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返報 14-4 [返報]

14-4






  医務室で治療を終えた新村がメインホールに入ると、黒田を囲むようにして並ぶ分析官たちが見えた。部下に囲まれている支局長は大きなスクリーンの前で声を張って話しており、若い女性捜査官は話しを聞くために分析官たちの群れに近づいた。

  「―と思うが、先程とりかかっていた作業に戻ってくれ!」話し終えると黒田は、自分のオフィスと正反対の方向へ歩き出した。

 事情を知らない職員たちは野村と奥村を殺した犯人がまだ施設内にいると思っており、できることなら早く事件を解決して不安を払拭したかった。ゆえに黒田の指示は職員の不満を増幅させた。

「何があったの?」新村が近くにいた同期の女性分析官に尋ねた。

「野村さんと奥村さんが殺されたのよ。ここの地下駐車場で…」

 女性捜査官は自分の耳を疑うと同時に眩暈を覚えた。本間のアジトで野村に助けてもらった時から彼女は、先輩捜査官に心惹かれていた。

 「犯人は?」新村が落ち着きを取り戻しながら再び尋ねた。
 
 「まだ誰が犯人かも分かってない。それより、アンタ大丈夫なの?」同僚の顔色を見て女性分析官は心配になっていた。

 「ちょっと…ゴメン…」そう言うと新村は黒田の後を追った。支局長なら何か知っていると考えての行動だった。

 一方、水谷の拘束室に入った黒田はドアを閉じ、分析官が操作しているノートパソコンの画面を覗き込んだ。そこには複数のウィンドウが表示さており、水谷は頻りにキーボードを叩いてウィンドウの文字や数字を追加または消去していた。

 「それで、何が見つかった?」と黒田。

 「小野田の他にも内通者がいたようです。」男性分析官が新しいウィンドウを表示させ、その下部にあったツールバーの再生ボタンを押した。

 そのウィンドウに重なるように倒れる野村と奥村が映し出された。駐車場奥の監視カメラ映像を拡大したものだったので画質は落ちていたが、二人を判別することができるほどの物だった。倒れている二人に歩み寄る男がいた。男の姿を見るなり、黒田はそれが小木だと分かった。

 「小木が―」

 その時、映像の中で小木が奥村の頭部に銃弾を撃ち込み、黒田は開けていた口を閉じた。怒りに体が震え、きつく閉じた唇も小刻みに震えだした。次に彼が目にしたのは腰を屈めた小木と映像の右端から現れた小さな影だった。その影が画面の端で動くと、倒れていた野村の体がビクンと痙攣を起こしたように跳ねた。

 「ズームアウトしろ!」

 指示通りに水谷が映像を元の大きさに戻し、野村を撃った男を拡大表示させた。

 「小野田…」黒田が呟いた。

 「小野田は西野さんが参加していた作戦の通信を妨害した上に、監視カメラ映像のデータを改竄していました。主に堀内というテロリストがいた拘束室の映像とこの地下駐車場の映像です。」
パソコンの画面に映る小野田の姿から目を離さず、ゆっくりとネズミ取りの北海道支局長が上体を起こした。「小野田と小木の手配を行う。お前はここで調査を続けてくれ。まだ内通者がいるかもしれない。」

 「分かりました。」

 このやり取りをマジックミラー越しに見ていた新村は言葉を失っていた。また、彼女は自分の中で湧き上がってくる“何か”を感じた。








 手稲の中継基地で証拠隠滅を終えた中田率いる12人のテロリストは、緊張が解けて行く感覚を楽しんでいた。手稲から張碓までの移動で彼らは多くの検問を目にしていたので、待ち伏せ攻撃の可能性を考えて行動し、この用心深さが彼らの心臓に大きな負担を与えた。しかし、周囲を森に囲まれた廃校舎の姿が見えると、テロリストたちの間に走っていた緊張が消え始めた。そして、その時、彼らは爆発音を耳にした。

 車が校舎の前で止まると、中田は我を忘れて校舎の中へ走り、ドアを開ける寸前にベルトに挟めていた拳銃を抜き取った。他の仲間たちもアサルトライフルを抱えて大男の後に続いた。ドアを蹴り開けて室内に入り、中田は素早く廊下の安全確認を行う。人影はない。

 「5人は俺と一緒に右に、他は左に行け!」中田が指示を出し、テロリストたちは素早く行動に出た。








 西野たちは素早く、慎重に前進した。先頭に大多和と荒井、中央に沢木と池田、西野、そして、殿に中島と桑野と言う順であった。彼らはテロリストの態勢が立ち直る前に建物から退避し、増援が来るまで森を利用して戦おうとしていた。計画通りに動いていれば、4分後に増援部隊が到着する予定だった。しかし、黒田が小野田の捜索にその部隊を投入したため、中島たちが期待する増援は正反対の場所へ向かって出発していた。

 1階を目指していた一行であったが、2階に降りると下から駆け上がってくる複数の足音を聞いた。そして、大多和が階段へ足を踏み入れようとした途端、1階と2階の間の踊り場に上がってきた男に出くわした。男の手にはアサルトライフルが握られている。

 両者ともに目が合うと、敵と認識して銃口を向け合った。だが、大多和が引き金を絞ろうとした時、背後にいた荒井が身を乗り出して先に発砲し、男の胸に3発の銃弾を叩き込んだ。

 その間に二人の後ろにいた沢木と池田が壁沿いに歩いて直進し、曲がり角に到達すると先頭の沢木が素早く角から頭を出して進行方向の安全を確認する。そして、人影の有無を確認すると、彼はしゃがんで角から身を乗り出して援護の体勢に入った。素早く沢木の背後にいた池田を先頭にして一行が窓に沿って移動を再開した。

 2階に上がろうとするテロリストと交戦する大多和と荒井は階段の手摺りに身を隠して、敵の前進を阻止している。銃弾が二人の隠れている遮蔽物とその周りに命中し、破片と粉塵が2階に続く階段に拡散した。火力はテロリスト側の方が強く、大多和と荒井は遮蔽物から銃だけ出して撃つことしかできなかった。

 殿の中島が二人の横を通り過ぎる際、手前にいた大多和の右肩を強く二度叩いた。仲間全員が通り過ぎたという合図であった。ネズミ取りの捜査官は撃つのを止め、隣にいた荒井の肩を同じく叩いて中島の後を追った。荒井は弾倉が空になるまで撃ち続け、弾が切れると急いで大多和に続いた。

 振り返ると、片膝をついて銃を構える中島の姿を確認した。東京から来たSAT隊員は荒井の援護をするために待機していたのだ。彼の後ろには逆方向を警戒する沢木がいる。荒井は再装填の前に防弾ベスト左からフラッシュバンを取り、安全ピンを外すとテロリストがいる方へ放り投げた。それは音を立てて階段を下って行き、階段を駆け上がろうとしていた男たちの足元で爆発した。

 一方、池田を先頭に前進を続ける西野たちは前方から出現した6人の武装した男たちを発見し、銃撃を避けるために素早く壁の凹みや教室の中に飛び込んだ。彼らと距離があった沢木、荒井、中島は近くの遮蔽物へ移動するため、姿勢を低くして走り、そして、前方から迫ってくる男たちが発砲するなり三人は応射を開始した。西野たちも遅れている仲間のために弾幕を張り始める。

 敵のアサルトライフルから放たれた銃弾が頭上を掠っても、前進する三人のSAT隊員は遮蔽物に達するまで怯まず、敵に狙いを定めて慎重に引き金を絞り続けた。中島たちの銃撃によって、6人中1人が死亡し、2人が腕と脚に被弾して悲鳴を上げた。テロリスト側の被害は大きかったが、中島たちは目立った外傷を受けていなかった。確かに、いくつかの大口径の銃弾が服や防弾ベストを掠めたが、どれも大事に至る程の被害ではない。

 三人のSAT隊員は素早く先行していた仲間と合流し、壁の凹みに隠れると再装填を終わらせて周囲に目を配った。

 「集合しろ!」廃教室に身を隠していた大多和が叫んだ。彼の声は右耳に差し込まれた小型無線機を通って、西野を除く通信機を共有する仲間たちの耳に届いた。

 メンバーを自分のいる場所へ終結させようと、大多和は共に行動していた池田と一緒に援護射撃を展開し、他のメンバーも敵へ発砲しながら移動した。その時、中島の背中に衝撃が訪れ、思わず転倒しまった。それに気づいた沢木が足を止め、中島の腕を掴んで立ち上がらせた。

 最初は中島が滑って転んだと思った沢木であったが、振り返ると足止めしていたテロリストが走って来るのが見えた。憎悪を顔に浮かべて迫る6人のテロリストに沢木は恐怖し、急いで中島と共に大多和たちのいる教室へ急いだ。

 状況にいち早く気付いた荒井は、中島と沢木が無事合流できるように床に伏せて後方から接近してくる敵に向けて引き金を絞り続けた。すぐに他のメンバーもそれに倣って両方向から迫るテロリストへ発砲し、弾幕の厚さから敵の動きが少し鈍くなった。

 その頃、大多和は急いで窓付近にあった古い暖房のパイプにロープを縛り付け、何度かきつく引っ張って強度を確認すると窓を開けてロープの輪を外へ放り投げた。黒いロープの輪は落下するに従って一つの黒い線となった。次にネズミ取りの捜査官は下の状況を確認し、安全が確保されると後ろで警戒態勢に入っていた池田の肩を叩いた。

 「行くぞッ!」そう言うと、大多和はロープを掴んで窓から身を乗り出し、地面へゆっくりと降下した。








 銃撃戦が展開されている2階に降りると守谷は中田と合流した。額に切り傷を持つ男と彼の部下はわざわざ西野と中島が通った穴を抜け、3階を隈なく捜索してから来たために遅れて到着した。しかし、遅れても守谷は今までの無駄な時間を短縮させるだけの道具を持ってきた。

 「皆殺しにしろッ!!」守谷が手榴弾を西野たちが隠れている教室に向けて投げた。

 手榴弾は教室の前方を警戒していた西野と桑野の付近に落ち、それを確認すると二人は急いで教室内に身を潜めて爆発に備えた。強烈な爆風と破片が周囲に拡散し、通路と教室扉の窓が砕けて廊下がガラス片で満たされた。また、老朽して脆くなっていた壁や天井も破壊され、硝煙で満たされていた通路に埃が宙を舞った。

 守谷の参戦はテロリスト側の士気を高め、アサルトライフルを持つ男たちは一斉に銃撃しながら前進した。大口径の銃弾が一挙に西野たちが隠れる教室に集中し、追い込まれた西野とその救出部隊は床に伏せ、壁を貫通して室内に無数の穴を開ける銃弾の雨を回避した。問題は銃撃だけではなかった。守谷と中田が前進する仲間の後に続き、アサルトライフルの再装填が始めると、すかさず手榴弾を教室に向けて投げた。教室まで9メートルほどの距離があった。

 一方、大多和に続いて池田、沢木がロープを伝って降下して仲間の到着を待っていた。

 「先に行って下さいッ!!」西野と共に行動する桑野が、自分の拳銃用予備弾倉をネズミ取りの捜査官に渡した。

 「ダメだ!俺より君が―」弾がぎっしり込められた弾倉を拳銃に叩き込んで西野が叫んだが、手榴弾が爆発して最後の部分が掻き消されてしまった。

 「私の仕事はあなたを救出することですッ!」再び始まった銃撃に声を消されないよう、桑野が大きな声を上げた。

 「いい雰囲気のところ、申し訳ないですけど…」中島が這って二人のところにやってきた。「ここは私と荒井さんで足止めするんで、逃げてください!」

 「しかしッ!」西野が食い下がる。

 「もう話してる暇なんてないんですよぉ~。早く窓から逃げて下さい。じゃないと、みんな死んじゃいますよぉ!」

 西野は渋々這って窓の方へ急いだ。桑野は残るつもりでMP-5SD短機関銃の再装填を行った。

 「君も行くんだ!」中島が桑野に向かって叫んだ。

 これを聞いて桑野は短機関銃の予備弾倉を東京から来たSAT隊員に渡そうと動いた。しかし、中島はそれを制した。「代わりにフラッシュバンとスモークをくれッ!」

 言われた通りに桑野は二つの異なるグレネードを中島に渡し、急いで西野の後を追った。教室に残るのは中島と荒井の二人となった。二人は接近してくるテロリストの銃撃を耳にしながら、互いに目を合わせた。そして、ほぼ同時に発煙弾[注:スモークグレネード]の安全ピンを抜いて廊下へ放り投げた。

 廊下に落下したグレネードを目撃したテロリストたちは一瞬怯んだが、煙が噴き出てくると恐怖心が薄れて行き、再び前進を始めた。だが、すぐに視界が悪くなり、両方向から接近していたテロリストたちの勢いが止まった。その隙に中島と荒井は仰向けになって両脚で床を押しながら、窓へ移動を始めた。移動しながらも二人は敵のいる方向へ向けて発砲を行った。

 「押し続けろッ!」守谷が檄を飛ばし、煙幕に怯んでいた仲間たちが銃撃を再開した。

 その頃、中島と荒井は窓まで辿り着いており、あとはロープで降下するだけであった。二人とも短機関銃の弾倉が尽き、拳銃で弾幕を張り続けた。

 「お先にどうぞ!」中島が右隣にいる荒井に言った。

 「それでは、失礼しますッ!」そう言うと、荒井は一度拳銃をホルスターに戻した。銃弾が周囲を飛び交う中で立ち上がるのは怖かったが、彼は勇気を振り絞って中腰姿勢を取ってロープを掴んだ。壁に沿うようにして素早く立ち上がると左脚に激痛が走り、あまりの痛さに荒井は床に倒れてしまった。

 「大丈夫か?」拳銃に新しい弾倉を入れて中島が叫んだ。

 「脚を…撃たれました…」

 消え入りそうな声で呟いたため、荒井の声は中島に届かず、東京からSAT隊員は心配して拳銃を発砲しながら荒井に近づいた。

 「生きてるか?」荒井の背中に自分の背を押し当てて中島が尋ねた。

 「な、なんとか…」仲間に聞こえるように荒井はできるだけ大きい声を出した。

 「こんな所から、おさらばするぞ!」中島は発砲しながら、フラッシュバンを廊下へ投げた。これで少しでも時間が稼げると思い、彼は荒井の腕を掴んで立ち上がらせた。

 その時、窓枠に大量の血が降り注ぎ、中島の右腕の激痛が広がった。右腕を見ると、シャツの上腕部が血で赤く染まっている。泣きたくなるほどの痛みであったが、彼はそれを堪えて荒井を逃がそうと左腕だけで脚を負傷したSAT隊員の体を持ち上げようとした。

 一方、守谷と中田が最後の手榴弾をSAT隊員たちが隠れている教室へ投げ、それと同時に中島が投げたフラッシュバンが爆発し、テロリストたちの視覚と聴覚が一時的に麻痺した。守谷たちのグレネードの一つが教室のドア枠に命中し、そのまま室内へ進入した。

