない。一緒に行動すれば、家族が犠牲になる…それはできるだけ避けたい。空港に行くまでだ。その後は共に東京に戻る。」

 「お気持ちはわかりますが、ご家族とご一緒に行動された方が護衛を強化することができます。もし、別々に行動すれば、護衛も二手に分けることになって守りが弱くなります。」大窪は小田の案に反対であった。「それにご家族も反対を―」

 「家族には私から説得する。」小田はこれ以上話す事は無いと言うように、ソファーから立ち上がった。「時間もないだろうから、早く家族に説明したい。席を外してもらえるかな?」

 SPは渋々立ち上がって応接室を後にした。








 仕事を終えた毛利直弘は重く圧し掛かる疲労感に気怠さを抱きながら、車の鍵をスラックスのポケットから取り出した。警備員である彼は今まで巡回と監視カメラ映像の確認という退屈な毎日を過ごしていたが、今日は職員の拘束やテロリストの逃亡などで異様なほど忙しかった。

 藍色の乗用車に乗り込むと毛利は鞄を後部座席に放り投げ、スマートフォンを車のステレオに繋げてお気に入りのアーティストの曲を流した。曲のイントロが聞こえてくると車を発進させ、歌が始まると毛利は小さな声で歌詞を口ずさんだ。ハンドルを右に切って出口を目指し、いつものように彼の私用車がある駐車場へ向かおうとしていた。

 歌詞を口ずさんでいた警備員であったが、右折を終えようとした時に思わず急ブレーキを踏んで額をハンドルにぶつけそうになった。彼は素早くサイドブレーキを引いて車から降り、血の海に横たわる2つの遺体に駆け寄って脈を確認した。

 “し、死んでる…”

 毛利は野村と奥村の死体から後ずさり、車に置いていたスマートフォンを取って緊急連絡先に電話した。








 西野と守谷のいる建物は5階建で、二人は5階にいた。ゆえに窓ガラスに体当たりして外に飛び出すなり、ネズミ取りの捜査官は死を予期した。

 重力に引かれて落下する捜査官は目を閉じて衝撃を待った。しかし、待てども衝撃は訪れない。閉じた目を開けようにも、瞼は思い通りに動かず、ゆっくりとしか開かない。睡魔に襲われているかの如く重い瞼が半分まで上がると地面が見えた。だが、そこに至るまでが永遠のように感じられた。全てがスローモーションなのだ。

 反射的に西野は両腕で頭を庇おうとするも、腕はゆっくりにしか動かない。地面が数メートルに迫っていたが、両腕は顔から15cmほど離れた場所にある。

 1m。

 やっと、両腕が頭まで届き、ネズミ取りの捜査官は衝撃に身構えた。その次に来るのが死だと思っていても、彼の生存本能はまだ生き続けることを求めていた。

 凄まじい衝撃と共に西野はコンクリートに叩きつけられた。想像を絶する激痛が全身に走り、捜査官は呻き声を上げた。痛みに悶える西野であったが、それと同時にまだ生きていることに驚きと喜びを感じていた。

 捜査官は地面に落ちたと思っていたが、実際は3階の屋上に落ちていた。この建物は廃校になった小学校であり、3階と4階の部屋数が違ったために3階から下が少し突き出ていて階段の様になっているのだ。それが西野の命を救うことになったが、その代償に形容し難い激痛に苦しめられることになった。両腕と脚が痺れ、痛みから逃れようと仰向けに寝転がってネズミ取りの捜査官は呼吸を整えた。この際に落下の直前に掴んでいた守谷の携帯電話を落とした。

 “逃げろ!”

 捜査官の本能が叫んだが、身体が言う事を聞かなかった。痛みに耐えながらゆっくり上体を起こすと、銃声が真上から聞こえ、その直後に脚の間のコンクリートが弾け、その破片が西野の体に降りかかった。視線を上げようとした時、再び銃声がして右足近くに着弾した。

 瞬間的に大量のアドレナリンが分泌され、全身を走っていた激痛が和らぐのを西野は感じた。そして、三度目の銃声が聞こえる前に彼は目の前にあった窓に向かって走り出した。両腕で頭部を守りながら、西野は右肩から窓に体当たりして転がり込むように室内へ逃げ込んだ。