 偶然振り返った中島は教室に進入した手榴弾を目撃し、急いで荒井を床に押し付けて彼に覆い被さった。そして、手榴弾が爆発した。








 中島と荒井を待っている西野たちは神経を研ぎ澄ませて周辺警戒を行っていた。周囲に遮蔽物がないため、円陣を組んで周囲に目を配り、少しでも音が聞こえると素早く銃を音源へ向けた。

 小野田という人物を演じている三須を捕まえたい西野は、なかなか降りてこない中島と荒井に腹を立てていた。そのため、しきりに上を見て中島たちの姿を求めた。

 「議員の命が危ないんだ。すぐにでも追わないといけない。」西野が右隣にいる大多和に言った。

 「とは言っても、仲間は置いて行けないだろ。」脅威の有無を確認するため、視線をすばやく動かしながら大多和が応えた。

 「三須が…いや、小野田が議員の命を狙っているんだ!早く止めないと―」

 「小野田が議員を?」大多和が西野を遮った。彼は同僚の気が狂ったと思って動揺したのだ。「何故、アイツが?」

 「奴は議員と俺に復讐しようとしている。理由は後で話す。今は小野田を捕まえることが最優先だ。」

 「なら、一緒に行こう。」西野の説明に納得できなかったが、大多和は彼の必死さに敗けた。「SATのみなさんには申し訳ないが、俺と西野は小田議員のところへ向かう。」

 「援護はいらないんですか?」桑野が尋ねた。

 「できれば…欲しい。」大多和が言葉を詰まらせながら言った。この状況で援護を求めることが、どれだけ非礼な行為か分かっていたからだ。

 「それでは池田と沢木をここに残し、私が行きます。」と桑野が言った。彼は一度仲間に目を配り、二人の隊員は目を合わせると頷いた。「すぐに戻る…」

 「テロリストの車両が正面玄関にある。それを使おう…」大多和が西野を見た。彼は建物に侵入する際、正面玄関に駐車されていた2台の車を目撃していた。

 「そうしよう。」

 そして、西野、大多和、桑野は立ち上がって正面玄関へ向かった。大多和を先頭に素早く前進し、廃校舎の角まで来ると立ち止まり、念のために敵影を探した。テロリスト全員が建物内にいると思っていたが、アサルトライフルを持つ8人が正面玄関で警戒態勢を取っていた。彼らは敵の増援を恐れた守谷が配置した見張りだった。また、テロリストの車両が増えていることに気付いた。

 「簡単に行きそうにないぞ…」見張りを見つけた大多和が背後で待機する西野と桑野に言った。「重武装したテロリストが少なくても8人にいる。」

 姿勢を低くして西野は大多和の陰から正面玄関の様子を窺った。6台の車が正面玄関を塞ぐように、一列に停められている。盾として使うのだろう、と西野は思った。彼らから一番近い車は19メートル先にある。

 「私が時間を稼ぎをします。」桑野がスモークグレネードを手に取った。

 「一人じゃ無理だ。」大多和はここに来たことを後悔していた。「俺と桑野で注意を惹き付ける。西野、お前一人で行け…」拳銃の予備弾倉1つを西野に渡してネズミ取りの捜査官が言った。

 建物の陰に戻った西野が申し訳なそうな目で同僚を見た。「しかし…」

 「時間がないんだろう?俺の気が変わらない内に走る準備をしろ。」大多和がスモークグレネードを防弾ベストから取った。

 「ありがとう…」西野が頭を下げた。

 すると、大多和が口元を緩めた。「準備はいいか?」彼は自分の隣に移動してきた桑野を見た。

 「いつでも。」

 「んじゃ、行くか…」グレネードの安全ピンを外し、大多和はもう一度桑野を見た。SAT隊員が頭を縦に振る。それを確認すると、大多和と桑野はスモークグレネードを正面玄関へ向けて放り投げた。

 大きな弧を描いてグレードが宙を舞い、弧の真ん中あたりで煙を吹き出して地面に落ちた。見張りの8人はスモークグレードが発した煙の放出音を耳にすると、素早く銃を持ち上げて周囲に目を配った。
彼らが西野たちの姿を探す間、黄色の煙が拡散して8人の間に恐怖と混乱が走り、彼らは数歩下がって敵の姿を探し求めた。

 テロリストが受け身になっている隙を狙って西野は、列の最後尾にある乗用車に向かって一目散に走り出した。銃を構えることもなく、両手を大きく振り、両脚を素早く動かして彼は運転席に向かっている。大多和と桑野は建物の陰に体を半分隠して仲間の動きを見守り、テロリストが西野を発見しないことを祈った。

 ネズミ取りの捜査官が運転席側のドアに手をかけた時、テロリストの1人が西野を見つけ、叫び声を上げてアサルトライフルを発砲した。銃弾が乗用車のフロントウィンドウに複数の蜘蛛の巣に似た銃痕を生み、西野は反射的にしゃがんで身を隠した。仲間が発砲を開始すると、他の7人も乗用車に向けて銃撃を加えた。

 “上手く行かないな!”大多和が急いで煙の向こう側にいるテロリストに向けて短機関銃の引き金を絞った。桑野も彼に倣って発砲する。8人のテロリストは予期せぬ攻撃に怯み、注意を西野から大多和たちへ移した。

 乗用車への銃撃が止むと西野は急いで運転席のドアを開けようとしたが、ドアはロックされていた。仕方なく彼は銃床で窓を叩き割り、錠を解除してドアを開けると鍵の有無を確認した。幸運なことに車の鍵は差し込まれた状態で、捜査官はすぐにエンジンをかけて車に乗り込んだ。

 エンジン音に驚いたテロリストたちは車に銃口を向けた。だが、大多和と桑野の銃撃が激しかったため、すぐに銃を元の方向へ戻した。

 西野はギアをリバースに入れてアクセルを踏み込み、車がエンジンを唸らせて勢い良く後退を始めた。この動きは大多和たちに向けて発砲していたテロリストの注意を引き、複数の銃弾を受けて車のフロントライトが砕けた。捜査官は急いでハンドルを切って方向転換し、ギアをドライブに変えると再びアクセルを踏み込んだ。

 土煙を巻き上げながら、猛スピードで校庭を走り去る乗用車を視界の隅で確認した大多和は、小さな喜びと大きな悲しみの両方を感じていた。








 廃校舎との距離が開き、銃声が小さくなると、西野は上着のポケットから携帯電話を出そうとした。しかし、彼の電話は守谷に拘束された際に奪われていた。黒田と連絡を取って小野田の身柄を押さえたい西野は、できるだけ早く黒田に三須と守谷の計画について報告したかった。

 「クソッ!」ネズミ取りの捜査官は、公衆電話を探すしかないと思って悪態ついた。

 その時、シフトレバーの付近で明かりが生まれた。視線を移動させると、テロリストの一人が置き忘れたスマートフォンの画面が煌々と光っていた。西野はそれを手に取ると、急いで黒田のオフィスに電話をかけた。

 数回呼び出し音が鳴った後に黒田の声が聞こえてきた。「黒田です。」

 「すぐに小野田を拘束してくれ!」名乗ることなく、西野が送話口に向かって叫んだ。

 黒田は混乱したが、声の主が西野だということは分かった。「西野か?今、何所にいる?」

 「大多和たちに救出されて、国道5号線を走ってる。それより、小野田を―」

 「私も小野田と小木を追っている。」西野を遮ってネズミ取りの支局長が言った。「お前も…お前も内通者なのか?」

 黒田がまだ自分を疑っていることに、ネズミ取りの捜査官は衝撃を受けた。しかし、今はそのことについて話す時ではない。

 「俺は内通者じゃない。全ては三須―いや、小野田の罠だ。アイツは俺と議員の命を狙っている。」

 「何故?」

 「2年前の潜入捜査だ。俺は小野田と守谷と言う男が所属していたグループに潜入し、奴らのテロ攻撃を阻止した。死んだと思っていたが、名前と顔を変えて復讐の機会を窺っていたようだ。」

 西野の説明はにわかに信じがたいものであったが、黒田は敢えて口を挟まなかった。ゆえに捜査官は先を続けた。

 「小野田は議員を殺す気だ。議員の居場所が分かれば、小野田を止めることができる。」

 「なら、すぐにSPに連絡し、SATを出動させる。」黒田が上着のポケットから携帯電話を取り出した。

 「それじゃ間に合わない!俺が向かう。議員は何所にいる?」

 捜査官の問いに黒田は答えるべきか悩んだ。“西野が内通者ではないと確定した訳じゃない…しかし…”

 「議員は札幌空港に向かっている。」悩んだ挙句に支局長は議員の行き先を教えた。

 すると、支局へ向かっていた西野は急いでUターンした。








 フラッシュバンで麻痺していた感覚が戻り、さらにスモークグレードの煙が廊下から消えると、守谷たちは中島と荒井のいる教室に向かって歩き出した。慎重に銃を構えながら歩を進めるテロリストたちが教室のドア横に辿り着くと、外で立ち上る黄色い煙を目にした。煙の出現から少し遅れて彼らは銃声を聞いた。

 “敵の増援か?”素早く窓横にあった柱の陰まで移動して、守谷が外の様子を窺った。スモークグレードが生んだ煙でほとんど何も見えず、彼は乗用車で三須を追った西野の姿を見ることもなかった。

 「中田と3人は俺について来い!」額に切り傷を持つ男が叫び、命令を受けた4人が守谷の後を追って1階へ走った。

 残されたテロリスト12人の内、6人がゆっくりと敵が隠れている教室の中に入った。彼らが銃弾で滅茶苦茶に破壊された教室内で見たのは、暖房機の付近で倒れる二人の男だった。一人がもう一人の上に覆い被さるように倒れている。ガラス片や木片、埃で満たされた床には二人の物と思われる血が流れていた。

 “死んでいたか…”

 教室内にいたテロリストたちがそう思っていた時、荒井は薄目を開けて突撃銃を持つ6人の男を見た。男たちは銃口を床に向けていたが、もし荒井が少しでも動けば、素早くアサルトライフルを構えて撃ってくる可能性があった。ゆえに彼は死んだフリをすることにした。

 「荒井、早く降りて来いッ!!」右耳に差し込んでいた通信機から外で待機している沢木の大声が聞こえてきた。予期せぬ声に荒井は驚いて体をビクンと反応させてしまった。

 教室を後にしようとしていたテロリストの一人が、ピクリとも動かない中島の下で倒れているSAT隊員の動きを見た。

 「おいッ!」荒井の動きを目撃したテロリストが仲間を呼んだ。「コイツ、まだ―」

 金属片が床に落ちて甲高い音が室内に響いた。音を耳にしたテロリストたちが素早く振り返って音源を探す。そして、彼らは足元に転がって来る小さな黒い物体を見つけた。テロリストの一人が突如現れたフラッシュバンを蹴り飛ばそうとした時、眩い閃光と爆音が室内を満たした。

 死を覚悟していた荒井は目を閉じていたので視覚を奪われることはなかったが、爆音のせいで聴覚が麻痺した。6人のテロリストは両目を閉じて呻き声や怒鳴り声を上げ、教室の外で待機していた残りの6人が様子を見にやって来た。

 気が付くと荒井が背中に感じていた重さが消え、突然体を持ち上げられた。呻き声を上げながら、中島は若いSAT隊員に左肩を貸して血で赤く染まった右手でロープを掴んだ。右腕を少し上げるだけでも激痛が走ったが、彼は荒井と共に逃げるために歯を食いしばって痛みに耐えた。片脚を撃たれた荒井と一緒に行動するのは楽ではなく、二人の動きは遅くて窓枠を乗り越えるのに酷く手を焼いた。

 窓枠を上がるのに苦戦する二人を目撃した6人のテロリストは、フラッシュバンで二つの感覚を失って混乱に陥っている仲間を横目に突撃銃を構えて狙いを定めた。すると、教室前方ドアから進入した三人の一人が仰向けに倒れた。
 
 男の顔には大きな銃痕があり、そこから血が流れ出ている。銃弾は顔よりも後頭部に大きなダメージを残し、男が倒れると同時に大量の血が床に広がった。他の5人は中島と荒井から死亡した仲間へ視線を向けた。続いて死んだ男の隣にいた男が同じように倒れた。今回は首に銃弾を受けていた。間を置かずに三人目、四人目が頭を撃ち抜かれた。

 一方、中島は左腕だけで荒井を持ち上げて窓枠を乗り越えた。荒井が先にロープを握り、被弾していない右脚でバランスを取って降下を始めた。素早く中島も荒井の後に続いたが、彼の場合は右腕を撃たれていたので、両脚を器用に使って降りるしかなかった。それでも二人はテロリストの射角から外れ、距離も少しずつ離した。

 テロリストの中に混乱が生まれた。仲間の死に気を取られている間に、追い込んでいたはずのSAT隊員二人が窓から姿を消した。そして、追跡しようにも窓の外に広がる森林から飛んでくる銃弾が彼らの動きを止めた。姿の見えない狙撃手の狙いは鋭く、ほぼ急所に銃弾を撃ち込んできた。12人いたテロリストは4人にまで減らされた。

 「良い感じじゃない?」単眼鏡越しにテロリストの動きを見ていた藤木が言った。

 「それじゃ、そろそろ議員の所へ行きませんか?」10倍のスコープを通して敵の姿を探す小川が口を開いた。

 「そうだね…」

 小柄の女性捜査官がスコープから顔を離し、狙いを安定させるために寄り掛かっていた木から身を引いて立ち上がった。

 「そのライフル…G-28だっけ?」藤木が小川の持つセミオートマチックの狙撃銃を指差す。「それの使用報告書を書いて欲しい。本部が気に入れば、採用になるかもしれないし…」

 「はーい。」面倒くさそうに小川が言った。








 自分は普通の人よりも優れている。小木はそう思っていた。そして、彼を正当に評価しない世の中に失望していた。

 警察から引き抜かれた小木は他の捜査官よりも積極的に行動し、23件のテロ計画を阻止してきた。刑事時代の知識と経験を活かして多くの情報提供者を獲得し、彼らから様々な情報を入手して小木は組織に貢献してきた。事実、北海道支局が有する情報提供者の12%は小木の管理下にある。それでも彼に対する黒田の評価は低かった。

 職場に対する鬱憤が募る中、テロリストの追跡中に小木は被弾して入院した。大多和の処置が素早く、そして、的確であったために命に別状はなかったが、この事件で小木のネズミ取りに対する忠誠心に亀裂が走った。

 事件発生前から容疑者の武器携帯が確認されていたのにも関わらず、黒田は拳銃携帯を頑なに拒否し、穏便に拘束するように捜査官たちに求めた。その結果、テロリストと交戦して小木は腹部を被弾した。入院しても黒田が見舞いに来ることはなかった。他の職員も彼の様子を確かめようとしなかった。しかし、例外が一人だけいた。