 しかし、休む間もなく彼は再び脅威に直面した。西野は銃声を聞いて5階へ急いでいた男と鉢合わせし、男は急いでアサルトライフルを構えようと動いた。素早く捜査官は左へ移動してライフルの射角から外れると、被筒(注:ハンドガード)と銃床を掴んで股間に向けて右蹴りを繰り出した。股の間に繰り出された右膝は綺麗に命中し、相手のライフルを持つ手の力が弱まった。その隙に西野は銃床を軸に被筒を持ち上げ、男の鼻頭に叩きつけた。念のために三打目を入れようとしたが、背後から声が聞こえてきたので、すぐにライフルを取り上げて遊底を一度引き、躊躇うこと無く相手の胸部と頭部に銃弾を撃ち込んだ。

 まだ両手首に縄と肘置きが固定されていたが、西野はインド製のアサルトライフルを構えて素早く前進した。声のした方向とは逆の道へ駆け足で進み、前方に同じアサルトライフルを持った2人組の男が曲がり角から現れると、捜査官は身を低くして発砲した。しかし、走りながらの発砲は不安定で狙いが上手く定まらなかったため、同じく接近してくる二人相手に12発以上の弾を使ってしまった。弾倉には残り5発しかない。

 ネズミ取りの捜査官は持っていたライフルを捨て、射殺したテロリストの1人からライフルを奪って再び走り出した。その時、目指していた曲がり角から守谷率いる5人の男が曲がり角から現れた。素早く方向転換して逆の道に向かって駆け出したが、数十メートル先からも複数の人影が迫っていた。西野はできるだけ姿勢を低くしながら壁に沿って素早く移動し、進行方向を邪魔する人影に向けて発砲した。

 撃たれた方も一度は応射を試みたが、向かい側にいる味方への被害を考慮して銃撃を止めて壁の凹みに身を隠し、捜査官の動きを伺った。

 道は切り開かれたが、そこには待ち伏せするテロリストが少なくとも8人はいた。西野にとって最悪の状況であった。それでもライフルが火を噴き続ける間、不安な気持ちはなかった。しかし、アサルトライフルが弾倉内の銃弾を全て喰い尽くした時、彼は奈落の底に突き落とされた。

 銃声が止むと守谷たちは追い詰められたネズミのように壁に張り付く西野に近づいた。

 「往生際が悪いぞ…」守谷が拳銃の銃口を捜査官に向けた。

 額に切り傷を持つ男を見て西野はライフルを放り投げて立ち上がり、壁から離れて守谷と向き合った。追い詰められても西野は周囲に目を配った。左隣は壁。右隣には窓の間に立つ柱がある。5メートル前には守谷とその部下が5人。肩越しに後方を確認するも、後ろからも8人の男が近づいてくるのが見えた。西野は完全に逃げ場を失った。

 「三須が帰って来るまで、大人しくできないのか?」と守谷。

 “ここまでか…”

 静かに目を閉じて西野は深く息を吸い込んだ。そして、ゆっくりと吸った空気を吐き出すと同時に窓ガラスの砕ける音がして、重い何かが落ちる音を耳にした。驚いて目を開けると、捜査官の目に仰向けに倒れている男の姿が飛び込んできた。

 「いっ、痛てぇ~」突然現れた男は呻きながら立ち上がり、服に付いた埃を払い始めた。男は防弾ベストを着ており、腰には拳銃と特殊警棒、予備弾倉が収められたベルトを装着している。

 「誰だ?」守谷が突如現れた男に銃口を向けた。

 すると、守谷と西野の間に落ちてきた乱入者が顔を上げて額に切り傷を持つ男を見た。「お取り組み中でした?」

 「答えろッ!」額に切り傷を持つ男が怒鳴った。

 「そう怒らないで下さいよ!」男が一度腕時計に触れてから、両手を頭の位置まで上げて3歩後ろに下がった。

 この時になって西野は自分の方へ後退してきた乱入者の姿をはっきりと確認した。男の着ている服は体形に合っておらず、防弾ベストからはみ出している袖と裾が異様に膨らんでいる。次に捜査官はバックライトで青く光る男の腕時計を確認した。明かりが消える直前の文字盤にはデジタル数字で『02.05』と表示されていた。