 小木が退屈そうにベッドに寝転がってテレビを見ていると、果物の手土産を持った小野田良平が病室にやってきた。

 「元気ですか?」小野田が人懐っこい笑顔を浮かべた。

 予期せぬ来客であったが、小木は嬉しかった。両親や友人の多くが他県に住んでいるため、話す相手は看護師または医師だけあり、個室のベッドに寝ていることが多かったので他の患者との交流は皆無だった。小野田とはあまり話した事がなかったが、腹部に銃傷を持つ捜査官は気にせず職場のことを日が暮れるまで尋ねた。

 小野田の偽名を使う三須は何度もお土産を持って小木を訪れ、互いに職場の愚痴を言い合った。この時、小木は小野田も自分と同じように、職場に不信感を持っていることを知って嬉しかった。二人は2週間と言う短い間で友情を深めた。三須は小木と彼の情報提供者を利用するつもりであったが、小木の方は完全に三須を友人の1人だと信じていた。

 「一緒に今の組織を変えよう…」退院の1週間前に三須は計画を打ち明けた。詳細については伏せたが、彼は小木にテロ攻撃の計画とそれが対テロ機関の体質を変える唯一の方法であることを説いた。

 ネズミ取りへの忠誠心を捨てていた小木は、三須の計画に賛同して協力することを誓った。その一環として、自分の情報提供者を利用して武田衛の行動をネズミ取りに流した。全ては三須が手配したテロリストの動きを秘匿するための行動であり、黒田が指揮する対テロ機関は疑いを持つことなく武田衛に全労力を注いだ。武田を餌にする案は守谷のものであった。武田であれば、上手くネズミ取りの注意を引くことができると彼は確信していたのだ。しかし、かつての仲間であった武田との直接的なやり取りは求めなかった。全ては秘匿性を保つためだった。

 「どうやら、議員は家族と別行動を取り始めたようだ…」助手席でノートパソコンを操作する三須が言った。

 「狙いは議員のままなのか?それとも両方か?」小木が横目で助手席に座る男を見た。

 「まずは議員だ。それから家族にしよう。」

 「道はこれで合ってるのか?」

 「大丈夫だ。あと10分も走っていれば、議員の車列が見えるさ…」








 地に足が着いた瞬間、中島の体に走っていた緊張が解けた。彼は左手で右腰のホルスターに収められていたUSP拳銃を抜き、荒井の横に並んだ。彼よりも先に降下していた荒井は壁に寄り掛かって周囲の安全確認を行っていた。

 「どうやら、先に行っちゃったみたいですね…」視線を鋭く周囲に配りながら荒井が言った。

 「別の方向から銃声が聞こえるから、そっちの応援に行ったんじゃない?」中島は一度片膝をつき、拳銃を左膝裏に挟めると弾倉を抜いて残弾を確認した。薬室の銃弾も合わせて、残り5発。残弾少ない弾倉を元に戻して予備弾倉のホルスターを確認したが、そこは空であった。

 「応援に行きましょう。」荒井が片手をついて壁から離れた。

 「止血を先にしよう。このままじゃ、死んじゃうよ。」降下の際に利用したロープの一部を中島が小さいナイフで切断した。

 荒井の怪我を考慮した中島は5メートルほど離れた林ではなく、危険を承知でもう一度廃校舎の中に戻った。苦戦しながらも二人は近くにあった窓から建物に進入し、埃とゴミで一杯になっている部屋に入った。ドアは閉まっており、またテロリストが出したと思われるゴミの山があったため、身を隠すにはちょうどいい場所であった。

 傷の様子を確認した二人は、切り取ったロープを使って出血部位の少し上をきつく縛った。これで出血の勢いを防いだが、できるだけ早く適切な処置を施す必要があった。

 「ところで、荒井さんの残弾は?」中島が思い出したように尋ねた。

 「薬室合わせて7発です。予備はもう無いです。中島さんは?」

 「あと5発だよ。」そう言うと、東京から来たSAT隊員は拳銃から弾倉を抜き、薬室の銃弾も取り出してそれを弾倉に入れると荒井に渡した。「何の足しにもならないと思うけど、持っててよ。」

 「でも…」

 「んじゃ、オイラはそろそろ行くよ。」中島が立ち上がった。しかし、窓の外を走る複数の影を見て、彼はすぐ姿勢を低くした。

 「俺も行きます!」5発の銃弾が込められた弾倉を、防弾ベストのポケットに入れて荒井が言った。「応援が来るまで戦います。」若いSAT隊員は被弾した左脚を庇いながら立ち上がった。

 「弾も少ないし、その怪我じゃ邪魔になるかもしれないよ。」

 「仲間は見捨てることはできません!」

 中島は困った顔をして考えた。荒井は変わらず真剣な眼差しを東京から来たSAT隊員に向けている。

 「弾の数には気を付けてよ。」中島が荒井に肩を貸した。

 「ありがとうございます!」

 二人は外にいるテロリストを警戒して、敢えて廊下に出ることを選んだ。また、これは正面玄関にいるであろう敵を撹乱するための行動でもあった。中島がドアノブを回し、静かに扉を内側に引いて廊下の様子を窺う。暗い通路に人影はない。ドアを開けて東京から来たSAT隊員は、壁に寄り掛かっていた荒井に肩を貸してと共に廊下に出た。そして、二人は固まった。

 守谷と中田は2メートル先に現れた二人のSAT隊員を見て虚を突かれた。この二人は職員専用口から逃げようと急いでいた。

 素早く荒井が銃を二人のテロリストに向け、中島が部屋へ戻ろうと動く。それを見ても、中田は躊躇せずに突進してきた。猛スピードで接近してくる大男を見て中島は、荒井を室内へ戻そうと左手で突き飛ばし、中田と向き合った。

 一方の荒井はバランスを取ってドア枠にしがみつき、すぐに体勢を立ち直して廊下にいるテロリストへ視線を戻す。その時、ちょうど中田が彼の目の前を通り過ぎ、中島に強烈なタックルを浴びせようとしていた。ゆえに荒井はもう一人のテロリストの姿を探した。彼が守谷を見つけた時、テロリストの拳銃が自分の方へ向けられていた。荒井はすぐに壁から離れ、守谷に向けて発砲した。

 タックルを受ける直前に中島は右斜め前に移動し、左肘を中田の顔面に向けて放った。しかし、大男は見た目から想像できない速さで攻撃を回避して、左へ体を回転させて右フックをSAT隊員の横腹に叩き込んだ。すかさずテロリストは立ち上がりながら、右アッパーを中島の顎に向けて繰り出す。東京からSAT隊員は上体を後ろへ下げて攻撃を避けると同時に、左蹴りを中田の股間に入れた。股間への攻撃に中田は悶絶し、彼の勢いが弱まった。好機を逃すまいと、中島は左拳を水平に振って大男の顎横に叩き込み、その勢いを利用してテロリストの右肩を掴んで引き寄せると、左膝で中田の腹部を蹴り上げた。

 一方的に攻撃される中田は苛立ち、SAT隊員が左肘打ちを放とうとするなり、中島の防弾ベストを掴んで左へ放り投げた。

 至近距離であるにも関わらず、荒井は守谷を仕留めることができなかった。左脚の怪我が集中力を削ぎ、焦りが狙いを不安定にさせていた。残弾が2となった時、守谷の銃に異変が起こった。空薬莢が排出口に挟まり、動作不良を起こした。額に切り傷を持つ男は故障した拳銃を荒井に投げつけ、SAT隊員が体勢を立て直す前に距離を縮めて荒井の拳銃を掴んだ。

 若いSAT隊員は守谷を突き飛ばそうとしたが、片脚だけでは上手く力を入れることができず、顔面に守谷の掌底を受けると同時に拳銃を奪われた。この時、荒井はバランスを崩して尻餅をついた。素早く顔を上げると、目の前に銃口があった。

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年末はどうなる? [その他]

 いや~、今年もWNの年越しライブがあると思っていたんですが、無いようですねぇ~。

 これを聞いた時は、「遂にWNも紅白に呼ばれたのか?」と思って興奮したもんですが、どうやら二人とも休養が必要になったようですね。いつも全力で音楽活動に励んでいるので、仕方ないことでしょう…

 ファンとして、彼らには健康でいて欲しいです。最近ではNが激太りしたとの情報もあり、女性ホルモンの投与を始めたのか、それとも暴飲暴食の癖がついたのか…

 まぁ、個人の自由ですが、素晴らしい音楽の活動を続けて欲しいので、健康でいて欲しいですね。皆さんもそう思うでしょ?

 
 あと、関係のないハヤオ関連ですが…

 彼の体調が優れないので、今月はパート4の公開だけになりそうです。一応、11月24日(金)に14-4の公開を予定してます。

 アクセス数が少なければ打ち切りにできるので、WNのみなさんは来月までアクセスは控えてくださいよ!じゃないと、ハヤオのファン扱いされますよ!!

 それじゃ!
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ぶっとんだ展開:『返報』14-3を振り返る [余談]

 ハヤオの体調不良によって、『返報』は来月末くらいまで延期される予定です。はい。

 今日は第14回パート3における「ぶっとんだ展開」を振り返ります。まぁ、最初から変な物語なんですが、パート3は中でもぶっとんでると思いますね。

 西野の救出に来た中島たちの作戦ですが、「理論的」には可能です。でも、条件付きですが…

 廃校舎という老朽化した建物の床と壁、爆薬の種類と量、起爆のタイミング、標的の位置などなどの条件が、揃っていなければできなかったでしょう。中島があの短時間でこれらの条件が揃っていることを知っていたかどうか、読者の想像に任せます。設定上、化け物みたいなキャラなので、もしかしたら、するかもね…

 まぁ、中2病をこじらせているハヤオが書きたかった場面の1つらしいので、ご都合主義の展開ですが、ここまで読んでる人々ならば許せる範囲だと思います(パート4から読者の数が減ることを祈ってますよ、皆さん!)。

 次回のパート4には、いつものドンパチ系バトルもどきシーンが多数あります。ゆえに、あまり話しは進みません。ハヤオのやる気次第で、「黒幕は他にいた!続きは劇場版でッ!」的な終わり方もあるかも…

 長くなりましたが、第14回パート4と5は来月末となる予定なので、それまでに『返報』のことを忘れ、共にWNを応援しましょう!

 それじゃ!
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返報 14-3 [返報]

14-3







 「小野田が三須?」西野は唖然とした。「ありえない。そんなこと…」

 「アイツも苦労したらしいぞ…」守谷が椅子から立ち上がった。「特にお前が拘束された時だ。本来であれば、小田の事務所を襲撃した時にお前も議員も死ぬ予定だった。しかし、お前は小田を救った…小野田は取り乱していたが、すぐにお前と他の連中を唆してホテルに向かわせた。まぁ、これも失敗したが、まだ終わった訳じゃない。」

 ネズミ取りの捜査官は未だに守谷の話しが信じられなかった。“嘘だ。コイツは嘘を言っている。俺も混乱させるつもりなんだ…”

 「アイツも小田を始末したら、ここに来る。お前を始末するためにな…」

 守谷が一瞬、西野に背中を見せた。捜査官は両手を動かして逃げようとしたが、縄はビクともしない。しかし、彼の座らされている木製の椅子は古く、西野が動く度に軋む音がした。

 「それまで、思い出話しに浸ろうじゃないか…」額に切り傷を持つ男が、机に置いていたナイフを持ち上げた。

 振り返ると、守谷は椅子に両手を固定されたまま突進してくる西野を見えた。彼は素早く西野の胸に向けてナイフを突き出した。だが、ネズミ取りの捜査官は刃物が突き出される瞬間に体を捻り、椅子を守谷の右横腹に叩きつけた。

 虚を突かれた守谷は呻き、そして、彼の額に青い筋が浮かんだ。テロリストはナイフを水平に振って切りかかったが、刃が捜査官に届く前に西野は再び椅子を守谷に叩きつけた。2度目の衝撃で椅子が壊れて解放されたが、手首にはまだ縄と肘置きが付いている。

 椅子による攻撃で激痛に悶える守谷は素早く動くことができずにいた。その間に西野は机にあった自分の拳銃に手を伸ばしたが、テロリストはそれを阻止するために捜査官の左脛を蹴り飛ばした。痛みで伸ばしていた手は意図していた拳銃ではなく、守谷が使用している携帯電話を取ってしまった。

 西野が再び拳銃を取るために動くと、額に切り傷を持つ男がベルトに挟めていた拳銃を取り出してネズミ取りの捜査官に向けた。引き金にかけられた指が動く寸前、西野は反射的に窓を突き破って外に飛び出した。








 新たに指揮を執ることになったSPの『大窪』が大まかな予定と移動ルートを小田完治に説明し、遅くとも15分後には出発する旨を伝えた。議員とその家族は丘珠空港こと札幌空港に送り届けられ、その後、チャーター機に乗って東京に行く計画になっていた。

 「二人で話せないか?」説明を聞き終えた小田完治が大窪に言った。

 「はい…」少し戸惑った様子を見せたが、SPの大窪はドアの近くにいた仲間に視線を送った。すると、視線を受けた女性SPが応接室のドアを開けた。

 「お前たちは外で待っててくれ。」小田が隣に座る家族の方を向いた。

 「どうして?」小田の妻が尋ねた。「別に構わないでしょ?」

 「すぐに終わる。それにどうしても二人で話したい事があるんだ。頼むよ。」

 納得は行かなかったが、小田の家族は重い腰を上げ、何度も彼の方を振り返りながら部屋を後にした。

 女性SPがドアを閉め、応接室は小田と大窪だけになった。SPは背筋を伸ばしたまま、警護対象者が話し始めるのを待ち、小田はブラインド越しに見える家族の姿をソファーから目で追っていた。その眼差しは悲しそうであった。

 「議員…」大窪が口を開くと、小田完治がSPの方へ視線を戻した。

 「すまないな…ちょっと頼みごとがあるんだ。」

 「何でしょう?」

 「私と家族を別々に送ってもらいたい。」

 大窪は虚を突かれ、目を見開いた。「しかし、そうなれば―」

 「襲撃者の狙いは私だ。私の家族ではない。一緒に行動すれば、家族が犠牲になる…それはできるだけ避けたい。空港に行くまでだ。その後は共に東京に戻る。」

 「お気持ちはわかりますが、ご家族とご一緒に行動された方が護衛を強化することができます。もし、別々に行動すれば、護衛も二手に分けることになって守りが弱くなります。」大窪は小田の案に反対であった。「それにご家族も反対を―」

 「家族には私から説得する。」小田はこれ以上話す事は無いと言うように、ソファーから立ち上がった。「時間もないだろうから、早く家族に説明したい。席を外してもらえるかな?」

 SPは渋々立ち上がって応接室を後にした。








 仕事を終えた毛利直弘は重く圧し掛かる疲労感に気怠さを抱きながら、車の鍵をスラックスのポケットから取り出した。警備員である彼は今まで巡回と監視カメラ映像の確認という退屈な毎日を過ごしていたが、今日は職員の拘束やテロリストの逃亡などで異様なほど忙しかった。

 藍色の乗用車に乗り込むと毛利は鞄を後部座席に放り投げ、スマートフォンを車のステレオに繋げてお気に入りのアーティストの曲を流した。曲のイントロが聞こえてくると車を発進させ、歌が始まると毛利は小さな声で歌詞を口ずさんだ。ハンドルを右に切って出口を目指し、いつものように彼の私用車がある駐車場へ向かおうとしていた。

 歌詞を口ずさんでいた警備員であったが、右折を終えようとした時に思わず急ブレーキを踏んで額をハンドルにぶつけそうになった。彼は素早くサイドブレーキを引いて車から降り、血の海に横たわる2つの遺体に駆け寄って脈を確認した。

 “し、死んでる…”

 毛利は野村と奥村の死体から後ずさり、車に置いていたスマートフォンを取って緊急連絡先に電話した。








 西野と守谷のいる建物は5階建で、二人は5階にいた。ゆえに窓ガラスに体当たりして外に飛び出すなり、ネズミ取りの捜査官は死を予期した。

 重力に引かれて落下する捜査官は目を閉じて衝撃を待った。しかし、待てども衝撃は訪れない。閉じた目を開けようにも、瞼は思い通りに動かず、ゆっくりとしか開かない。睡魔に襲われているかの如く重い瞼が半分まで上がると地面が見えた。だが、そこに至るまでが永遠のように感じられた。全てがスローモーションなのだ。

 反射的に西野は両腕で頭を庇おうとするも、腕はゆっくりにしか動かない。地面が数メートルに迫っていたが、両腕は顔から15cmほど離れた場所にある。

 1m。

 やっと、両腕が頭まで届き、ネズミ取りの捜査官は衝撃に身構えた。その次に来るのが死だと思っていても、彼の生存本能はまだ生き続けることを求めていた。

 凄まじい衝撃と共に西野はコンクリートに叩きつけられた。想像を絶する激痛が全身に走り、捜査官は呻き声を上げた。痛みに悶える西野であったが、それと同時にまだ生きていることに驚きと喜びを感じていた。

 捜査官は地面に落ちたと思っていたが、実際は3階の屋上に落ちていた。この建物は廃校になった小学校であり、3階と4階の部屋数が違ったために3階から下が少し突き出ていて階段の様になっているのだ。それが西野の命を救うことになったが、その代償に形容し難い激痛に苦しめられることになった。両腕と脚が痺れ、痛みから逃れようと仰向けに寝転がってネズミ取りの捜査官は呼吸を整えた。この際に落下の直前に掴んでいた守谷の携帯電話を落とした。

 “逃げろ!”

 捜査官の本能が叫んだが、身体が言う事を聞かなかった。痛みに耐えながらゆっくり上体を起こすと、銃声が真上から聞こえ、その直後に脚の間のコンクリートが弾け、その破片が西野の体に降りかかった。視線を上げようとした時、再び銃声がして右足近くに着弾した。

 瞬間的に大量のアドレナリンが分泌され、全身を走っていた激痛が和らぐのを西野は感じた。そして、三度目の銃声が聞こえる前に彼は目の前にあった窓に向かって走り出した。両腕で頭部を守りながら、西野は右肩から窓に体当たりして転がり込むように室内へ逃げ込んだ。

 しかし、休む間もなく彼は再び脅威に直面した。西野は銃声を聞いて5階へ急いでいた男と鉢合わせし、男は急いでアサルトライフルを構えようと動いた。素早く捜査官は左へ移動してライフルの射角から外れると、被筒(注:ハンドガード)と銃床を掴んで股間に向けて右蹴りを繰り出した。股の間に繰り出された右膝は綺麗に命中し、相手のライフルを持つ手の力が弱まった。その隙に西野は銃床を軸に被筒を持ち上げ、男の鼻頭に叩きつけた。念のために三打目を入れようとしたが、背後から声が聞こえてきたので、すぐにライフルを取り上げて遊底を一度引き、躊躇うこと無く相手の胸部と頭部に銃弾を撃ち込んだ。

 まだ両手首に縄と肘置きが固定されていたが、西野はインド製のアサルトライフルを構えて素早く前進した。声のした方向とは逆の道へ駆け足で進み、前方に同じアサルトライフルを持った2人組の男が曲がり角から現れると、捜査官は身を低くして発砲した。しかし、走りながらの発砲は不安定で狙いが上手く定まらなかったため、同じく接近してくる二人相手に12発以上の弾を使ってしまった。弾倉には残り5発しかない。

 ネズミ取りの捜査官は持っていたライフルを捨て、射殺したテロリストの1人からライフルを奪って再び走り出した。その時、目指していた曲がり角から守谷率いる5人の男が曲がり角から現れた。素早く方向転換して逆の道に向かって駆け出したが、数十メートル先からも複数の人影が迫っていた。西野はできるだけ姿勢を低くしながら壁に沿って素早く移動し、進行方向を邪魔する人影に向けて発砲した。

 撃たれた方も一度は応射を試みたが、向かい側にいる味方への被害を考慮して銃撃を止めて壁の凹みに身を隠し、捜査官の動きを伺った。

 道は切り開かれたが、そこには待ち伏せするテロリストが少なくとも8人はいた。西野にとって最悪の状況であった。それでもライフルが火を噴き続ける間、不安な気持ちはなかった。しかし、アサルトライフルが弾倉内の銃弾を全て喰い尽くした時、彼は奈落の底に突き落とされた。

 銃声が止むと守谷たちは追い詰められたネズミのように壁に張り付く西野に近づいた。

 「往生際が悪いぞ…」守谷が拳銃の銃口を捜査官に向けた。

 額に切り傷を持つ男を見て西野はライフルを放り投げて立ち上がり、壁から離れて守谷と向き合った。追い詰められても西野は周囲に目を配った。左隣は壁。右隣には窓の間に立つ柱がある。5メートル前には守谷とその部下が5人。肩越しに後方を確認するも、後ろからも8人の男が近づいてくるのが見えた。西野は完全に逃げ場を失った。

 「三須が帰って来るまで、大人しくできないのか?」と守谷。

 “ここまでか…”

 静かに目を閉じて西野は深く息を吸い込んだ。そして、ゆっくりと吸った空気を吐き出すと同時に窓ガラスの砕ける音がして、重い何かが落ちる音を耳にした。驚いて目を開けると、捜査官の目に仰向けに倒れている男の姿が飛び込んできた。

 「いっ、痛てぇ~」突然現れた男は呻きながら立ち上がり、服に付いた埃を払い始めた。男は防弾ベストを着ており、腰には拳銃と特殊警棒、予備弾倉が収められたベルトを装着している。

 「誰だ?」守谷が突如現れた男に銃口を向けた。

 すると、守谷と西野の間に落ちてきた乱入者が顔を上げて額に切り傷を持つ男を見た。「お取り組み中でした?」

 「答えろッ!」額に切り傷を持つ男が怒鳴った。

 「そう怒らないで下さいよ!」男が一度腕時計に触れてから、両手を頭の位置まで上げて3歩後ろに下がった。

 この時になって西野は自分の方へ後退してきた乱入者の姿をはっきりと確認した。男の着ている服は体形に合っておらず、防弾ベストからはみ出している袖と裾が異様に膨らんでいる。次に捜査官はバックライトで青く光る男の腕時計を確認した。明かりが消える直前の文字盤にはデジタル数字で『02.05』と表示されていた。

 「舌を噛まないように…」中島が真後ろにいる西野へ視線を送って呟いた。

 「えっ?」捜査官が聞き返そうと身を乗り出した。

 強烈な爆発音が聞こえた。そして、それと同時に西野と中島を囲むように粉塵が立ち上がり、それは煙幕の様に周囲へ広がった。守谷たちは身を守るため、反射的に両手で頭を覆って二人から顔を逸らした。安全を確認すると、テロリストたちは素早く粉塵を左手で這いながら前進して西野と中島と探した。だが、二人の姿がなかった。

 「何所に―」額に小さな切り傷を持つ男が怒鳴ろうとした時、彼の足元に黒く細長い物体が落ちた。








 2台の乗用車が小樽署を離れた。その1台には小田完治が乗車しており、4人のSPに警護される国会議員は札幌空港に向けて出発した。その時、ネズミ取りの北海道支局は大混乱に陥っていた。

 毛利の報告によって施設は完全に閉鎖され、テロリストの捜索が行われているのにも関わらず外部への通信も遮断された。作業を中断した職員がメインホールに集められ、彼らは駐車場で発見された野村と奥村の死体について話し、黒田が来るのを待っていた。

 一方、支局長の黒田は込み上げてくる怒りを抑えるので精一杯だった。自分で職員の招集を求めたが、頭部を撃ち抜かれた2人の部下を目の当たりにして悲しみと怒りが思考を鈍らせ、何を話せばいいのか分からなくなっていた。水谷と西野を内通者と疑っていただけに、別の内通者と思われる者による犯行は黒田に大きな精神的なダメージを与えた。

 “水谷なら…アイツなら何か知っているかもしれない…”

 童顔の支局長は自分のオフィスから飛び出し、彼を待っている職員たちに目も向けずに水谷が拘束されている部屋へ走った。急ぐあまり彼はカードキーで開錠する前に拘束室へ入ろうとしたため、右肩をドアに勢い良くぶつけた。すぐに黒田はドアのロックを解いて室内に入った。突然のことに拘束されている分析官は驚いて上司を見た。

 「ネットワークに接続できな―」

 水谷が口を開くなり、黒田は分析官の首を掴んで壁に叩きつけた。

 「お前の仲間が野村と奥村を殺して逃げた。」支局長の目は怒りで燃えるように輝いていたが、それと同時に微かに涙が浮かんでいた。「他の内通者は誰だ!?」

 強く首を絞められる分析官の顔は赤く染まり、苦しさから逃れるために黒田の手を掴んで少しでも隙間を作って酸素を得ようとした。しかし、黒田は絞める力を抜かず、さらに強めた。

 「言えッ!!」支局長である黒田が水谷を怒鳴りつけた。

 「し、支局長…」

 後ろから声が聞こえて黒田が振り返る。そこには彼を追ってきた女性分析官の姿があった。彼女の姿を見て我に返った支局長は水谷から手を離し、自由の身となった分析官は咳き込みながら絞められていた首を両手で抑えた。

 「どうした?」額に浮かんだ汗を拭って黒田が尋ねた。

 「み、みんなが、待ってます…」女性分析官は水谷の首を絞める黒田を見て怯え、そう言うとすぐに部屋から出て行った。

 ネズミ取りの北海道支局長は水谷に視線を戻した。分析官は咳き込んでいたが、黒田から視線を逸らすことはしなかった。

 「ぼ…僕は…」喉を擦りながら中年の男性分析官が口を開いた。「僕は…内通者じゃない…」

 「なら、内通者は誰だ?」

 「小野田です…」












  テロリストの潜伏場所と思われる場所の一つ、張碓の近くにあった小学校跡地に到着して周囲の安全確認を行うと、5階から飛び降りた西野の姿を確認した。

 そして、ネズミ取りの捜査官が3階の屋上に落下するのを見るなり、中島は単眼鏡を取り出して付近の階の様子を伺った。3階と5階で走る人影を確認したが、4階には激痛に悶える西野がいる。次に2階へ単眼鏡を移動させた時、建物の外側で非常用螺旋階段を見つけた。

 中島は単眼鏡をポケットに戻して大多和を見た。「無謀かもしれないんですけどね…」そう言うと、東京から来たSAT隊員は荒唐無稽としか思えない作戦を述べた。大多和が反対しようとしたが、中島は隣にいたSAT隊員に短機関銃を渡し、その隊員のボストンバッグからロープを取り出した。

 「なんとかなりますって…」笑顔を浮かべて言うと、中島は非常用螺旋階段に向かって走り出した。
 
 「どうなってんだよ!」

 ネズミ取りの捜査官は悪態ついたが、すぐに言われた通りに動き始めた。大多和と5人のSAT隊員は遠回りして職員専用の入り口から突入し、その際に2人組のテロリストに遭遇したが、素早く無力化して3階へ急いだ。西野がテロリストたちの注意を惹いていたので、彼らが想像していたよりも簡単に目的の階に到着できた。

 一方の中島はUSP拳銃を片手に螺旋階段を素早く駆け上がって屋上に到達していた。夜の風は冷たかったが、汗をかいていたSAT隊員にとって、それはとても心地よい冷たさだった。呼吸を整えながら彼は屋上の安全確認を行い、それが終わると西野が落ちた3階の屋上の辺りに移動して下を見た。

 「この辺かな…」

 すると、その付近で小さな光が素早く3度点滅した。荒井が出した合図を元に中島は移動し、素早くロープを転落防止柵に縛り付け、柵の向こう側へ移動した。

 「西野は敵に囲まれ、身動きが取れない状況だ。」右耳の小型無線機から大多和の声が聞こえてきた。「あまり時間がないぞ。」

 「じゃ、突入の30秒後に…」SAT隊員が腕時計のタイマーを30秒にセットした。「爆破して下さい。」

 「はっ!?」ネズミ取りの捜査官が驚きの声を上げた。しかし、中島はそれを無視して壁を蹴って降下した。

 一方、荒井たちSAT隊員はサーモグラフィーカメラで西野の位置を把握し、彼を中心にした円を描くように爆薬を天井に設置した。一抹の不安を抱きながらも、SAT隊員は中島の作戦を信じるしかなかった。それは大多和も同様であった。彼らは爆薬から離れ、周辺警戒を始めた。

 東京から来たSAT隊員は4階と5階の間にある壁に近づくまでスピードを上げて進み、壁の直前でスピードを落として壁を両足で蹴り飛ばした。そして、壁から2メートル程まで離れると次は目的の窓に向かって突撃した。











  結果的に中島の奇策は成功した。

 設置された全ての爆薬が同時に爆発し、それが綺麗に4階の床と3階の天井を丸く切り取って西野と中島は下の階に落下した。それを確認するや否や、大多和と荒井が閃光手榴弾を爆破で開けられた穴から4階へ投げた。また、他のSAT隊員は急いで落ちてきた西野と中島の腕を引いて安全な場所まで移動させ、桑野と言うSAT隊員が中島に預かっていたMP-5SD短機関銃を返した。西野は未だに何が起こったのか理解できなかったが、中島から拳銃を渡されると反射的に受け取った。

 「急ぐぞ!」大多和が右腕を大きく振って手招きした。






           <作者の都合により、しばらくお休みを頂きます!>
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Eternal Love: Greatest Hits [News]

 WNのもう一つの新作!『Eternal Love: Greatest Hits』の収録曲が公開になりましたぁ!


『Eternal Love: Greatest Hits』
1. Eternal Love ~interude~
2. キャンプ・ファイア ー This is where our love started!
3. 水色の詩 feat. Dakahee
4. H.O.K.U.R.E.N. (Dakahee Remix)
5. Nの瞳に恋してる
6. リバーサイド・ストーリー feat. Dakahee
7. 歩道橋
8. プリクラの貼られた『うす~い』は何所に?
9. ブラックメール feat. N's friends
10. 別れの時 feat. Dakahee
11. レイ〇〇と呼ばれて…
12. 次の狙いは後輩さ!
13. Eternal Love feat. Dakahee



 もう豪華すぎて泣きそうですよ!ちなみにタイトルソングは新曲で、数年ぶりにDakaheeと一緒に歌ったらしいです。素晴らしい過ぎるよぉ!!チクショー!!
 発売は来年らしいですが、予約するしかないでしょ!!