 「舌を噛まないように…」中島が真後ろにいる西野へ視線を送って呟いた。

 「えっ?」捜査官が聞き返そうと身を乗り出した。

 強烈な爆発音が聞こえた。そして、それと同時に西野と中島を囲むように粉塵が立ち上がり、それは煙幕の様に周囲へ広がった。守谷たちは身を守るため、反射的に両手で頭を覆って二人から顔を逸らした。安全を確認すると、テロリストたちは素早く粉塵を左手で這いながら前進して西野と中島と探した。だが、二人の姿がなかった。

 「何所に―」額に小さな切り傷を持つ男が怒鳴ろうとした時、彼の足元に黒く細長い物体が落ちた。








 2台の乗用車が小樽署を離れた。その1台には小田完治が乗車しており、4人のSPに警護される国会議員は札幌空港に向けて出発した。その時、ネズミ取りの北海道支局は大混乱に陥っていた。

 毛利の報告によって施設は完全に閉鎖され、テロリストの捜索が行われているのにも関わらず外部への通信も遮断された。作業を中断した職員がメインホールに集められ、彼らは駐車場で発見された野村と奥村の死体について話し、黒田が来るのを待っていた。

 一方、支局長の黒田は込み上げてくる怒りを抑えるので精一杯だった。自分で職員の招集を求めたが、頭部を撃ち抜かれた2人の部下を目の当たりにして悲しみと怒りが思考を鈍らせ、何を話せばいいのか分からなくなっていた。水谷と西野を内通者と疑っていただけに、別の内通者と思われる者による犯行は黒田に大きな精神的なダメージを与えた。

 “水谷なら…アイツなら何か知っているかもしれない…”

 童顔の支局長は自分のオフィスから飛び出し、彼を待っている職員たちに目も向けずに水谷が拘束されている部屋へ走った。急ぐあまり彼はカードキーで開錠する前に拘束室へ入ろうとしたため、右肩をドアに勢い良くぶつけた。すぐに黒田はドアのロックを解いて室内に入った。突然のことに拘束されている分析官は驚いて上司を見た。

 「ネットワークに接続できな―」

 水谷が口を開くなり、黒田は分析官の首を掴んで壁に叩きつけた。

 「お前の仲間が野村と奥村を殺して逃げた。」支局長の目は怒りで燃えるように輝いていたが、それと同時に微かに涙が浮かんでいた。「他の内通者は誰だ!?」

 強く首を絞められる分析官の顔は赤く染まり、苦しさから逃れるために黒田の手を掴んで少しでも隙間を作って酸素を得ようとした。しかし、黒田は絞める力を抜かず、さらに強めた。

 「言えッ!!」支局長である黒田が水谷を怒鳴りつけた。

 「し、支局長…」

 後ろから声が聞こえて黒田が振り返る。そこには彼を追ってきた女性分析官の姿があった。彼女の姿を見て我に返った支局長は水谷から手を離し、自由の身となった分析官は咳き込みながら絞められていた首を両手で抑えた。

 「どうした?」額に浮かんだ汗を拭って黒田が尋ねた。

 「み、みんなが、待ってます…」女性分析官は水谷の首を絞める黒田を見て怯え、そう言うとすぐに部屋から出て行った。

 ネズミ取りの北海道支局長は水谷に視線を戻した。分析官は咳き込んでいたが、黒田から視線を逸らすことはしなかった。

 「ぼ…僕は…」喉を擦りながら中年の男性分析官が口を開いた。「僕は…内通者じゃない…」

 「なら、内通者は誰だ?」

 「小野田です…」












  テロリストの潜伏場所と思われる場所の一つ、張碓の近くにあった小学校跡地に到着して周囲の安全確認を行うと、5階から飛び降りた西野の姿を確認した。

 そして、ネズミ取りの捜査官が3階の屋上に落下するのを見るなり、中島は単眼鏡を取り出して付近の階の様子を伺った。3階と5階で走る人影を確認したが、4階には激痛に悶える西野がいる。次に2階へ単眼鏡を移動させた時、建物の外側で非常用螺旋階段を見つけた。

 中島は単眼鏡をポケットに戻して大多和を見た。「無謀かもしれないんですけどね…」そう言うと、東京から来たSAT隊員は荒唐無稽としか思えない作戦を述べた。大多和が反対しようとしたが、中島は隣にいたSAT隊員に短機関銃を渡し、その隊員のボストンバッグからロープを取り出した。