 それじゃ!




(ハヤオ関連です…)
 いや~、全く面白くない『返報』ですが、あまり評判が良くないので…強制終了するかもしれないです。ハヤオはパート4まで書いていますがぁ~、個人的にはもう恥をかく前にやめた方が良いと思います。読者の方々も失望していると思うので、そろそろ諦める時だと思いますよ。はい。

 とは言いつつ、パート3は来週金曜日に公開します。

 もう終わりてぇ~
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返報 14-2 [返報]

14-2







 最後のグレネードを投げると同時に、守谷の後頭部に衝撃が走って手榴弾をバンの中に落ちてしまった。慌てて手榴弾を外へ弾き出そうとしたが、何者かが守谷の背中を押し、テロリストはバランスを崩して倒れた。その時、中田が足元に落ちた深緑色の球体を見つけ、追跡者への発砲を中断して左足で手榴弾を外へ蹴り飛ばした。

 二人が振り返ると、慎重にバランスを取りながら立ち上がろうとする西野を見つけた。ネズミ取りの捜査官は後ろ手で縛られているために自由に動けなかったが、守谷を蹴り飛ばすことはできた。

 外から破裂音が聞こえてきた。最後の手榴弾による爆発であったが、バンに乗るテロリストの注意は野村たちではなく、西野に移っていた。

 「大人しくしてれば、痛め目に遭わずに済んだのになぁ~」守谷が西野に近づき、右前蹴りを繰り出した。

 ネズミ取りの捜査官は間一髪のところで蹴りを回避し、額に切り傷を持つ男にタックルしてバンのスライドドアに叩きつけた。急いで上体を起こし、西野は頭突きを守谷の鼻頭に入れようと動くも、テロリストは頭を右へ傾けて回避した。そして、回避すると同時に彼は西野の股間に左拳を叩き込んだ。股間の痛みに捜査官は身を丸めて後退し、守谷は西野の胸を蹴り飛ばしてバンの反対側に叩きつけた。

 「クソがッ!!」額に傷を持つ男は西野の頭を両手で持ってバンの壁に何度も叩きつけた。

 「死んでしまいますよ。」助手席にいた男が振り返って恐る恐る守谷に言った。

 「そうだな…」ここで守谷は我に返って気絶している西野から離れた。「席を変わってくれないか?」

 助手席にいた男がアサルトライフルを持って後部座席に移動しようとした時、守谷が男の胸倉を掴んで拳銃を男の下顎に押し付けた。

 「ちょっ―」

 額に切り傷を持つ男は表情を一切変えずに引き金を引き、バンの天井が真っ赤に染まった。守谷は死体を引っ張ると、気絶している西野の上に放り投げて助手席に座った。








 「怖い気持ちは分かる。」野村が震えている新村にやさしく言った。

 二人の乗る黒い軽自動車はテロリストの白いバンから500メートル後方の位置で停車していた。

 「俺も怖い。でも、西野さんを救わないといけない。そのために君の力が必要なんだ。」

 ハンドルを握る新村の両手は震えており、彼女の目はスピードメーターを見つめたまま動かない。

 “ダメか…”

 その時、女性捜査官が防弾ベストのポケットから短機関銃の予備弾倉を2本抜き、それを野村に渡した。

 「もうそれしかないですけど、足りますか?」

 新村の言葉を聞いて男性捜査官は口角を上げた。「十分さ。」

 深呼吸をしてから若い女性捜査官はハンドルを握り、そして、アクセルを踏み込んだ。軽自動車はエンジンを唸らせて加速し、テロリストの後を追った。

 助手席の野村はMP-5Kの再装填を終えると、携帯電話を取り出して支部に電話をかけた。呼び出し音が数回鳴った後に奥村の声が聞こえてきた。

 「野村だ。道道17号(注:読み方『どうどう』、北海道の主要地方道のこと)でテロリストの白いバンを追跡中。ドローンで白いバンとの距離を調べてくれ。」

 「ちょっと待ってください。」女性分析官がキーボードを叩いて、グランドホテル上空を旋回していた2機の偵察ドローンの1機にアクセスした。そして、そのドローンを操縦している分析官に野村の現在位置を送り、その半径4キロ圏内にいる2台の白いバンを見つけるように頼んだ。

 新村の運転する軽自動車は縫うようにして前を走る車の間を走り、テロリストの白いバンを探して加速を続けている。しかし、目的の車は見つからない。

 「見つかりました!」奥村の声が携帯電話の受話口から聞こえてきた。「野村さんの現在位置から700メートル離れた所を走っています。」

 「分かった。」

 奥村の報告通り、2台の白いバンは700メートル先を走っていた。前の車を縫うようにして進む野村と新村の車は加速を続け、約4分後に目的の車を発見して接近を試みた。距離が近づくと野村が助手席から身を乗り出し、守谷たちが乗っているバンに向けて発砲した。今回は後輪ではなく、車体に向けての銃撃であった。野村が動くと同時に新村は拳銃を抜き、銃身をサイドミラーに固定して援護射撃に出た。

 短機関銃から放たれた複数の銃弾がバンの後ろにドアに命中した。その内の2発が窓を砕き、二人の捜査官は車内にいる大男を見ることができた。突然のことに中田は驚いてアサルトライフルを持ち上げ、壊された窓から応射するために動いた。

 「ドアを開けろッー!」守谷が怒鳴りながら後部座席へ移動し、床に置いていたロケットランチャーを拾って構えた。

 激しい銃撃を受ける中、中田が後ろドアを開けて素早くアサルトライフルを発砲した。最初は狙いを定めることができなかったので、数発が軽自動車のボンネットに命中した。しかし、銃の反動で銃口が上がり、フロンドガラスの中心に縦一線の穴を開けた。一方、守谷はロケットランチャーの狙いを車の間を縫うよう走行している軽自動車の手前に定め、引き金を絞るタイミングを計っていた。

 軽自動車に乗る二人の捜査官はロケットランチャーを構える男を発見すると、心臓が縮まるような恐怖を感じた。野村が急いで助手席に戻ると同時に、新村がハンドルを左に切ってロケットランチャーの射角から逃れようとした。

 その時、額に切り傷を持つ男はゆっくりと引き金を絞った。強烈な後方噴射と共にロケットが発射され、その際に生じた大量の白煙が運転席と助手席を満たし、驚いた運転手は咄嗟に後部座席を振り返った。

 発射されたロケットは真っ直ぐ黒い軽自動車に向かって飛んで行ったが、標的が急ハンドルを切ったために命中はしなかった。それでも野村と新村の乗る車は道路に直撃したロケットの爆発と爆風を浴び、横転してガードレールに激突して止まった。その様子を見届けた守谷はロケットランチャーを床に投げ、何事も無かったかのように助手席に戻って行った。








 警察署に着いていた小田完治は応接室の中を忙しなく歩き回っていた。家族のことが心配で黙って座っていることができないのだ。

 ドアの横でそれを見ていたSPの真嶋も仲間のことが心配であったが、顔に出さないよう努めた。それでも警護対象者を見ている内に仲間を思う気持ちが強くなった。

 その時、応接室のドアが開いて小田の家族が入って来た。小田完治の姿を見るなり、緊張がほぐれたのか、彼の家族は目に涙を浮かべた。議員は素早く駆け寄り、妻と子供たちを抱き寄せた。彼らはすすり泣きながら身を寄せ合い、小田完治は小さく「無事でよかった」と呟いた。

 真嶋がほっとして胸を撫で下ろしていると、背後から肩を叩かれた。振り向くとホテルで彼と共に議員とその家族を警護した民間の警備員3人がいた。

 “柴田は?”真嶋は咄嗟に同僚の姿を探したが、見つからなかった。

 「柴田を見なかったか?」

 「いいえ。」近くにいたスーツ姿の警備員がSPに言った。

 “まだ現場にいるのか?”

 「つい先ほど連絡があったのですが…」同じ警備員が口を開いた。「すぐに応援が来るそうです。真嶋さんの無線機と携帯電話に繋がらなかったので、私の方に連絡がきました。」

 「そうか…」

 「応援が着き次第、議員とその家族の避難が始まることになっています。」

 「何所へ?」と真嶋。

 「丘珠空港(注:正式名は『札幌空港』)に行き、北海道を離れる手配が取られています。」

 「しかし、すぐに動いては…」

 「詳細は応援が来てからとなっています。それまで我々は待機だそうです。」








 杉本哲司は色褪せた黒革のアタッシュ・ケースを持ち、官邸の三階にある南会議室のドアをノックした。

 いつもと変わらない定例報告ならば心配はないのだが、現在進行形の北海道の件があるために多くの懸念があった。官房長官たちの意地の悪い発言ではなく、予算の削減や組織の縮小が議題として上がることを恐れている。

 『ネズミ取り』が創設されてから大規模テロは未然に防いできた。勿論、この機関が誕生する前から日本警察はテロ攻撃を阻止するために努力している。

 今までの調査で、2年前に菊池信弘と彼の思想に魅了された学生たちが起こしたテロ攻撃との関連性は見つかったが、まだ確証は得られていない。それでも当時の生き残りが数人いると考えられているため、東京支部にいるネズミ取りの分析官たちは彼らによる犯行の可能性が高いと見ている。北海道におけるテロ攻撃の動機は、自衛隊基地への攻撃を妨害した小田議員に対する報復と推測された。

 「どうぞ。」

 ドアの向こう側から声が聞こえてきたので、杉本がドアを開けて室内に入った。

 「進展は?」ネズミ取りの局長を見るなり官房長官の吉村吉彦が尋ねた。彼は楕円形テーブルの端の席に座っていた。官房長官の隣には首相補佐官の沼村直人が椅子に腰掛けている。

 「主犯の特定はまだできていませんが、2年前の事件との関連が見つかりました。」テーブルにアタッシュ・ケースを置き、その中から予め用意した資料を取り出して二人の前に置いた。

 官房長官と首相補佐官は資料に一瞥をくれると、一切手を付けずに再び杉本に目を向けた。

 「簡潔に頼むよ。もうすぐ記者会見なんだ。」と官房長官。

 「北海道の事件は、2年前の自衛隊基地攻撃事件に関与した人物によるテロ攻撃と思われます。そして、犯人は小田完治議員を狙っているようです。」杉本は求められたとおり、簡潔に述べた。

 「それは困るねぇ…」首相補佐官が呟いた。「あの事件は『火災』として処理されたんだ。今さら、『あれはテロでした』、と言えば有権者の支持を失いかねない。何か違う理由を考えるべきだ。」

 「確かに…」官房長官は隣に座る禿げ頭の男に同調した。

 “まだ政局に気を取られているのか…”杉本は黙って二人を見つめた。

 「できれば…小田くんの政策に反対する勢力の犯行として発表すべきだ。『右』でも『左』でも構わない。」首相補佐官は素晴らしい案を述べたと思った。

 「しかし―」杉本が意見を述べようとした。

 「声明の内容はこちらで決める。」吉村官房長官が遮った。「君は早く事件を解決しろ!」

 「分かりました。」








 目を覚ますなり、野村は飛び上がって腰のホルスターから銃を抜いて周囲を見渡した。彼は軽自動車の中ではなく、救急車内のストレッチャーの上にいた。

 「落ち着けよ。」大多和が後輩捜査官の銃を掴んで下ろさせた。

 「西野さんは?」野村が尋ねた。「白いバンは?」

 先輩捜査官は首を横に振った。「ドローンで探してる。お前はよくやったよ。」

 慰めの言葉を聞いても野村は自分が許せなかった。この時、彼は運転席にいた新村のことを思い出した。

 「新村は?彼女は無事ですか?」

 「負傷してたから、先に小木と一緒に支局の医務室に送ったよ。負傷と言っても、新村はちょっと深い切り傷と擦り傷、小木は肋骨を折っただけだ。奇跡的にお前は無傷みたいだが…」

 拳銃をホルスターに戻して野村はストレッチャーから下りようとした。その際に肩と腰に痛みが走ったが、動くのに支障がない程度であった。

 「あまり無茶するなよ。まだやる事があるんだ…」

 彼らを乗せた救急車は近くの病院に着いたが、大多和は野村を連れて病院内の駐車場へ向かった。先輩捜査官に促されて野村はグレーの乗用車に乗り、その車は数回の尾行確認を経てネズミ取りが利用している地下駐車場に入った。

 「お前にお土産があるらしい。」駐車場に車を入れるなり、大多和が言った。

 二人の乗る車が進んで行くと、ヘッドライトが駐車場の奥にいた二人の男を照らした。一人は体形に似合わないだぶだぶの服を着ており、彼の横にはうな垂れて床に座り込んでいる中年男がいる。

 大多和が車を停めるなり、野村は車を降りて中島と佐藤に近づいた。

 「大変だったみたいですね。」中島が笑みを浮かべて言った。

 「いや…私は…何も…」野村はテロリストを取り逃した事に憤りを感じていたが、表情に出さないように努めた。それに西野を救えなかった事に罪悪感を持っていた。

 「野村さん…」SAT隊員が柔らかな口調で話し始めた。「過ぎた事はどうしようもないです。あなたの仲間はテロリストに捕まりましたが、まだ生きてる。後悔は後に回して、今は彼の救出に専念しましょう。」

 “確かに…”若い捜査官は顔を上げて中島の顔を見た。

 「その手掛かりになると思って…」SAT隊員がうな垂れている佐藤の肩を軽く叩いた。「彼を持ってきましたよ。」

 「その男は?」野村の隣に並んだ大多和が尋ねた。

 「ホテル付近の建物から狙撃銃で小田議員を狙ってた男です。」

 「テロリストの仲間なんですか?」と野村。

 「そう考えるのが妥当でしょう。ホテル正面から突入して、標的をホテルの裏口まで押し出し、そこを狙う予定だと思いますね。」中島は佐藤を捕らえた後、藤木と現場にいた数人のSAT隊員から聞いた情報を元に自分の考えを述べた。「万が一、彼が単独犯であれば、議員が出入りするのが確実な正面入り口付近を見張ると思いますし…」

 「なら、色々と聞いたい事があります。」野村が佐藤に近づく。「色々と…」








 西野がテロリストに拉致されたとの報告を受けた黒田は、苛々しながらスパイウェアが常時送信してくる水谷の行動記録に目を通して怪しい動きの有無を調べていた。しかし、送られてくる情報に不審な点はない。

 “気付かれたか?”黒田は水谷がスパイウェアの存在に気付いた可能性を考えた。“そうなれば、これは時間の無駄か…。西野の捜索に集中すべきか?もし、アイツが内通者であれば、何も水谷に的を絞る必要も無い…”

 水谷は先ほどから通信記録を見ており、そこでいくつかの記録を何度も繰り返し閲覧している。また、彼は監視カメラの映像記録にもアクセスし、特定の時間帯の記録を入念に確認していた。

 “都合の悪い証拠を探しているようにも見えるが、記録を書き換えようとはしてない。”黒田は分析官の行動を見て思った。“逆にアイツは削除された物を修復しようとしているようにも見える…”

 その時、彼のオフィスにタブレットを持った奥村が入って来た。

 「水谷さんの行動を調べましたが…特に異常はありませんでした。」奥村がタブレットの画面を黒田に見せた。画面には水谷が使用した画像比較ソフトや音声解析ソフト、最近のニュースに関する閲覧履歴が表示されていた。

 「本当にこれだけか?」と黒田。

 「はい。」

 女性分析官は何故、上司がこれほどまでに水谷に拘るのかが理解できなかった。彼女は水谷の記録を調べながら、黒田の記録も調べていた。そして、そこには水谷よりも疑わしい記録が多かった。

 「もう少し遡って彼の記録を調べて欲しい。」

 「分かりました。」

 不満を顔に出しながら奥村は黒田のオフィスを後にし、自分の机に戻ると一目散にオフィスに籠っている上司の記録にアクセスした。








 携帯電話が鳴ると、大多和は野村たちから離れて電話に出た。

 「どうなってる?」電話は黒田からだった。

 「今、野村と中島という名のSAT隊員でテロリストの尋問をしています。が、テロリストの携帯電話から色々と情報が見つかっているので、もうすぐ終わると思います。」

 「そうか…」そう言うと、黒田は数秒沈黙した。大多和が代わりに口を開こうとすると、再び支局長の声が聞こえてきた。「話しは変わるが、西野は…アイツは本当に拉致されたのか?」

 大多和は黒田の質問に疑問を持った。“支局長は西野もテロリストだと思ってる?”