 「なんとかなりますって…」笑顔を浮かべて言うと、中島は非常用螺旋階段に向かって走り出した。
 
 「どうなってんだよ!」

 ネズミ取りの捜査官は悪態ついたが、すぐに言われた通りに動き始めた。大多和と5人のSAT隊員は遠回りして職員専用の入り口から突入し、その際に2人組のテロリストに遭遇したが、素早く無力化して3階へ急いだ。西野がテロリストたちの注意を惹いていたので、彼らが想像していたよりも簡単に目的の階に到着できた。

 一方の中島はUSP拳銃を片手に螺旋階段を素早く駆け上がって屋上に到達していた。夜の風は冷たかったが、汗をかいていたSAT隊員にとって、それはとても心地よい冷たさだった。呼吸を整えながら彼は屋上の安全確認を行い、それが終わると西野が落ちた3階の屋上の辺りに移動して下を見た。

 「この辺かな…」

 すると、その付近で小さな光が素早く3度点滅した。荒井が出した合図を元に中島は移動し、素早くロープを転落防止柵に縛り付け、柵の向こう側へ移動した。

 「西野は敵に囲まれ、身動きが取れない状況だ。」右耳の小型無線機から大多和の声が聞こえてきた。「あまり時間がないぞ。」

 「じゃ、突入の30秒後に…」SAT隊員が腕時計のタイマーを30秒にセットした。「爆破して下さい。」

 「はっ!?」ネズミ取りの捜査官が驚きの声を上げた。しかし、中島はそれを無視して壁を蹴って降下した。

 一方、荒井たちSAT隊員はサーモグラフィーカメラで西野の位置を把握し、彼を中心にした円を描くように爆薬を天井に設置した。一抹の不安を抱きながらも、SAT隊員は中島の作戦を信じるしかなかった。それは大多和も同様であった。彼らは爆薬から離れ、周辺警戒を始めた。

 東京から来たSAT隊員は4階と5階の間にある壁に近づくまでスピードを上げて進み、壁の直前でスピードを落として壁を両足で蹴り飛ばした。そして、壁から2メートル程まで離れると次は目的の窓に向かって突撃した。











  結果的に中島の奇策は成功した。

 設置された全ての爆薬が同時に爆発し、それが綺麗に4階の床と3階の天井を丸く切り取って西野と中島は下の階に落下した。それを確認するや否や、大多和と荒井が閃光手榴弾を爆破で開けられた穴から4階へ投げた。また、他のSAT隊員は急いで落ちてきた西野と中島の腕を引いて安全な場所まで移動させ、桑野と言うSAT隊員が中島に預かっていたMP-5SD短機関銃を返した。西野は未だに何が起こったのか理解できなかったが、中島から拳銃を渡されると反射的に受け取った。

 「急ぐぞ!」大多和が右腕を大きく振って手招きした。






           <作者の都合により、しばらくお休みを頂きます!>
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Eternal Love: Greatest Hits [News]

 WNのもう一つの新作!『Eternal Love: Greatest Hits』の収録曲が公開になりましたぁ!


『Eternal Love: Greatest Hits』
1. Eternal Love ~interude~
2. キャンプ・ファイア ー This is where our love started!
3. 水色の詩 feat. Dakahee
4. H.O.K.U.R.E.N. (Dakahee Remix)
5. Nの瞳に恋してる
6. リバーサイド・ストーリー feat. Dakahee
7. 歩道橋
8. プリクラの貼られた『うす~い』は何所に?
9. ブラックメール feat. N's friends
10. 別れの時 feat. Dakahee
11. レイ〇〇と呼ばれて…
12. 次の狙いは後輩さ!
13. Eternal Love feat. Dakahee



 もう豪華すぎて泣きそうですよ!ちなみにタイトルソングは新曲で、数年ぶりにDakaheeと一緒に歌ったらしいです。素晴らしい過ぎるよぉ!!チクショー!!
 発売は来年らしいですが、予約するしかないでしょ!!

 それじゃ!




(ハヤオ関連です…)
 いや~、全く面白くない『返報』ですが、あまり評判が良くないので…強制終了するかもしれないです。ハヤオはパート4まで書いていますがぁ~、個人的にはもう恥をかく前にやめた方が良いと思います。読者の方々も失望していると思うので、そろそろ諦める時だと思いますよ。はい。

 とは言いつつ、パート3は来週金曜日に公開します。

 もう終わりてぇ~
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