 「はい。救急車に乗せられる前に意識を取り戻した新村が、テロリストに連れ去られる西野について教えてくれました。野村も同じことを言ってます。私も西野が拉致されたと思います。」ネズミ取りの捜査官が淡々と述べた。

 「そうか…」

 「何かあったんですか?」

 「いや、何でもない。」

 「それでは尋問が終わり次第―」

 大多和が会話を切り上げようとした時、それを遮るように黒田が口を開いた。「尋問は君とSATに任せたい。野村には一度、こちらに戻ってきて欲しい。」

 「しかし―」

 「西野に関して確かめたいことがあるんだ。」ネズミ取りの支局長が強い口調で言った。

 「では、そのように伝えます。」捜査官の声には戸惑いが混じっていた。

 電話を切り上げると、大多和はノートパソコンと睨み合う野村と中島に近づいた。そのパソコンは佐藤が持っていたスマートフォンと接続されており、解読ツールを用いて電話内にある位置情報と暗号化されていたメールを確認していた。

 「野村、支局長がお呼びだ。」大多和が後輩捜査官の隣に並んだ。「後は俺が引き継ぐ。」

 若いネズミ取りの捜査官は驚きの表情を浮かべて大多和を見た。「今ですか?」

 「西野について聞きたい事があるそうだ。」

 「でも―」

 「支局長にも何か考えがあるんだろうさ。」首を傾げて大多和が言った。「それより、何か見つかったか?」

 「見つかりましたが…」納得の行かない呼び出しに野村は苛立ち、見つけた事を口にしたくなかった。

 「怪しい場所を2ヵ所見つけましたよ。」中島が二人の会話に割り込んだ。

 これに野村は驚き、さらに怒りを覚えた。できれば、この発見を条件に支局へ戻ることを延期させようとしていたのだ。

 「何所ですか?」大多和が中島へ顔を向けた。

 「銭函と手稲にある建物です。彼は襲撃後にこの2つの場所のどちらかに行く予定になっていたようですよ。」SAT隊員がノートパソコンの画面に表示されている2つの赤い点を指で示した。

 身体を前のめりにして大多和はパソコンの画面を見つめた。1つ目の建物は銭函に近い張碓という場所にあり、もう1つは人口が密集している手稲区の住宅地にあった。

 「どちらかの建物に西野がいるのか…」大多和が呟いた。

 「その可能性がある、の方が正確かもしれませんよ。」と中島。「報酬の受け渡し場所、または中継場所かもしれないですし。もしかしたら、拘束された時のための罠かも…」

 「なら、彼に話してもらいましょう。」野村が胸にある苛々を落ち着かせながら言った。

 三人はうな垂れている中年男に目を向けた。

 「無駄でしょう。」SAT隊員が再びパソコンに向き合った。ネズミ取りの捜査官たちは中島の態度に不信感を抱いた。

 「どうしてですか?」野村が尋ねる。

 「彼はこういう状況に慣れてる。この手のタイプは長期戦を好みます。まぁ、手荒な真似をして吐かせるのも手ですが、正確な情報を喋ってくれる保証はないです。確実なのは、今ある情報を元に行動することだと思いますよ。例え、罠であっても…」

 「一理あるが、それでも吐かせるべきだ。」大多和が食って掛かった。

 「それならネズミ取りさんの自白剤などを使うべきです。ここには無いけど…」

 中島の意見を聞いて大多和が野村と向き合った。「どうせ支局に戻るんだ。この男と一緒に戻って情報を聞き出してこい。それからSATに応援要請を出して出動準備を完了させてくれ。」

 野村は下唇を噛んで喉まで出かかっていた言葉を抑え、命令に従うことにした。若い捜査官は中島と共に佐藤の腕を掴んで立ち上がらせ、乗用車の後部座席に中年男を押し込んだ。

 「現場で待ってますよ。」運転席に乗り込んだ野村に中島が笑みを浮かべて声をかけた。

 野村は表情を変えずに「すぐに合流します」と言って駐車場を後にした。そして、彼と入れ替わるようにしてすぐ、1台の黒いバンが駐車場に入って来た。

 大多和と中島が腰のホルスターに収められた拳銃に手をかけたが、バンから下りてきた4人を見て手を離した。

 「遅くなってすみません」額に大きな絆創膏を付けたSAT隊員の荒井が言った。彼は守谷たちの襲撃で負傷したが、ホテル入り口付近の爆発で亡くなった仲間と拉致された西野のことを知ると、大多和に頼み込んで救出作戦のメンバーに組み込んでもらった。また、荒井は信頼できる同僚3人を連れてきた。

 「全然だ。装備は整えてあるな?」と大多和。

 「はい。」荒井がはっきりとした口調で返事した。

 「んじゃ、すぐにでも行けそうですね。」大多和の隣に並んで中島が言った。

 中島の姿を見るなり、4人のSAT隊員の表情が硬くなった。大多和は何が起こったのか分からず、隣のSAT隊員を見た。しかし、中島はただ笑顔を浮かべているだけだった。

 「洞爺湖ではお世話になりました!」荒井の横にいた桑野という隊員が一礼し、他の三人も彼に倣った。

 大多和は益々混乱したが、中島は相変わらず笑みを浮かべていた。








 意識を取り戻して目を開けようとした時、後頭部に激痛が走り、呻きながら西野は再び目を閉じてしまった。彼は痛む場所に触れようとしたが、両手の自由が効かない。しかし、脚は縛られていない。目をゆっくりと開けると、両手が縄で椅子の肘置きに固定されているのが見えた。

 「起きたか?」正面から守谷の声が聞こえてきた。

 西野が顔を上げようとした時、再び後頭部に激痛が走った。この時、彼は正面に座る守谷の姿を見た。蛍光灯が煌々と光る部屋は狭く、机と椅子が部屋の壁に積み上げられている。ふと目についた窓を見ると、拘束されている自分の姿が窓ガラスの反射で映っていた。外はもう暗く、窓の向こう側がどうなっているのか分からなかった。

 「焦るなよ。時間はたっぷりある。三須も議員を始末したら、こっちに来る。」

 “三須!?”

 「お前たちは死んだはずだ!」ネズミ取りの捜査官が激痛に耐えながら言った。

 「書類上な…」

 「俺はお前が死ぬのを見た。」

 それを聞いて額に小さな切り傷を持つ男が笑い出した。

 「なら、俺は幽霊か?」そう言うと、守谷は左拳を西野の左頬に叩き込んだ。衝撃の強さに捜査官の視界がぼやけた。「確かに俺はお前に撃たれ、そして、輸送機から落とされた…しかし、運が良く三須たちに救われた…」

 西野はまだ衝撃から立ち直れていなかった。ゆえに守谷が話しを続けた。

 「あの時から俺たちはお前への復讐を考えていた。しかし、三須は簡単な報復では物足りないと思い、前回よりも多くの資金と武器、人員の調達に動いた。計画はアイツが作り、俺がそれを実行した。お前を探し出すために三須は警察に入り、最終的にはお前も所属している組織に入った。俺がせっせと武器を買っている間にな…」

 “三須がネズミ取りに?”ようやく意識がはっきりしてきた西野が心の中で呟いた。

 「有り得ない。三須が簡単に入れるような―」

 「『背乗り』って奴で簡単に新しい身分が手に入ったのさ。」捜査官を遮って守谷が言った。「お前らの組織は警察よりも広いネットワークを持っていたらしく、三須はお前も同じ組織にいることを突き止めた。そして、そこで潜入捜査と小田完治の詳細を知った…」

 「俺と議員を狙ったテロでどれだけの命が失われたと思ってるんだ!」思わず西野が怒鳴った。

 「必要な犠牲だ。それに数で人の価値を決めるのは良くないぞ、小林…」守谷はワザと西野をかつての偽名で呼んだ。「人の価値はその人間の知性で測られるべきだ。」

 その理不尽な考えに西野は絶句した。

 「三須はお前を信頼していた。もしかすると、俺よりもお前に肩入れしていたかもしれない…」言葉を失っている捜査官を見た守谷は話しを続けることにした。「そんなアイツも、今じゃお前を殺したがってる。」

 「み、三須もここに、北海道にいるのか?」西野が言葉を詰まらせながら訊いた。

 すると、額に切り傷を持つ男がニヤリと笑った。「アイツはずっとお前の側にいたよ。」








 支局の駐車場に車を入れた野村は急いで後部座席にいる佐藤を降ろそうとした。彼はできるだけ早く中年男を他の捜査官に任せ、黒田との話しを終わらせたかった。

 佐藤の左腕を掴んで引っ張ろうとした時、背後から駆け寄ってくる足音を聞いて野村が振り返った。そこにはタブレットを持った奥村がいた。彼女は監視カメラで野村の到着を確認すると、駐車場まで走って来たのだ。

 「どうした?」と野村。

 小太りの女性分析官は肩で息をしており、捜査官が尋ねてもすぐに応えられなかった。

 「大丈夫か?」野村が中年男から手を離して奥村に近づく。

 「の、野村さんに、見て、欲しい物が、あります。」呼吸を整えながら女性分析官が言った。彼女はタブレットを持ち上げて画面を野村に見せ、野村は渋々その画面を覗き込んだ。「黒田さんに、水谷さんの行動記録を、調べるよう言われて、調べたんですが、不審な点は何も無かったんです。」

 「それで?」若い捜査官は話しの内容が掴めず、急いでいるにも関わらず話しを引き延ばす奥村に苛立った。

 「何度も何度も、似た様なことを言われるので、支局長が疲れておかしくなったと思って、逆に支局長の記録を調べたんです。そしたら、通信記録を消したり、逃亡後に死亡した堀内という男のいた、拘束室の監視映像を、改竄してる形跡があったんです!」

 「何故、そんなことを?」

 「もしかしたら、支局長は昇進の障害となる証拠を消しているのかもしれないです。または支局長がテロリストの―」

 唾を吐くような音が3度、地下駐車場内に響いた。その後、奥村に覆い被さるようにして野村が倒れた。女性分析官は突然のことに驚き、野村を支えようとしたが、彼の重さに耐えきれずに尻餅をついてしまった。好意を寄せていた相手が倒れ掛かってきたため、奥村の意識は野村に注がれ、顔を赤くしながら彼女の膝上に頭を置いて倒れている捜査官の顔を見た。

 「に、逃げ…ろ…」消え入りそうな声で野村が言った。上着の下に防弾ベストを着ていたので無傷ではあったが、銃弾を受けた背中に激痛が走っていた。

 「えっ?」奥村が聞き返そうと顔を野村に近づけた。

 ちょうどその瞬間、彼女の胸を2発の銃弾が襲った。被弾した女性分析官は衝撃に押されて背中から地面に叩きつけられた。呼吸困難に陥った奥村は口から血を吐きながら、苦しみと戦った。

 「余計なことを…」野村の背後から親しみのある男の声が聞こえてきた。その声の主はゆっくりと二人に近づき、奥村の頭に2発の銃弾を撃ち込んだ。

 ここでようやく野村は二人を撃った男の姿を見た。

 “小木さん…?”

 消音機付きの拳銃を持つ小木は奥村のタブレットを拾おうと身を屈めた。この隙に野村はホルスターに手を伸ばして拳銃を握った。

 再び唾を吐くような音が駐車場内に響き、後頭部から進入した銃弾が野村の頭部を貫通した。タブレットに気を取られていた小木は突然のことに驚き、拳銃を野村の死体に向けた。

 「ちゃんと頭を撃て。」小野田が鋭い眼光を小木に向けた。次に彼は消音機付きの拳銃を乗用車に乗っていた佐藤に向け、素早く3度引き金を絞った。2発が中年男の胸に命中し、最後の1発が頭部を捉えて後部座席が血で染まった。

 「あ、あぁ…」小木は小野田の勢いに圧倒された。

 「議員の行き先が分かった。急ぐぞ。」

 二人は予め用意していたグレーのSUVに乗り込んでその場を後にした。

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返報 14-1 [返報]


 「また会えましたね。」西野の隣に腰掛けるなり、藤木孝太が言った。

 西野は昨日出会った男の唐突な出現に少し動揺したが、すぐに気持ちを切り替えた。

 「髭を剃ったんですね。」藤木が隣に座る元警察官の顔を見て笑みを浮かべた。「その方が似合ってますよ。」

 そう言われると西野は俯いて、今朝剃ったばかりの頬を右親指で軽く触れた。

 「無駄話のために来たわけじゃないだろ?」ここに来た理由を思い出して元警察官が藤木の方を見た。

 「いきなり本題に入るのって、すごく堅苦しいでしょ?だから、ちょっと世間話しをしようかと思いまして…」

 西野は藤木の馴れ馴れしい喋り方が好きになれなかった。

 「しかし、お望みであれば本題に入りましょう。西野さんの答えを聞かせてください。」

 藤木の顔に浮かんでいた笑みが消えた。銀縁眼鏡のレンズ越しに見える彼の双眸は鋭く、先程とは打って変わって真面目な人間に見える。

 「逆に聞きたい事があるんだ…」西野が藤木から視線を逸らさずに言った。「俺はもう二度とあんな連中と関わりたくない。アンタも分かるはずだ。何でまだその仕事をやっていられるんだ?」

 予期せぬ言葉にネズミ取りの捜査官は首をかしげた。「良い質問ですねぇ~」

 西野は黙って藤木を見つめ続けた。

 「実は…」藤木が口元を微かに緩めて口を開いた。「似た質問を友人にしたことがあります。堅物な男でして…ものすごく仕事熱心なんですよ。彼に尋ねると、非常に臭い台詞を言いました。」

 横に座る元警察官が先を促す。

 「『守りたいものがあるから』だそうです。」藤木は西野の反応を見て先を続けることにした。「私だって西野さんの言う“あんな連中”とは関わりたくないです。でも、私たちが求めていなくても、彼らは来るんです。中には話しの通じる人たちもいますが、大半は聞く耳を持たない。彼らの中に“答え”があるからです。そんな人たちを野蛮な手段を用いてでも、止めなければならない時が来るかもしれません。そんな時にみんなが『誰かがやるから大丈夫』と考えていたら、いずれ私たちは大切な物を失うでしょう。簡単に言えば、『誰かがやらなきゃいけない事』だから、私は“あんな連中”と関わりを持つことにしたんです。」

 「しかし―」

 「無理強いはしません。」藤木が西野を遮った。「嫌なら嫌と言えばいいんです。」

 「後悔してないのか?」元警察官が視線を逸らさずに尋ねた。

 「してたら、ここには来てませんよ。」ネズミ取りの捜査官がベンチから立ち上がた。「もし、気が変わったら、15時までに空港に来てください。そこで待ってます…」


















14-1






 「も、守谷……?」西野は驚きを隠せなかった。

 名前を言われると額に小さな切り傷を持つ男がニヤリと笑う。「やっと思い出したか…」

 ネズミ取りの捜査官は咄嗟に右拳を守谷の顔面に繰り出した。しかし、相手は左手でそれを掴んだ。

 「あまり良い動きじゃないな。“あの時”の方が早かったぞ…」そう言うと守谷は西野の拳から手を離さずに、頭突きを捜査官の顔面に叩き込んだ。

 鼻頭に強力な一撃を受けた西野は気が遠くのを感じた。鼻の骨が折れ、両方の穴から血が流れ出た。

 「もうすぐ警察の増援が到着します。」守谷の隣にいた大男が言った。
 「そろそろ移動するか…」









 反射的に乗用車の陰に飛び込んだものの、野村と新村は襲撃者たちの激しい銃撃を受けて身動きが取れずにいた。

 雨の様に降り注ぐ銃弾は乗用車に無数の穴を開けると同時に窓ガラスを砕いた。ガラスの破片が身を丸くして隠れている二人の捜査官の上に落ち、あまりの恐ろしさに新村は震えた。しかし、涙を流すことはなかった。一方の野村は再装填を済ませて突進を試みようとしていた。

 “このままじゃマズイ…”

 その時、銃撃の勢いが弱まった。

 野村は敵の何人かが再装填を行っていると推測して車の陰から飛び出した。そして、発砲しながら前進しようとした時、彼は手榴弾を投げようとしている敵2人を見た。野村はすぐに引き返して隠れていた新村の右腕を掴んで立ち上がらせ、二人は姿勢を低くした状態で駆け出した。

 目出し帽で顔を隠している男2人は野村と新村の位置へグレネードを投げ、放たれた2つの手榴弾は綺麗な弧を描いて二人の捜査官がいた車の手前に落ちた。

 新村の腕を引く野村はできる限り遠くへ移動したかったが、仲間を連れながら逃げるのは難しく、離れることができても5メートルが限界であった。女性捜査官は状況が読み込めなかったが、背後から聞こえてきた破裂音を耳にしてやっと状況を理解した。

 手榴弾が爆発すると二人はしゃがみ、素早く襲撃者たちがいる方へ短機関銃の銃口を向ける。銃口の前には今まで遮蔽物にしていた乗用車があって敵の姿を見ることができない。しかし、二人は襲撃者の勢いが収まりつつあることに気が付いた。

 “撤収するのか?”

 野村は銃を構えた状態で中腰の姿勢を取って襲撃者たちの様子を伺った。そして、彼は大男が西野を右肩に担いで移動するのを目撃した。先輩捜査官の危機に野村は怒り、我を忘れて目出し帽を被った襲撃者たちに向けて発砲を開始した。

 突然のことに背後で待機していた新村は狼狽えたが、彼女も連れ去られようとしている西野を見つけ、野村の行動の真意を理解する事ができた。

 大男が西野をバンに押し込もうした時、スライドドアに小さな穴が開いた。何事かと振り向くと、発砲しながら接近してくる男女の姿を確認した。すると、大男の後ろにいた男がインド製のアサルトライフルを構え、野村たちに向けて引き金を引いた。

 「構うな。」そう言って、大男がバンに乗り込んだ。

 指示を受けた男は何度か発砲してからバンの助手席に乗り、素早く再装填を行った。彼と同様に急ぐ守谷率いる襲撃者たちは応射しながら、それぞれが乗って来たバンに乗り込んでその場を後にしようとしていた。

 焦る野村は走ってバンとの距離を詰めるも、途中でMP-5Kの弾倉が空になった。再装填する時間が惜しいため、男性捜査官は腰のホルスターからUSP拳銃を素早く抜き、走り去ろうとする2台の白いバンに向けて発砲した。一方の新村は置き去りに去れた車の陰に身を隠して再装填を行い、それから先輩捜査官の後を追った。

 2台の白いバンは野村たちの攻撃を気にもせずに加速して二人の捜査官から離れて行く。

 バンが曲がり角に入る直前、野村の背後から黒い軽乗用車が接近してきて彼の右横で停車した。

 「乗って下さい!」運転席には新村がいた。

 彼女は乗り捨てられていた軽自動車を見つけ、それを借りることにしたのだ。

 後輩捜査官が下した咄嗟の行動に野村は感心しながら、黒い軽自動車の助手席に乗り込んだ。そして、彼が素早くMP-5Kの再装填を行い始めると、新村はアクセルを勢い良く踏み込んで襲撃者たちの後を追った。








 中島が腰元で構えていた銃を佐藤の右脚に向けた瞬間、中年男がSAT隊員に飛び掛かった。

 男は両手で拳銃の銃身を掴み、素早くそれを中島の腹部に押し当てて銃口を逸らした。そして、間を置かずに佐藤は右膝蹴りをSAT隊員の股間に向けて繰り出した。

 蹴りが飛んでくる直前、中島は左脚を後退させながら腰を右に捻って佐藤の金的蹴りを回避し、素早く左掌底を中年男の胸に叩き込んだ。この掌底で中年男は掴んでいた銃から手を離しそうになったが、左足で踏みとどまって次の攻撃に出た。

 一方、SAT隊員はこの隙に銃口を動かして相手の脚を撃とうとしていた。あと数ミリで狙いが定まろうとした時に佐藤の頭突きが中島の右頬を直撃し、その弾みで引き金を絞ってしまった。狭い室内に銃声が響き、拳銃弾が佐藤の右脚をかすめて軽傷を負わせた。

 中年男が銃身を強く掴んでいたため、遊底の動きが封じられて空薬莢の排出が行われなかった。ゆえに遊底を引いて薬室に残っている空薬莢を抜かなければ、銃を正常に使用することはできない。

 仕方なく中島は銃から手を離して左と右の拳をリズミカルに繰り出し、自ら拳銃を抑えるために両手の自由を封じていた佐藤は2つの拳を顔面に受けた。素早く放たれた拳であったが、威力は中年男の想像を超えて重たかった。

 佐藤は掴んでいた拳銃から手を離して2歩後退した。できるだけ距離を開けて回復を試みたのだ。だが、中島の勢いは止まらなかった。SAT隊員は左前蹴りを中年男の股間目がけて繰り出した。そして、それを見るなり佐藤は右脚で中島の蹴りを払い、SAT隊員の左側へ回る。

 中年男の動き確認するや否や、中島は左裏拳を佐藤の左側頭部に叩き込んだ。続けてSAT隊員は裏拳の勢いを利用して左へ回転し、激痛に身体を右に傾けていた相手の左頬を右拳で殴った。

 次の攻撃を恐れる佐藤は咄嗟に両腕を上げて顔面を守り、それが仇となって防御が手薄になった左横腹に中島の右蹴りを受けた。予期せぬ衝撃に中年男は体勢を崩しそうになったが、なんとか右足で踏みとどまる。

 相手の動きなど気にせず、SAT隊員は左拳を佐藤の顔に向けて繰り出す。それを見るなり中年男は左手で相手の拳を弾き、向かってくる攻撃の軌道を変えた。続いて中島が右拳を放つと、佐藤は体を左に傾けて攻撃を回避し、伸び切ろうとしていた相手の右腕を挟むようにして両手を繰り出した。右掌底でSAT隊員の右手の甲を叩き、左手ではきつく拳を作って相手の腕の内側を叩いた。

 地味な攻撃であったが、中島の腕に軽い痺れが走った。関節技を警戒したSAT隊員が腕を引こうとした時、佐藤の裏左拳が中島の右側頭部を襲った。中年男は先ほど繰り出した左拳の勢いを利用して素早く攻撃したのだ。
 
 間を置かずに佐藤が右掌底を中島の顔面に入れようとした瞬間、外から大きな爆発音が聞こえてきた。二人の動きが止まり、1秒半ほど睨み合う形になった。
 
 この爆発音は守谷の撃った携帯式対戦車擲弾発射機(注:ロケットランチャー)が西野と荒井の後方にあった乗用車に命中した際に生じたものであった。

 “来たか…”体に走る痛みを感じながら佐藤は守谷たちの到着を予想した。しかし、状況が掴めない中島は野村たちのことが心配であり、急いで助けに行きたかった。

 焦る気持ちを抑えながらSAT隊員は再び動き出した。彼は防がれることを念頭に置きながらも左拳を素早く突出し、中年男は後ろに下がって攻撃を避けた。そして、後退した勢いを利用して右前蹴りを放った。

 蹴りが放たれるや否や、中島は素早く斜め右へ踏み出して相手との距離を縮める。その際に彼の横を佐藤の右蹴りが通り過ぎ、距離が近づくと中年男の顔に恐怖が広がった。

 佐藤は咄嗟に左肘を繰り出して接近してくる中島の顔面を殴ろうとしたが、SAT隊員はそれを右手で難なく防御した。そして、それとほぼ同時に彼は左手を突き出して中年男の右肩を掴み、相手を手前に引きながら突き上げるように左膝を佐藤の腹部に叩き込んだ。

 腹部を襲った激痛に耐えきれず、中年男は身を丸めて歯を食いしばって呻いた。しかし、中島は攻撃の手を止めようとはしない。SAT隊員は痛みと戦っている相手の首筋に向けて、左肘を振り下ろそうと左腕を上げた。

 その時、首筋に悪寒を感じた佐藤は思い切って中島にタックルした。突然の攻撃にSAT隊員はバランスを崩し、体勢を立て直そうと後ずさりながら中年男の上着を掴もうと動く。しかし、その直前に佐藤は両手で中島を突き飛ばして距離を開けた。勝ち目のない戦いだと判断した故の行動であった。二人の距離が開くと、中年男は腹部を抑えながら急いで部屋から廊下に飛び出した。

 素早く体勢を整えたSAT隊員が逃亡した男を追うために走り出すと、唾を吐くような音と金属が擦れる音が廊下から聞こえてきた。その後、中年男の呻き声と重たい何かが落ちる音を耳にした。彼は急いで自分の拳銃を拾い、遊底を引いて薬室に閉じ込められていた空薬莢を吐き出させた。中島は拳銃を構えながら素早く、そして、静かにドア枠の左横に移動して廊下の様子を確認した。SAT隊員が目にしたのは床に倒れて呻いている中年男の姿であり、その他には何も見えない。

 別方向の安全確認のため、中島は右手に握った拳銃を胸の辺りで構えると、素早くドア枠から顔を出し、脅威の有無を確認するなりすぐに室内に顔を戻した。一瞬のことであったので、人影しか見ることができなかったが、それで十分だった。SAT隊員は拳銃をホルスターに収め、両手を上げて廊下に出た。









 大多和と6人のSAT隊員が黒煙と焦げ臭さの漂う道路を通って、小型バスによって壊された正面玄関へ向かった。グランドホテルの上空では北海道警察とマスコミ各社のヘリが爆音を周囲に撒き散らしながら現場の様子を見守っており、地上の方は警察が黄色い規制線を張って被害の拡大を減らそうとしていた。それでも守谷たちは、その規制線の一つを突破して西野を攫いにやってきた。銃声や爆発音が単発的に人々の耳に入ってくるため、現場にはまだ緊張が走っている。

 黒田の命令を受けた大多和たちがホテルの車寄せに近づくと、座り込んでいる二人のSAT隊員を発見した。

 「大丈夫か?」二人に近づきながら大多和が尋ねた。

 「俺たちは…なんとか…」被弾した左腕を右手で抑えた藤田が消え入りそうな声で応えた。彼の隣にはうな垂れている近藤がいた。二人は他の隊員が全員死んだと思っている。

 「西野たちを見たか?」と大多和。

 「いえ…」藤田が首を横に振った。

 「すぐに救護班も来る。ここで待機しててくれ。」

 大多和と6人のSAT隊員は、テロリストによって破壊された正面ドアを通ってホテル内に進入した。まず始めに彼らの目に飛び込んできた物は突入に使用された小型バスだった。砕けた窓ガラスとドア枠の金属片が床に飛び散っており、奥に進んで行くと焦げや血が付着した破片があった。そして、さらに進んで行くと血の海を作る多くの死体を発見した。

 凄惨な光景を見た大多和は唇をきつく閉じ、湧き上がってくる恐怖心と戦った。彼の後ろにいたSAT隊員たちも現実離れした光景に怯んでいたが、それと同時にこのような行為をしたテロリストに怒りを覚えた。

 彼らは死体を踏まないように前進したが、目指している大ホールへ続くエスカレーターは両方とも死体で埋め尽くされていた。

 “許してくれ…”

 周辺を警戒しながら、できるだけ死体を踏まないように2階の大ホールに辿り着くと、再び血の海で横たわる多くの死体を発見した。何人かはまだ生きており、呻き声や助けを求める低い声が大多和たちの耳に届いた。ネズミ取りの捜査官は二人のSAT隊員に生存者の応急手当てを頼み、残りの4人を連れて大ホールに入った。

 引っくり返ったテーブルと椅子などで散らかったホールに入ると、大多和の目に懐かしい人物の顔が映った。

 「小木!」

 名前を呼ばれた小木が広瀬の死体から頭を上げて周囲を見渡した。

 同僚との距離が縮まるに連れて大多和は、彼の側に横たわる生気を失った広瀬と座り込んでいるパンツスーツ姿の女性の存在に気付いた。

 「西野は?」小木の前に来るなり大多和が尋ねた。

 「テロリストを追いに行った。」西野と荒井が走っていた方を指差して小木が言った。

 「広瀬さんは…?」

 「死んだよ…」小木の目は広瀬の死体に釘づけであった。

 「そうか…」そう言うと大多和は先輩捜査官の死体をしばらく見つめた。「俺は西野を追う。応援が来るまで、ここで待機してくれ。」

 「わかったよ…」

 「すぐ戻る…」小木の肩を軽く叩いて励ますと、大多和と4人のSAT隊員は西野たちが向かった方へ走り出した。








 狭い小道を縫うように白い2台のバンが進み、その後を黒い軽自動車が追っている。

 小道を抜けると、規制線と4人の制服警官が3台の行く手を阻んだ。しかし、テロリストたちの乗るバンは気にせず規制線を突破し、その際にバンを止めようとした制服警官2人が轢かれて道路脇に弾き飛ばされた。

 新村は規制線の直前に車の速度を落とし、「退いてください」と叫びながら制服警官たちに道を開けるよう左手を振った。彼女の声は届いていなかったが、轢かれた仲間を見た警官たちは軽自動車の接近を見るなり道路脇へ急いで避難した。二人の捜査官を乗せた軽自動車は規制線を越えると、加速して西野を連れ去った白いバンの後を追った。

 3台の車が小樽運河沿いの片側2車線の道路に入った。野村は助手席から身を乗り出し、短機関銃を構えると11メートル先を走る白いバンに向けて発砲した。狙いは後輪であったが、角度の悪さと手の震えでバンの車体と道路に銃弾が当たった。

 「距離を詰めろッ!」野村が運転席にいる新村に向けて言った。

 女性捜査官がアクセルを踏み込み、それと同時にバンの斜め後ろへ車を移動させた。

 銃撃を受けた白いバンの運転手はサイドミラーで追跡者の姿を確認すると、ルームミラー越しに後部座席にいる守谷を見る。「金魚の糞みたいに付いて来る車がいます。」

 「余興にはなるだろう…」守谷がニヤリと笑って言った。

 大男の中田が足元に置いていたロケットランチャーを持ち上げ、バンの後ろドアに手を伸ばそうとした時、額に切り傷を持つ男がそれを制した。

 「それは議員のために残して置け。こっちの方が面白いと思うぞ。」守谷は足元の鞄から手榴弾を取り出した。

 中田が小さく頷いてバンの後ろドアを開けると、守谷は手榴弾の安全ピンを抜いて外へ放り投げた。深緑色の球体は地面に音を立てて落ち、惰性で勢い良く後方へ転がって行った。

 テロリストの動きを見た野村は急いで助手席に戻り、ハンドルを左に切った。軽乗用車は縁石を乗り越えて歩道に乗り上げ、その直後に手榴弾が爆発した。ハンドルを切って逃げていなければ、手榴弾は車の真下で破裂していた。

 「上手く逃げたな…」守谷が再び手榴弾を取り出して安全ピンを外して歩道の方へ投げた。

 一方、新村は再び道路へ戻るためにハンドルを操作し、野村はテロリストたちの動きに注視した。

 「手榴弾に気を付けろ!」バンから目を離さずに野村が言った。しかし、彼は2つ目の手榴弾の存在に気付けなかった。

 「分かりました。」新村が再びアクセルを勢い良く踏み込む。

 その時、歩道で2つ目の手榴弾が爆発し、その破裂で生じたアスファルトの破片が黒い軽自動車の車体に降り注いだ。

 「クソッ!!」野村が悪態をついた。

 守谷は再び手榴弾を道路へ放り投げた。しかし、今度は間を開けずに次の爆弾を道路へ放った。1つ目のグレネードが軽自動車の2メートル手前で爆発し、その際に爆風と破片を浴びた軽自動車はバランスを崩して、新村はハンドルを握る手に力を入れなければならなかった。2つ目の手榴弾が爆発する寸前に野村は、ハンドルに右手をかけて左へ切って再び歩道へ逃げた。

 間一髪で手榴弾の上を通過することは免れたが、車体の右横に強烈な爆風を浴びた。車内にいる二人の捜査官は無傷であったが、軽自動車の方は爆風と破片の影響で車体は塗装も剥げた上に凸凹になっていた。窓も手榴弾とアスファルトの破片によって所々傷が付いている。

 「しぶといな…」歩道へ逃げた軽自動車を見て守谷が言った。彼は最後の手榴弾を鞄から取り出し、中田の方を向く。「車を撃て。」

 大男の中田はインサス(注:別記はINSAS [新インド小火器システム、Indian New Small Arms System])のアサルトライフルを構えると、歩道から道路に戻ってきた軽自動車に向けて発砲した。

 「頭を下げろッ!」新村にそう言うと、野村は怯まず助手席から身を乗り出して応射した。彼が予想した通りに中田は新村に狙いを定めており、銃弾は運転席側の窓に集中していた。白いバンは銃撃を受けると蛇行運転を始め、野村の銃撃を避けようとした。

 フロントガラスを突き破って頭上を通過する弾丸に恐怖した新村は、アクセルを踏む勢いを落とし、守谷たちとの距離が開き始めた。

 「加速しろッ!!」バンになるテロリストに向けて発砲する野村が怒鳴った。しかし、新村はアクセルを踏むことができなかった。

 「潮時だな…」守谷が手榴弾の安全ピンを抜き、軽自動車との距離が開き過ぎる前に手榴弾を落すようにして外へ投げた。








 「つまり、我々の中にテロリストの協力者がいると?」椅子の背もたれに寄りかかっていた黒田が尋ねた。

 「そうです。」水谷が真剣な眼差しで上司を見つめた。

 “広瀬も似た様なことを言っていたな…”目の前に座る分析から目を逸らさず、黒田は数時間前にした広瀬との会話を思い出した。“しかし、アイツは西野と共に消えた。”

 水谷を内通者だと思っていたネズミ取りの支局長は、分析官からの自白を予期していたが、目の前の男も「内通者の存在」を仄めかしてきた。直感で“モグラ”の存在を疑う広瀬とは違い、分析官の水谷は内通者の存在を疑う具体的な証拠を列挙した。しかし、どれだけ具体的なことを言われても黒田は信じられなかった。彼は水谷が自分の疑いを晴らすために嘘をついていると思ったのだ。

 “泳がせてみるか…”

 「すぐに戻る。」ネズミ取りの支局長が拘束室を出て、隣の部屋に入った。その部屋からマジックミラー越しに拘束されている水谷を見ることができる。黒田は部屋にあったノートパソコンを起動させ、自分のアクセスコードを使ってスパイウェアをインストールした。彼は一度電源を切って、ノートパソコンを水谷のところへ持って行った。

 「お前の言う証拠を見せてくれ。」黒いノートパソコンを分析官の前に置いて黒田が言った。

 「分かりました。」

 水谷がパソコンを起動させて作業に取り掛かり、ネズミ取りの支局長はその様子を椅子に座って見守った。事前に仕掛けたスパイウェアによって、水谷の動きは黒田のパソコンに転送される。目の前にいる分析官が裏切り者かどうか、それである程度の事が分かると黒田は思った。

 その時、拘束室のドアが開いて奥村が入って来た。「お話しがあります。」

 “いいタイミングだ。”と黒田は思った。彼が部屋を後にすれば、水谷が何かしらの行動に出る可能性がある。

 「どうした?」ネズミ取りの支局長は奥村と一緒に部屋を出た。

 「小田議員とその家族の避難が完了しました。議員は現場付近の警察署で休んでいて、家族もすぐ同じ場所に到着するそうです。」

 部下からの報告を聞いて黒田は胸を撫で下ろした。「無事で何よりだ。それで西野たちは?」

 「まだ確定した情報ではないのですが…」自信が無いためか、奥村の声が小さくなった。「現場にいたSAT隊員によると、西野さん、広瀬さん、小木さんはテロリストと交戦していたようです。」

 “また面倒くさいことになったな…”心の中で黒田が呟いた。“アイツらはテロリスト側ではないのか?”
 
 「そうか…新しい情報が入ったら、また報告してくれ。」

 「分かりました。」奥村が自分の机に戻るために走り出した。

 「奥村ッ!」黒田が部下を呼び止め、急いで駆け寄った。「過去24時間の水谷の行動を調べてくれないか?」

 「でも…」

 「忙しいと思うが、急ぎで頼む。」
 







 「お邪魔でしたか?」藤木が笑みを浮かべながら尋ねた。彼の隣には小柄の女性が立っており、彼女の右手には消音器が取り付けられたUSP拳銃が握られている。

 「議員の近くにいた方がいいじゃないのか?」挙げていた両手を下げて中島が言った。

 「議員はもう安全な場所に移動しましたし、私は“彼”に用があるので…」藤木が這って逃げようとしている中年男を指差した。

 「俺もアイツに用がある?」と中島。

 「何故です?」藤木は中島の意図を理解しながらも尋ねた。

 「アイツの仲間に会いたいのさ。」

 「前にも言いましたが、あなたはこの件から―」

 「分かってるさ…」SAT隊員が藤木を遮った。「でも、こんな機会を逃すなんてことはできねぇよ。」

 元公安警察の男は中島に同情しており、もし自分が同じ状況に立たされれば、同じく復讐を考えるだろうと思っている。

 「気持ちは分かりますが、危険なことですよ。特に何所に敵がいるか分からない状況下では…」

 「だから、あの男に聞くのさ。」逃げようとする佐藤に歩み寄りながら中島が言った。

 「テロリストの居所の話しじゃないですよ。私が言っているのは、ネズミ取りの中にいる内通者のことです。」

 抵抗する佐藤の右手首を掴んで時計周りに捻り上げると、SAT隊員はすぐしゃがみ込んで中年男の右腕を相手の背中に押し当て、素早く左腕を掴んでテロリストの両腕を後ろで固定した。

 「何か縛る物はあるか?」と中島。

 すると、藤木の隣にいた小川がSAT隊員に近づき、上着の下から結束バンドを3本取り出して手渡した。

 「ありがと。」中島は手慣れた手つきで佐藤の両手首を縛り上げ、次に残りの2本で中年男の左右の膝上をきつく縛り上げた。小川が佐藤の両脚のふくらはぎを撃ったので、出血している箇所の上を閉めて止血を試みたのだ。「それで…その内通者ってのは誰なんだ?」

 「それが分かれば、苦労しないですよ。だから、私は小川ちゃんと二人で密かに行動してるんですから…」

 「目星は?」立ち上がって中島が問い掛けた。

 「付いてますが…知りたいんですか?」

 SAT隊員は黙って藤木を見つめた。元公安の男は顔に浮かべた笑みを崩さなかったが、一度、俯いて再び中島を見た。

 「野村信一と水谷洋平です。」

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収録曲!! [News]

 遂に待ちわびていた収録曲が公開されました。今回は『World Tour: Best Collaboration Songs』の方だけです!


『World Tour: Best Collaboration Songs』
1. Opening(Nによる開会式)
2. 緑色のカレーライス feat. a Man from Thai (タイ在住の男性)
3. 歩道橋 ~English ver.~
4. H.O.K.U.R.E.N feat. Madagascan Street Boys(マダガスカルの路上にいた少年たち)
5. となりのG3 ~バトスピ団 ver.~
6. 野球拳ゲーム大会
7. B.B. Snow ~三代目G3バンドブラザーズ ver.~
8. 漢 -the man-
9. Japanese in Bhutan feat. unknown singer in Bhutan(名前の分からないブータンの歌手) 
10. 紅のN ~バトスピ団 ver.~
11. バトスピ団 とWNによるトークショー(日本語)
12. 二代目ペルセウス ~Spanish ver.~
13. Ending (G3による閉会式)


 ファンであれば、もう買うしかないラインナップですよ!
 近日、もう一つのアルバムの収録曲も明らかになるようですし、もうWNから目が離せません!!

 それじゃ!



(以下、ハヤオ関連です。)

 ブログのアクセスがWNよりもハヤオの方に集中するって変だよ!どうなってんだかさぁ~

 ちなみに大幅に遅れている『返報』第14回ですが、パート3の半分まで終わってるそうです(ハヤオ談)。ゆえに来月から少しだけ公開しようと思います。

 14-1:10月13日(金)/14-2 : 10月20日(金)/ 14-3 : 10月27日(金)

 14-4 : 11月10日(木)/ 14-5 11月17日(金)

となる予定で書いているそうです。勿論、期待はしないでください。

 終わり方はクソつまらないです。だから、もう読まない方が無難です。本当に…
 
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待望のアルバムッ!! [News]

 以前報告したWNの新アルバムですが、タイトルが発表されました。

 一つは『World Tour: Best Collaboration Songs』というタイトルで、今回のワールドツアーでコラボした海外アーティストと作ったアルバムのようです。

 そして、二つ目は『Eternal Love: Greatest Hits』です。これはWNと「Dakahee(ダカヒー)」の伝説的なデュエット曲とWNを一躍有名にさせた名曲を収めたアルバムになるようです。権利の問題で発売不可と言われてたアルバムなので、かなりレアのものになるかもしれません。

 ファンであれば、すぐにでも手に入れたいアルバムですよね?みんなも急いで予約しよう!

 それじゃ!



(以下はハヤオ関連です。)

 かなり遅れている『返報』ですが、ハヤオはやっとパート2を書き始めたそうです。

 そこでハヤオは応援してくれている人々に向けて、無法地帯となっているWNの裏ブログに第14回のパート1の序盤を公開することにした模様です(売れてない映画のオープニングをテレビで流すのに似てますよね?)。

 完成の時期は不明ですが、現在のところ全5パートで書いています。

 戦闘シーンの動き(これにかなりの時間を使ってるんです)も決まり出したので、急げば10月に全部公開できるかも?
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2つの新アルバムッ!!? [News]

 いや~体調不良で何もできてなかったです。はい。

 WNは特に何のトラブルもなく、ワールドツアーを終えて帰国しているようです。おそらく、前回の公演で懲りたのでしょう…

 そんな彼らも新アルバムの制作で忙しいらしいです。G3のインスタ投降によれば、新アルバムは2つ存在するそうです。1つはワールドツアー先で収録した物、もう一つは来週明らかにされる予定とのこと。
 創作意欲が湧いたのか、それとも何か問題を抱えたのか、WNの活動がとても活発になってファンにとっては嬉しい限りです!

 続報が入り次第、ブログで報告したいと思います。

 それじゃ!



 (以下はハヤオ関連です…)

 『返報』の第14回ですが、まだパート1も終わってません。

 彼の体調は私よりも良かったのに、書くよりも『ゲーム・オブ・スローンズ』の新シーズンを見ていたようです。まぁ、あのドラマはハマる要素が多いので分からない訳ではないですが~来月公開を予定していたにも関わらず、完成に程遠いとは…かなりヤバいですな。はい。

 ゆえに第14回は来月の下旬または来年1月まで延期になると思います。一応、B級映画並みの草案もできて、結末も用意できたので、あとはハヤオの書く速度によりますね。

 これについても、詳細が判明次第、ブログで報告します。でも、誰も待ってる人もいないだろうから、突然の公開も有り得るかも…
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